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まちをつなげるパン屋さん by Hanako1177 谷中の古民家に現れた、最先端のベーカリー〈VANER〉。外国人も驚く、国を超えて追求する“パン”とは。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、谷中にある〈VANER〉をご紹介します。
昔ながらの日本家屋に、最先端のベーカリーが現れた。
![江戸情緒を偲ばせる路地に迷い込むと、その奥に、サワードゥブレッドを売り物にするベーカリーがあるミスマッチ。宮脇司ヘッドベーカー自ら接客、笑顔に迎えられる。 江戸情緒を偲ばせる路地に迷い込むと、その奥に、サワードゥブレッドを売り物にするベーカリーがあるミスマッチ。宮脇司ヘッドベーカー自ら接客、笑顔に迎えられる。](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04141144/main.jpg)
ここに来ると、自分がいまどこの国、どこの時代にいるのか、わからなくなる。古い路地に入り、奥へと進むと、突き当たりの古民家はなんとベーカリー。
![「サワードゥブレッド」1,200円。自家製のサワードゥから作られる看板メニュー。 「サワードゥブレッド」1,200円。自家製のサワードゥから作られる看板メニュー。](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04141128/MG_0045.jpg)
しかも、そこに並ぶのは、濃厚な焼き色でつややかに光る、でっかいサワードゥブレッド。まるで時空を超えているみたいだ。「外国の人によくびっくりされます。『こんな古民家で本気のパンを作っているんだね』って」と宮脇司ヘッドベーカー。
![左から、「パン・オ・ショコラ」350円、「クロワッサン」300円、「カルダモンロール」300円、「シナモンロール」300円(各税込)。店内は豊潤な香りで満たされている。 左から、「パン・オ・ショコラ」350円、「クロワッサン」300円、「カルダモンロール」300円、「シナモンロール」300円(各税込)。店内は豊潤な香りで満たされている。](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04141125/MG_0041.jpg)
本当の衝撃は食べてからだ。めまいがするような発酵の香り。皮に激しい香ばしさ、やわらかでみずみずしい中身が舌にのれば途端に泡のように溶け、旨味や酸味の渦が巻き起こる。もっとも古くて、もっとも新しいパン。米西海岸の〈タルティーンベーカリー〉から世界中に広がったサワードゥのムーブメント。宮脇さんは、ノルウェーの〈イルブロ〉を皮切りに、インスタグラムでつながった8カ国15軒のベーカリーに次々と飛び込んだ。出会ったベーカー誰もが、惜しげなく自分の知るすべてを教えてくれた。現代のパンの最先端はSNSを通じて情報交換し、オープンイノベーションで進歩をつづける。心を開くこと。
![複合施設〈上野桜木あたり〉は古民家と路地からなり、〈VANER〉のほかビアホールなどが入居。 複合施設〈上野桜木あたり〉は古民家と路地からなり、〈VANER〉のほかビアホールなどが入居。](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04141122/MG_0006.jpg)
宮脇さんはいつも英語でさまざまな国の人と楽しそうに話をしている。なぜ作り手が接客までこなすのか?「なにかを好きで楽しんで作っている人と話すと、感じるものがありますよね?」心と心がつながり、ヴァイブレーションが走り抜けるとき、国境も世代の壁もない。〈VANER〉が時空を超えているように感じられるのは、きっとそのせいだ。
谷中人気を牽引してきた名物カフェで甘味を。
![惜しまれつつ閉店した1938年創業の名喫茶が、リノベして復活。築約100年の趣深い木造建築で飲む〈フグレン〉のコーヒー。「あんみつ」700円(税込) 惜しまれつつ閉店した1938年創業の名喫茶が、リノベして復活。築約100年の趣深い木造建築で飲む〈フグレン〉のコーヒー。「あんみつ」700円(税込)](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04141140/MG_00991.jpg)
谷中の象徴、創業80年の〈カヤバ珈琲〉、実は、〈VANER〉と同じ会社が再開させた。これら古い建物を残す「NPOたいとう歴史都市研究会」の活動に共鳴してのことだ。ただ見て歩くだけではなく、実際に店の中に入り、コーヒーやフードを楽しんで、人と人が触れ合える、まるでテーマパーク。古い建物が機能し、現役の「街」であることはこんなに楽しい。
![谷中 カヤバ珈琲 谷中 カヤバ珈琲](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04141137/MG_0089.jpg)
〈カヤバ珈琲〉
■東京都台東区谷中6-1-29
■03-3823-3545 8:00~18:00(金土~21:00)
■40席/分煙
〈VANER(ヴァーネル)〉
![谷中 VANER 谷中 VANER](https://img.hanako.tokyo/2019/10/04143006/MG_00621.jpg)
小麦から自家培養したサワードゥ、ノルウェー産小麦を石臼挽きで使用するパン。宮脇シェフの作業を見たり、パンと〈フグレン〉のコーヒーをベンチで楽しんだりも。
■東京都台東区上野桜木2-15-6
■電話番号非公開
■9:00~18:00(売り切れ次第終了)月火休
池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog
(Hanako1177号掲載/photo:Kenya Abe)
☆前回のパン屋さん〈Lumière du b〉はこちらから。
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