花井悠希の朝パン日誌 vol.55 パンギフトとパン好きの誕生日ケーキ…〈カタネベーカリー〉と〈ジャン・フランソワ〉

LEARN 2019.10.07

9月が終わり10月に入りましたね。やっと秋らしくなってきたかと思ったら夏のような暑さが戻ってきたりして、まだまだどっしりと構えて秋を実感出来ない今日この頃。9月は、自分史の中で大切で大きな事柄が一堂に会した月でした。そんな中私を元気づけてくれたのは、やはりパン!今回はそんな自分を元気付けてくれたパンをご紹介します。

今年の9月は光陰矢の如しを強烈に実感する程盛り沢山な月でありました。ありがたいことにコンサートが沢山あって、私のブランド〈PANORMO〉の春夏コレクション発表もあり〈伊勢丹〉でのポップアップショップもあって(Hanakoさんに特集してもらいました。ありがとうございます!)、自分史の中で後々振り返っても大切で大きな事柄が一堂に会した月でした。
そんな中私を元気づけてくれたのは、やはりパン!パン仲間さんが差し入れしてくれたり、バースデーケーキも嫉妬するほど素敵なパンデコレーションでお祝いしてもらったり、パン活的にも充実した毎日でした。今回はそんなパン充(リア充的な)目線でお届けします。

個性たっぷりなのにホッとするパン…〈カタネベーカリー〉

展示会中に遊びに来てくれたパン仲間さんがプレゼントしてくれたのは大好きな〈カタネベーカリー〉さんのパン。しみじみ美味しくて優しい気持ちになるパン達は、いつだって食べる人に寄り添い味方でいてくれます。早送りみたいな日常の中でふっと力を緩める時間を届けてくれました。

「パンオレザン」
「パンオレザン」

食べたい気持ちと断面見たい欲が急いて写真を撮る前に半分に切ってしまいました。すみません。プチプチと果実の甘みが弾けるレーズンは一粒一粒がふっくらとしていて、それだけでもうごほうび。パン生地とカスタード、レーズンの比率が同等なのでは?と思うくらい、レーズンもカスタードもこれでもかと贅沢に巻かれています。それ故に湿度は高く、しっとりとした旨みがぐるぐるぐる。渦を巻いています。

代々木上原 カタネベーカリー

身を委ねるままその渦に閉じ込められてしまいそうなところですが、生地と生地の周りの空気によって抜けも演出されているところがまたすごい。リッチでジューシーなお菓子のようでありながら「そうそう、パンだった!」と気づかせてくれる素朴さも忘れません。この素朴さと豊かさのバランスが〈カタネベーカリー〉さんのパンの素晴らしさだなぁと改めて感じる一品。

「クランベリーとくるみ」
「クランベリーとくるみ」

秋だ!秋が今私の手の内にある!ハッハッハ!と悪役よろしく高笑いを繰り出すところでした(これぞ病です)。そうです。それもこれもクルミの仕業なんです。これまたパン生地と同等のように居座るクルミがパン全体の香りと味わいを支配して、もちっと引きのある生地の深い小麦の香りすらクルミの引き立て役に回り、クルミ香ばしい!が詰まったパンです(語彙力の雑さよ)。この香ばしさこそが私を強烈に秋へ引っ張る強者。

代々木上原 カタネベーカリー

クルミさん、もうわかったからって降参の声を上げそうになったところに、脇からひゅんっと大粒クランベリーが飛び出してきました。ぎゅっと濃い酸味弾ける果実味で抜け道を作ります。君は味方なのか敵なのか(そして私は何を言いたいのか)。そんなのどっちだっていいよ、だって秋がやってきたんですもの(秋大好き)。

「シナモンロール」
「シナモンロール」

ぺとっとしたアイシングではなくザラメがふりかけてあるところが心憎いですねぇ。えぇえぇ。そしてアイシングがないのもそうですが全体的にウェット感がないのが珍しいです。

