甲斐みのりさんが綴る「銀座グルメ はじめて物語。」 サクサク派? それともしみしみ派? 好みがわかれるコロッケそば誕生秘話 FOOD 2024.04.16

明治初期、西欧風に改革がなされ、街に最先端の〝はじめて〞のものが集まった銀座。その感動は今も変わらず受け継がれている。銀座をルーツに持つ、おいしいものや場所を、甲斐みのりさんと訪ねました。〈銀座 よし田〉のコロッケそばについての物語です。

〈銀座 よし田〉のコロッケそば誕生秘話

フランス料理のクロケットを日本風にアレンジし、明治〜大正時代には、とんかつ、カレーライスに並び三大洋食のひとつとして人気を博したコロッケ。今でこそ庶民的なおかずの代表格だが、当時はパン粉の入手が難しく、高価でハイカラな食べ物だった。

そんな流行りのコロッケを、江戸っ子の日常食として親しまれてきたそばと掛け合わせようと思いついたのが、1885(明治18)年創業のそば店〈銀座 よし田〉の初代・須原甲子さん。通常のコロッケはコストがかかるため、鶏肉のミンチに山芋と卵をつなぎにして揚げた鶏しんじょをコロッケと謳ったといわれるが、時代が移り変わった今はかえって贅沢なほど。築地から仕入れる新鮮な鶏肉を出刃包丁でたたき、手間をかけて仕込みを行う。十字に切り目を入れた柔らかな生地からは、カツオや昆布でとった江戸前の甘辛いだしと、鶏肉の旨味が、じわっと滲み出る。石臼で挽くそば粉の自家製麺はキリリと締まった上品ないでたちで、喉越し軽やか。そこにシャッキリとした長ネギの食感と、馥郁たる柚子の香りが優しく寄り添う。

コロッケそば1,400円。冬場は牡蠣そばや牡蠣なべも自慢のひと品。年代問わず幅広く愛される街のそば屋。
コロッケそば1,400円。冬場は牡蠣そばや牡蠣なべも自慢のひと品。年代問わず幅広く愛される街のそば屋。

常連には「コロッケそば」の〝そば抜き〞をつまみに、お酒を嗜む人もいるという。なんとも粋な銀座での過ごしかた。いつか叶えてみたいと憧れている。

銀座 よし田

住所:東京都中央区銀座6-4-12KNビル2F
TEL:03-6264-5215
営業時間:11:30~15:00(14:30LO)、17:00~22:00(21:30LO)、土祝~21:00(20:30LO)
定休日:日休
席数:62席

photo_Norio Kidera text_Minori Kai edit_Kana Umehara

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