更年期を、耐え忍ぶ暗黒の10年だと思わなくていい|レディースクリニックなみなみに学ぶ女性のヘルスケア#4

HEALTH 2024.05.28

生理や妊娠・出産、更年期、閉経など、さまざまな変化の波が訪れる女性の身体。ライフステージによって悩みも変わっていくなかで、どのように身体と向き合っていけばいいのでしょうか?
この連載では、女性の体調・人生におけるさまざまな波(なみ)を理解し寄り添うことで、すべての世代の女性のかかりつけ医を目指すレディースクリニックなみなみの叶谷愛弓院長が、女性が気をつけるべきことや身体をいたわるヒントを解説。第4回となる今回のテーマは「更年期が来たら」です。

INDEX

今のうちから知っておきたい「更年期」

―そもそも更年期とはどのようなものなのでしょうか?

叶谷:更年期とは閉経の前後5年の10年の期間を指します。日本人の閉経の平均年齢が50.2歳なので、40代半ばから50代半ばと考えていただければいいでしょう。産婦人科で外来をしていると、「これから更年期に入ってくるので不安」「更年期が心配」「更年期がやってくるのが怖い」などの声を多く聞きますが、残念ながらある一定の年齢がくれば、どんな方でも更年期はやってきてしまうものです。閉経にむけて女性ホルモンが低下することによって、症状の程度の差はあれど、更年期症候群と呼ばれる身体的・精神的な不調が現れます。

レディースクリニックなみなみ 叶谷愛弓

具体的にどのような症状があるのですか?

叶谷:人によって症状の程度や種類は本当にさまざまなのですが、異常に汗をかいたりほてったりしてしまうホットフラッシュは代表的な症状として知られています。あとは、疲れやすさや眩暈、不眠などが起こることもあります。疲れやすさなどは、更年期症候群の症状として自覚しづらいかもしれません。実際、多くの方が、「違うかもしれないんですけど」と枕詞をつけて、更年期を疑って診察にいらっしゃいます。

―たしかに、ホットフラッシュなど、いつもと明らかに違う症状であれば病院に行こうと思いますが、なんとなくの不調だと更年期症候群だと気づくのが難しそうですね。

叶谷:そうですよね。更年期を見極めるひとつの基準は、やっぱり年齢かなと思います。45歳くらいから55歳くらいまでの間に何か不調があるのであれば、更年期に起因している可能性が高いです。ただ、一口に更年期と言っても、閉経前後にずっと同じ症状が出続けるわけではありません。更年期だと気づいても「みんなあるものだから」と相談に行かない方も少なくありませんが、更年期症候群と間違いやすい症状をきたす病気、例えば甲状腺の病気やうつ病の可能性もあるので、いずれにしても我慢せずに産婦人科などに相談に行っていただければと思います。

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院内の様子
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更年期を、耐え忍ぶ暗黒の10年だと思わないでいい

―叶谷先生がおっしゃっていたように、来たる更年期に恐怖感や不安感を抱いている人もたくさんいると思います。どのように更年期に備えればいいのでしょうか?

叶谷:更年期になると仕事も家事も手がつかなくなって大変なんじゃないかってドキドキしてしまいますよね。適度に怖がって準備するのもいいのですが、それと同時に必ず治療ができるということも知っていただきたいです。更年期を何もできない耐え忍ぶべき暗黒の10年だと思わないでいいんですよ。

―具体的にはどのような治療方法があるのでしょうか?

叶谷:基本的には投薬治療になります。ホルモン剤や漢方など、症状を軽くするためのお薬を使っていくことがメインです。先ほども申し上げたように更年期に入ってもずっと同じ症状が出続けているわけではありません。およそ10年という更年期の期間においてライフスタイルも変化するでしょうし、生活の相談をしていただくことも大切だと思います。診察していても、更年期の症状には、女性ホルモンの変化はもちろん、本人の体質や気質、環境などが複合的に影響し合っているということを実感します。

たとえば、配偶者や会社からの理解が得られない、サポートしてくれる人がいない、介護をしているなど、家庭環境や生活状況、経済状況も症状に多分に影響すると思うんです。なので、更年期そのものだけでなく生活の困り事の解決も、更年期を過ごすために重要な要素になってきます。

―生活状況や症状によって、病院にかかることも難しいと感じる人はどうしたらいいでしょう?

叶谷:更年期症候群はオンラインでの相談にも適しているので上手に活用してほしいなと思います。クリニックでの対面診療とオンライン診療を併用しながら、自分にあった通院方法を見つけられるといいですよね。生理のトラブルだと、内診や超音波検査など来院しないとわからないことが多いのですが、更年期症候群で内服治療などが中心の場合は、オンライン診療でもある程度の診断・治療が可能です。更年期症候群は本当に長期にわたっての治療、ケアが大切になるのでうまく使い分けて継続しやすい環境を作るのがお勧めです。一人ひとりが抱えるさまざまな背景を理解したうえで最適な治療を見極めるためにも、ぜひ更年期に差し掛かる前からかかりつけの産婦人科医をつくっておきましょう。

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更年期のことを正しく知って、正しく恐れましょう

―これから更年期を迎える女性たちにメッセージをお願いします。

叶谷:更年期のことを正しく知って、正しく恐れましょう。正しい情報を取り入れられるリテラシーがあれば、過剰な心配をしなくて済むと思います。とはいえ、これだけ玉石混合の情報が溢れている世の中で、何が正しいのかを判断するのはとても難しいですよね。だからこそ、まずは信頼できるかかりつけ医に相談してほしいです。症状が重くなってしまって、自分に合う治療法を見つけるのに時間がかかることもあるかもしれませんが、対応方法は必ずあると思います。きちんと治療できるということを知り、怖がりすぎずに更年期に備えてくださいね。

text_Aiko Iijima(sou) photo_Mikako Kozai

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