ゲストのお悩み、解決するのはこの一冊! 悩める女子のために選んだ一冊とは?/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』 LEARN 2020.05.06

木村綾子さんがさまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う本を処方していくこちらの連載。外出自粛でゲストを迎えての対談が叶わなかった今回、ハナコラボ・パートナーから寄せられたアンケートをもとに、木村さんがご自宅の本棚からピッタリの一冊を提案してくれました。

今回は、木村さんのご自宅からお届け!

外出自粛でゲストを迎えての対談が叶わなかった今回、ハナコラボ・パートナーから寄せられた、ちょっぴりプライベートなお悩みをもとに、木村さんがご自宅の本棚からピッタリの一冊を提案してくれました。会ったことのない彼女たちの素顔をアンケートの文体から想像したり、時にはお名前をそっとGoogleで検索してみたり。担当編集・植村とのZoom会議の様子をとくとご覧あれ!

お悩み その1「お酒のお供になるような本を知りたい」

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編集・植村(以下、植村)「1人目は、フリーランスでPRをされている児島麻理子さん。お酒のお供になるような本を知りたいとのことですね。彼女はお酒業界で広報をされていて、「Hanako.tokyo」では、Barの連載も担当しています」
木村綾子さん(以下、木村)「私その連載さっき読んでたんだよ!なんか、顔の濃いバーテンダーさんがいっぱい出てくるよね(笑)」
植村「そうなんです。通称、“イケメン連載”と呼ばれていて、編集部内の女性陣にも人気の連載です(笑)編集として児島さんと一緒に連載を進めているのが、木村さんとも仲のいい荒川なんですが、いつもキャッキャ言いながら取材に出かけていきますね」
木村「職権乱用!(笑)いやでも、仕事は楽しいのがいちばんよね。さてさてお悩みだけど、お酒好きの人って、まずは今晩どんなお酒を飲むか決めてから、じゃあなに食べようかなって考えたりするじゃない?ワインならイタリアン。日本酒に魚。みたいな…。だとしたら、これだっていう一冊があるよ!」

処方した本は…『ひとり家飲み通い呑み(久住昌之)』

日本文芸社出版/2012年初版刊行
日本文芸社出版/2012年初版刊行

木村「本棚の中でこの一冊が光って見えたからね、いま(笑)著者の久住昌之さんは『孤独のグルメ』の原作者としても有名で、ご自身もお酒を飲むのが大好きな方なの」
植村「以前、坂上由貴さんがゲストでいらした回でも、久住さんの旅の本をご紹介されていましたよね?」
木村「『ニッポン線路つたい歩き』だ!ほら、彼女ものんべい横丁の女将さんで、お酒を飲むのが好きだったじゃない? 久住さんの書く文章って、気負ってなくて、ゆるっとしたなかにもピリッとスパイスが効いていて、大好きなんだ。お酒のお供にもちょうどいいよ」
植村「この本は、お酒にまつわるエッセイですか?」
木村「うん。「おでん de カップ酒」とか、「焼きそば de ホッピー」とか、このお酒にはこの肴!って感じに、短い読み物がたくさん入ってるから、一緒の組み合わせで晩酌しながら読んだら楽しいと思うな。あとね、ときどき毒舌になるところも、酔っぱらい“あるある”って感じでウマイんだよね。“ワインにチャーハン。トレンチコートにビーチサンダルってセンスじゃない?”とか(笑)」
植村「“トレンチにビーサン”!例えがすごい(笑)」
木村「食のこだわりって、ほんと人間性が出るじゃない? 自分だったらどうかなぁ…とか考えだしたら深みにはまりそうだから、深酒しないようにしなくちゃなんだけど(笑)」

お悩み その2「1人での食事を楽しめるようになりたい」

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植村「続いては花堂歩見さん、会社員の方からです。ランチは会社のデスクでさっと済ませたり、夜もお仕事が遅くなるせいで、定食屋さんなどで召し上がることが多いみたいですね」
木村「『友人や家族と食事をするときはとっても楽しい』とも書いてあるから、たぶん彼女は、“1人ごはん”の楽しみ方が、まだちょっと見いだせていないのかな。…いやでも待てよ。1人で食べるごはんの楽しさって、考えてみたら何だろう。…何!?」
植村「う〜ん、僕は次またこの店に来るとしたら、誰と来たら楽しいかなっていう妄想をしています」
木村「え、なにそれ。なんかエロいな植村(笑)」
植村「この味は絶対アイツが好きそう!だとか、この見た目で出てきたらアイツなら写真撮るだろうな!とかってありません?」
木村「“アイツ”じゃないでしょ? “あのコ”でしょ?(笑)私は、隣のテーブルとか遠くの方から聞こえてくる人の話を、ラジオみたいに聞きながらご飯食べるのが結構好きで。ああ、今日もみんなお疲れさま!お互いがんばって生きたね!!って気持ちになるんだよね」
植村「人の話から、思いを馳せるわけですね!」
木村「盗み聞きしてるわけじゃないからね!(笑)1人だからこそ、ひとつの空間に点在するコミュニティを傍観できるのが楽しいなって。あと、「え、そんな話オープンな場所でしちゃっていいの!?」ってくらいキワキワの話まで聞こえてきちゃって、一人でドキドキしたりね(笑)それで言ったらもう、鈴木涼美(ご友人)のこれしかないだろうと思ったの!」