代々木上原 カタネベーカリー

沈む予感は一つもなくふわっと立ち上がっているデニッシュ生地に、シナモンが粉っぽさすら物ともせずふんだんに入っています。それはもうふんだんに。シナモンってぴとっとしっとりとしたシナモンフィリングなことも多いですが、これはペースト感が全くなくてむしろパウダリー。そして甘さはとても控えめ。シナモンシュガーじゃなくシナモンそのものを感じます。なんとも大人で玄人的な風格です。ザラメがじゃりっと時折甘みでふっと微笑みを見せてくれるから、さらに好きになっちゃう。シナモンロール好きの人こそ経験して欲しいシナモンロール。普通のシナモンロールをイメージしてるとケガするぜ(言いたいだけ)?

特別編!?…〈ジャン・フランソワ〉

ジャン・フランソワ

洒落てます。洒落すぎてます。一つ一つ皿が置かれていって、わー!パンだー!!って近づいていったら、暗闇に浮かぶは「 Y U K I 」の文字。洒落てます(2回目)。あ、そうなんです。9月誕生日だったのです。

ジャン・フランソワ

電気をつけると全容が露わになりました。

ジャン・フランソワ

いろんな形をしたパン達で作り上げられたアルファベット。話を聞くとお店でトレイの上に載せながらシミュレーションしていたら30分くらい経っていたらしい。その気持ち全てが嬉しい。その場にいた皆で分けて食べたりしたのですが、ちゃっかり数点持って帰って朝パンにも。

「レーズンバターサンド」
「レーズンバターサンド」

ゴロゴロ入ったレーズンが遠慮なくそのギュッと濃厚な果実味を弾けさせ、むぎゅっと噛み心地の良いパン生地がさらりと小麦の香りを差し込み、バタークリームはというと、とことん甘やかしてくれます。

ジャン・フランソワ

ミルキーな温もりが、生地全体に広がる勢いあるレーズンの濃い味わいをまろやかにくるんで、心温まるナイスバランス。

「枝豆とチーズのトリュデュ」
「枝豆とチーズのトリュデュ」

持ち帰るために半分に折ってしまいました。チーズのくにゅくにゅとした食感に枝豆がコリっと割れると青々とした風味が駆け抜けます。ブラックペッパーが効いて、さらにピリッと脇を締める。パンというよりおつまみの一皿のようです。おつまみをパン仕立てにした感覚。朝からいっちゃう?

「ブリエ・ベコン」
「ブリエ・ベコン」

潔く一本で「I」を表現していたこちらは、ざらりとしたたくましい小麦の香りが1番にやってきます。そこにベーコンの塩気が時折キリリと冴え渡るからますますワイルドな印象です。

ジャン・フランソワ

パンからはみ出たベーコンがクリスピーベーコンと化していて、これまたまるで一皿の料理のよう。パンとベーコンのみ、みたいなシンプルでなんてことない1日のどこかの外国の朝ごはん感(長いわ)。

「クロワッサン フランソワ」
「クロワッサン フランソワ」

「U」を作る立派な役目を果たしてくれた子。写真はその時のものですが朝パンではリベイクして頂きました。そして一口齧ったら、圧倒されてしまいました。
「叫べ!叫ぶんだ!!」全層がそう声を上げ自身のパリパリを主張してくるようです。その高らかな合唱を我が口内に納める恍惚といったら。口内がさながらコンサートホールのようにパリパリと響きわたります。一口目にまず来る塩気、パリパリが重なって連なって、その音が静かになってきたと思ったら満ちてくるバターのコク。店名がつくのも納得な説得力のあるクロワッサンでした。

お仕事的にも、パン的にも忘れられない9月となりました。さぁ、10月にはどんな出会いが待っているかな?いも栗かぼちゃハントにも早く出かけないと乗り遅れちゃう!

☆花井さんのブランド〈PANORMO〉の紹介ページはこちらから。
☆前回の記事「地元の人々に愛され続ける、渋谷にあるパン屋さん。…〈Pain au sourire〉と〈fluffy〉」はコチラから
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