もっちもち。どんどんもぐもぐ食べてしまうパン
前田エマの秘密の韓国 vol.11 レストラン〈SIMPLIST〉とパン屋〈ONES OWN〉 TRAVEL 2023.10.16

この連載では、韓国に留学中の前田エマさんが、現地でみつけた気になるスポットを取材。テレビやガイドブックではわからない韓国のいまをエッセイに綴り紹介します。第11回目は、レストラン〈SIMPLIST〉とパン屋〈ONES OWN〉へ。

何度も食べたいと思うし、全部の料理を食べてみたいとも思う。

レストランへ行って、パンが美味しいととても幸せな気分になる。

ここ〈SIMPLIST〉にはじめて来たとき、最初に出てきたパンをひと口食べて、とても感動した。
うっわあ!なんだこれ!
その瞬間、次に出てくる料理たちへの期待値も、ぐんと上がった。
そしてそれは、まったく裏切られることがなかったのだ。

ここのパンは、とてもシンプル。
サワードゥという、小麦やライ麦に水を合わせて自然発酵させた天然酵母のパンだ。
イーストも砂糖も使わないので、素材本来の味をたのしめるだけでなく、身体にもいいと言われている。
余計なものを入れないので、日持ちもするパンだそうだ。

前田エマ_サワードゥ

とにかく、もっちもち。
水分量が多いのでパサパサしていないし、サワードゥ特有の酸味の中に、なんだか甘みも感じる。
外側も固くないので、食べやすい。
他の料理の邪魔しないだけじゃなく、そのままでも、どんどんもぐもぐ食べてしまう。

ここでは、パンと一緒に一風変わったバターが添えてある。
春に訪れた時は、海苔のバターだった。
海苔で作ったペーストが練り込まれたバターには、細い海苔が上にふわっとのっていた。
カムテという、12月〜3月にしか取れない貴重な海苔だそうだ。
程よい塩加減に、やみつきになってしまう。

前田エマ_バター

夏に訪れたときは、マンゴーのバターだった。
マンゴーピューレと混ぜ合わせてあり、そのバターの上に甘いマンゴージャムがかかっていた。
さわやかな、これまた素敵なバターだった。
ここのパンは、バターと一緒に食べたときに、調和が感じられるように作っているそうだ。

前田エマ_ジャム
前田エマ_レストラン〈SIMPLIST〉

この店の代表的な料理であるパイロールは、クロワッサンのようなサクサクの生地で、ミートソーセージが巻いてある。

前田エマ_パンロール

店を後にしようと、レジへ向かうと、ショーケースの中にサワードゥを発見。
どうやら販売していて、持ち帰ることもできる。
丸ごとひとつの大きなサイズと、カットした小さなサイズもある。

前田エマ_サワードゥ_ショーケース

「どの料理もものすごく美味しかったのですが、パンが本当に気に入りました。ここで焼いているのですか?」と気になってたずねると「一緒に運営しているパン屋がすぐ近くにあって、そこで作っているんですよ」と教えてくださった。

〈SIMPLIST〉の2軒隣にあるパン屋〈ONES OWN〉は、パン屋でありカフェだ。
バケット、フォカッチャや塩パン、クロワッサンなどのシンプルなものから、デザートパン、具がぎっしり詰まったサンドウィッチなどが並ぶ。

前田エマ_パン屋〈ONES OWN〉

テイクアウト用のハムやベーコン、スープなどもあり、目移りしてしまう。
ペーストも充実しており、アーモンドやヘーゼルナッツ、アールグレイ、トマトバジル、果物のジャムなど、種類が豊富だ。

私は、オリーブがぎっしり詰まったフォカッチャを買った。
これまたもちもちで、香ばしくて最高だった。

前田エマ_フォカッチャ

レストランである〈SIMPLIST〉に話を戻そう。
この店の名前〈シンプリスト〉に込められた意味、それはお客さんが主役になれるような、シンプルな空間を作るということだそうだ。
私が初めてこの店に来たのは、韓国に遊びに来ていた日本人の友人に誘われてだった。
私が通う語学堂の先輩である彼女は、私が留学を考えていたとき、とても親身になって相談にのってくれた。
そんな彼女とランチをする時間がとても充実して楽しかったのは、この店の雰囲気が良いものだったからだと思う。

その次にこの店に来たのは、私の留学生活をいつも助けてくれる韓国人の友人の誕生祝いだった。
ここを選んだのは、前回の感動が忘れられなかったからだ。
日本と韓国のパン屋で働き、自分の店を持つのが夢である彼女も、とても気に入ってくれた。
パスタやグリルした魚などの料理も、美しいだけでなく、本当に美味しい。
何度も食べたいと思うし、全部の料理を食べてみたいとも思う。

photo_Mio Matsuzawa edit_Kei Kawaura

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