処方した本は…『女がそんなことで喜ぶと思うなよ(鈴木涼美)』

集英社出版/2019年初版刊行
集英社出版/2019年初版刊行

木村「私はもう、鈴木涼美が同世代の作家として存在してくれてることに日々感謝してるくらいに彼女の書くものが好きなんだけど。この本では、女の子の表の声と裏の声が同時に味わえるよ。主に男の人に対しての。どうだ、怖いだろう?(笑)」
植村「副題の、「〜愚男愚女愛憎世間今昔絵巻〜」って言葉も、おどろおどろしいです(笑)。この本、めちゃくちゃいろんな書体使ってて、文字の大きさもころころ変わって、なんというか、これが女心ってやつなのか!?」
木村「んふふ。そんな遊び心も効いてるよね。ちなみにタイトルの「女がそんなことで喜ぶと思うなよ」は、30代の女ならチョロいでしょってスタンスで涼美ちゃんを口説いてきたおじさんに対して出てきた言葉、ってことを、あとがきでも言ってるんだけどね。いわゆる「中年」という世代に突入した女性の、恋愛や老いと向き合う葛藤と諦めと抗いが、たいへんウィットの効いた悪口とともに味わえるよ。男性は覚悟して読んでほしい」
植村「承知しました!(笑)でもきっと、人の恋愛話を盗み聞きしているような気持ちで読めちゃうんでしょうね」
木村「そうなの。ちなみに、この本のどこかに深夜の三茶で白子パスタを食べてる女性3人が出てくるんだけど。実はそれ、涼美ちゃんと私、あとさっきも出てきたHanakoの荒川さん(笑)。内容は、ここでは言えない。読んでくれ!」
植村「えー!僕、すぐその本探してみます(笑)」

お悩み その3「自分がいい母親をできているかが不安になる」

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植村「最後は木村美和子さん、主婦の方からです。お子様が生まれて、少し気持ちに余裕がなくなってきているタイミングですね」
木村「彼女の抱える悩みの切実さが伝わってくる文面です。ただ、どうしようもなく私はまだ独身で、人の親になったこともないから、簡単に「気持ち、わかります」みたいな共感目線でのアドバイスはしちゃいけないことだよね。だからこそ、本の力を借りようと思う」

処方した本は…『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある(犬山紙子)』

扶桑社出版/2020年初版刊行
扶桑社出版/2020年初版刊行

木村「この本は、実際の“夫婦”を取材することで、さまざまな夫婦がどんな問題を抱え、どんな対処法で乗り越えてきたかがまとめられた一冊。“夫婦とはそもそも他人であり、他人同士が円満に暮らすためには、知恵と歩み寄りが必要”という考えがベースにあるから、どちらか一方に加担したり、どちらか一方を責めたりすることなく、フラットな立場で問題を見つめているの。木村美和子さんが、いま、不安の矛先を夫に向けてしまいがちだというなら、ぜひこの本を読んでもらいたい」
植村「これ、同世代の友人が読んでいて、僕も気になっていた本でした」
木村「そう、私も、男の人からの感想をよく聞くんだよね。というのも、この本って決して夫婦だけの問題をケアする本ではないなと読んでいて思ったんだ。今の時期、人とのコミュニケーションで悩んでいる方って多いと思うんだよね。新型コロナウイルスによって、世界の「常識」がまったく変わってしまったから。仕事における人間関係とか、友人との付き合い方にも…。さまざまな悩みに置き換えて読めるはず」
植村「家事分担や育児分担、不倫やセックスレス、不妊症、それにパートナーの精神疾患まで、すごく具体的な話が紹介されてますね」
木村「そうなんだよ。夫婦を“組織”と捉えて、分担制にしてみたっていう試行錯誤や、子供を一人の“他人“として接することで、対等に意見してくれる関係が築けたっていう具体的な成功例を提示してくれるのは頼もしいよね。あと、犬山自身も、結婚3~4年目までカウンセリングに通っていたことや、夫の鬱に気づけなかった要因などを告白していて、そこには覚悟を感じたんだよね。人に取材をするのなら、自分自身とも向き合うべきだ、っていう。この一冊が木村美和子さんにとってのワクチンみたいな存在になったらいいなと本気で思います」

木村さんから、皆さまへのメッセージ。

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「こんにちは!木村綾子です。みなさん、元気でお過ごしですか?これまで経験したことのない状況が、いまなお世界規模で続いています。私はと言うと、春から新しく「蔦屋書店」で企画のお仕事をご一緒しはじめた矢先の緊急事態宣言。まさか、本屋を訪れる自由さえ奪われてしまうとは…!でも、不思議と気持ちは前を向いています。その理由を考えてみたとき、次々頭に浮かんでくるのは「本」と「人」でした。本を開けば、私たちはどこまでだって行くことができます。物語があれば、離れていても同じ時間を過ごすことができます。今回の連載も、そうでした。みなさんからの声をきっかけに、本にたどり着いて、これを読んでいるあなたに届く。そしてあなたから、また誰かの元へーー。ワクワクします。本の中はどこまでも自由で、広い。ときどき迷子になったりしながら、また会える日まで楽しく過ごしましょう!」

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