〈中村食糧〉

まちをつなげるパン屋さん by Hanako1191 日本一を目指すベーカリーが東京に上陸!初めて出会うパンが揃う〈中村食糧〉へ。 Learn 2020.12.06

パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、9月に東京に上陸したベーカリー〈中村食糧〉をご紹介します。

未来のベーカリーが和歌山からやってきた。

左から、「イチゴ」760円(フランボワーズ生地にパインとマスカット)と「マロロン」480円(渋皮栗入り)。大きく焼いたハード系は、驚愕のやわらかさと口溶け。まるで未来のパン。
左から、「イチゴ」760円(フランボワーズ生地にパインとマスカット)と「マロロン」480円(渋皮栗入り)。大きく焼いたハード系は、驚愕のやわらかさと口溶け。まるで未来のパン。

「いままで出会ったこともないようなパンを焼くシェフがいる」噂を聞いて訪ねた和歌山の〈3ft(サンエフティー)〉。中村隆志シェフはぶっ飛んだ人だった。看板はなし。パンは見本を飾ってあるだけ。現金も使えない。常識に合わせようなんて気はさらさらないようだ。パンはハード系。それが、ぷるんぷるんふるえたり、じゅわーととろけたり、ぶどうのような香りがしたり。一口食べると、「おいしい」と「びっくり」がいっしょにきて、思わず笑ってしまう。そんな突き抜けたパンだ。

角食パン「お角」360円が並んだ棚。左・中村隆志シェフ。4種類の発酵種を巧みに操り、長時間熟成を経てありえない風味・食感のパンを生みだす。
角食パン「お角」360円が並んだ棚。左・中村隆志シェフ。4種類の発酵種を巧みに操り、長時間熟成を経てありえない風味・食感のパンを生みだす。
スペシャリテの「みんなのパン」560円(右)と、ようかんがモデルの「ヨカン」560円。カプセルの中にパンを飾る。
スペシャリテの「みんなのパン」560円(右)と、ようかんがモデルの「ヨカン」560円。カプセルの中にパンを飾る。
「ショコラン」680円。
「ショコラン」680円。

厨房に日の丸を貼っていた。「日本一のパン屋が目標です」冗談のようだったが、私はそれを信じることにした。彼のパンを野球に例えれば、コツコツ当てにいくタイプではなく、芯を食えばボールが場外まで飛んでいくようなでっかいスイング。その心意気やよし、である。そんな彼がこの9月、突如〈中村食糧〉と店名を変え、東京に進出を果たした。「東京を経験してみたくて。若いうちしか来られないでしょうし」強豪ひしめく東京で、どこまで通用するのか腕試ししたくなったのだろう。幸先は上々。すでに開店前から行列ができる人気だ。

〈中村食糧〉

中村さんのパンを表すキーワードは「溶かす」。中村さんは生地を長時間熟成させる。17℃という高めの温度帯で、パンの骨格を作る小麦の中のタンパク質はどんどん溶けていく。溶けるとともにやわらかくなって、あのぷるんぷるん揺れるような食感、じゅわーと溶ける口溶け、そしてハード系としてはありえないほどの甘さが生まれる。タンパク質が溶けすぎれば、パンとして成立しない。それをぎりぎり寸止めして紙一重でパンにするから、こんな奇跡のようなパンになるのだ。

妻のあみさんが差し出す「あんこマスカルポーネ」240円。ふるふる揺れる生地からあふれだすあんことマスカルポーネ。小麦、小豆、乳がとろとろ溶ける、クセになるあんバタ。
妻のあみさんが差し出す「あんこマスカルポーネ」240円。ふるふる揺れる生地からあふれだすあんことマスカルポーネ。小麦、小豆、乳がとろとろ溶ける、クセになるあんバタ。

オープン直前の厨房に入って気になったことがある。日の丸がなかったのだ。それを尋ねると、「そうそう、あの日の丸、持ってこないといけないですね」日本一の夢は、まだ追いつづけている。

〈中村食糧〉

〈中村食糧〉

清澄庭園脇にオープン。高加水の新食感ハード、セミハード計十数種を4種の自家培養発酵種を使って焼く、中村隆志シェフの未来系ベーカリー。
■東京都江東区清澄3-4-20
■10:30~15:30火水休
※イートインなし

池田浩明(いけだ・ひろあき)/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 ■パンラボblogpanlabo.jugem.jp

(Hanako1191号掲載/photo:Kenya Abe)

Videos

Pick Up

SP用トップ画像ハナコラボ パートナーが楽しむ、とっておきのホテルステイ実現の理由とは。これからの旅にはホテル提携のクレジットカードがお得! 〈ヒルトン小田原リゾート&スパ〉編。久しぶりに行動制限なしで外出を楽しめる今年は、旅行へのモチベーションが高まっている人も多いのでは。旅で使うお金や日常生活の支払いを一つのクレカにまとめると、ポイントや特典がついてお得に。貯めたポイントを次の旅行でも使えたりするから、クレカ選びは大切。今、旅行好きでコスパや特典重視の人たちにおすすめしたいのは、とっておきのホテルステイを驚くほどお得に実現できてしまうカード。 中でも注目すべきは「ヒルトン・オナーズ アメリカン・エキスプレス®・カード」。料金の上がりがちな週末に世界中のヒルトングループのホテルに一泊無料で宿泊ができる「ウィークエンド無料宿泊特典」などがあり、年会費の元があっという間に取れてしまうと評判です。そこで、旅行好きのハナコラボ パートナーの二人がこのカードを体験してみました。毎日の決済やヒルトンでの滞在などでカードを利用しポイントを貯めている様子や、どんな特典を楽しんだかをリポートします(抽選で100名さまにAmazonギフトコードカード500円分が当たる読者アンケートを実施中。回答は記事の最後から) (PR/ヒルトン・オナーズ アメリカン・エキスプレス®・カード)Learn 2023.08.31 PR
ホテルインディゴ東京渋谷時代と共に変わりゆく街・渋谷を表現!〈ホテルインディゴ東京渋谷〉が誕生大型複合施設〈道玄坂通 dogenzaka-dori〉の上層階に、〈ホテルインディゴ東京渋谷〉が8月29日(火)開業。ここでしか体験できない、クリエイティブな渋谷を感じられる施設とは?気になる魅力をご紹介します。(PR/ホテルインディゴ東京渋谷)Travel 2023.08.29 PR