「女が女を推す」時代に、彼女たちが支持されているワケとは? 【でか美ちゃん&ちゃんまい (ベッド・イン) 友だち対談】 SUSTAINABLE 2023.09.12

一昨年「ぱいぱいでか美」から改名した歌手・タレントのでか美ちゃん(写真・左)と、日本に再びバブルの嵐を起こさんとする地下セクシーアイドルユニット「ベッド・イン」のメンバー(ボーカル&ギター)として活動する、ちゃんまいこと中尊寺まい(写真・右)。お二人とも色気に満ち溢れ、男性ファンを虜にしている……ように見えますが、実は今、むしろ女性ファンが急増中(!)なのだそう。そこには「もっと自由に、自分らしく生きたい」と願う女性たち自身の変化、さらには社会の変化がありそう。そこで、お二人がなぜ女性たちに支持されているのか、その社会や時代の背景を掘り上げるべく、対談を実施。聞き手はライター・綿貫大介が務めます。

友人関係でもあるでか美ちゃん(写真・左)とちゃんまい(写真・右)
友人関係でもあるでか美ちゃん(写真・左)とちゃんまい(写真・右)

SNSの普及は女性たちを生きづらくさせた!?

ーーここ数年でお二人の生き方、パフォーマンスに強く共感し、推している女性ファンが増えているように感じます。肌感としてはいかがでしょうか。

ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
ベッド・インの活動当初の客層としては、バブル時代に憧れつつも、当時は学生だったり新社会人だったりして甘い蜜を吸えなかった現・おじさまたちが多い印象でした。それが2015年あたりから女性ファンが目に見えて急に増えたんです。今ではおギグ(ライブ)に来てくれるファンの7割が女性なんです。
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私もデビュー当時は芸名がかなりキャッチーで、グラビアも積極的にやっていた時期があったので、元々男性のファンが多いです。今でも男女比は変わらないのですが、ちゃんまいさんと同じぐらいの時期から女性ファンが新たについてきました。

ーーそれはなんでだと思いますか?

ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
ちょうどInstagramやTwitter(現X)が普及しだして、SNSを窮屈に思う子たちが多くなってきた時期だったと思います。周りの目を気にするような若い子が増えてきたタイミングですよね。それに対して、私たちがすごく自由なマインドを持って活動しているのを知ってくれて、そこに共鳴してくれたというか、面白がってくれたんじゃないかなと。
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私は今まで、自分が出会ってきた理不尽なことは全部自分のせいだと思って過ごしてたきたんです。しかしあるとき、自分が馬鹿にされている、ないがしろにされているのは、自分が女ってだけで受けてきた被害もあったということに気付いたんです。それは周りにフェミニズムをしっかり勉強されてる諸先輩方がいたおかげです。自分のせいじゃなかったんだと気づいてから、自分もそれを発信するようになりました。それを見てくれた女性たちが共感をしてくれたというのもあります。

ーーSNSの普及で他者をジャッジしやすくなった分、実はルッキズムやエイジズムはさらに加速し、格差を広げてしまったように感じます。お二人もその点でつらい思いをした経験が多いのでは?

でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
「ギリ抱けるわ」を褒め言葉として使ってきている人などもいましたね。私はその度にSNSでも言い返していました。キモいことを言ってくる人には気持ち悪いですって。
ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
同様のことをベッド・インもたくさん言われてきました。以前はバンド活動もしていたんですけど、その時も女性というだけで、いろいろ言われましたね。女が一人入るとかっこ悪くなるとか。私がはじめたバンド時代はまだまだ男性の世界でしたね。まぁ私は言い返していましたけど!
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私も最初はバンドをやっていましたけど、言い返しでもしないとやっていけなかったですよね、バンドの世界は。私たちの反抗のベースは、そこで培われたのかもしれないですね。

ーー男社会の中で、従順になったり迎合したほうが自分のポジションを取りやすいという考え方もあったと思いますが、それをせずにちゃんと歯向かってきたことで今のお二人はあるんですね。

ちゃんまい、でか美イラスト
でか美ちゃん、ちゃんまい
そうかもしれないですね。(声を揃えて)
「改名時に自分の考えを知ってくれた人も多いと思います」(でか美ちゃん)
「改名時に自分の考えを知ってくれた人も多いと思います」(でか美ちゃん)

コンプレックスをチャームポイントに変えられた

ーー女性ファンからはどういうリアクションがありましたか?

ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
ベッド・インのライブで言うと、「今まで自分の好きな服を着ることが怖かったけど、ベッド・インに憧れてボディコンを着てライブに来てみました」「赤いルージュを初めて塗ってみました」など、第一歩を頑張って踏み出せたということをよく言っていただきますね。
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私は元々、媚びてる側だと思われていることが多いのですが、全然そうじゃないと知っていただいて、女性が社会に対して抱く不満を代わりに言ってくれてありがとうございますと言っていただけることも増えました。

ーーお二人がおもしろいのは、今も昔も同性ウケを意識した活動をしていないところですよね。でか美ちゃんは「ぱいぱいでか美」として活動していましたし、ちゃんまいも「パイオツカイデ〜担当」だと公言されています。むしろしっかり男性に向けた戦略はとっていたわけで。

でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
そうですね。元々胸の大きさはコンプレックスだったんです。タイトな服が似合うのも知っていたけど、それは胸を強調してしまうから着られませんでした。自分が巨乳ってなんの意味があるんだろうと思って隠していたんです。女子から羨ましいと言われても、私はあなたの二重まぶたがどれほどうらやましかったか。そんな中、サークルの先輩が「ぱいぱいでか美」というあだ名をつけてくれたんです。異性からド正面で胸に対していじられたことはなかったのですが、そのとき初めてコンプレックスがチャームポイントになるのかもしれないと思えたんです。もちろんそれをすんなり受け入れたのは、先輩との信頼関係(重要!)があってのことです。それに、 男社会に対してより強い下ネタで打ち返した方がセクハラされないみたいな、身の守り方でもありました。
ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
私も胸のことでいろいろ言われたり、痴漢されたり、 軽い女に見られたりという経験があります。だからそんな目に遭わないように、ずっと男の人になりたかったんです。これまではなるべく胸や脚も隠すように生きてきました。きっかけはやはりベッド・インになるときでしょうか。バブル時代のお姉さんたちへの憧れというのも大きいですね。いっそ見せてしまえ!と自分を解放したら、オンナである自分で遊べるようになったんです。

ーーこの社会はまだどうしても男性優位で、そこに迎合しないと女性たちは生きづらいシステムになってしまっていると思います。しかし、ちょっと美化しすぎかもしれないですがバブル時代の女性たちからは主体性と自信を感じますよね。貢がれる側である自分たちの価値を知っていて、ちゃんと主役でいた。

ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
私はトレンディドラマがDAISUKI!なんですけど、あの頃はちょうど女性の社会進出が加速した時代ですよね。女性が男性と対等に生きているキラキラした世界は憧れです。男性の目も気にしないで、好きな服を着てお立ち台で踊りまくる女性がかっこいいと心から思っています!

ーー今の女性たちは主導権を持てていると思いますか?

でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
どうだろう、でも私は、女性も男性も、誰も持とうと思っていない感じになればいいなと思います。
ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
持とうとしてくる男性も減った気がするし、こっちもこれ見よがしに「女性の時代」だって力まなくてよくなるといいですよね。
聞き手・綿貫大介(ライター・編集者・テレビっ子)
聞き手・綿貫大介(ライター・編集者・テレビっ子)

男女ともに自分を開放できる場をつくりたい

ーーこれまでの話だけでも、お二人に付いていきたいと思う女性が多いわけがよくわかります。活動が下品に見えないのも、女性的な魅力はあくまでお二人にとっての一側面でしかないからだと思います。パフォーマンスも相当かっこいいですし。

でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私がベッド・インさんライブを観て思ったのは、解放されてる女性が多いということ。ここではバブルオンにして、ジュリセンを振り回して、好き放題に踊って、また明日から仕事頑張ろう、みたいな。

ーーライブで開放される女性たちがいるという話を聞くと、生きづらい世の中で女性同士でケア・エンパワーメントしあっている部分もあるのかなと思いました。

ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
たしかに、私たちも女性ファンに支えられて励まされている部分はあるので、それはあるかもしれないですね。男性ファンの優しさとはやはりちょっと違うんです。女性ファンはメイクの違いなど細かな変化にも敏感に気づいてくれるし。逆に今、男性の元気がないのでは?と思うこともあります。ベッド・インが肉食だからなのか、若い男性は怖がってなかなかおギグに来てくれないんですよ(笑)。バブル時代は女性だけでなく男性も元気でしたが、今はどちらも生きづらそうですよね。
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私のファンの男性も穏やかな人が多いかもしれないです。ファン同士のいざこざも聞かないですし。

ーー女性アイドルはファンから純粋無垢な処女性をいまだに求められがちだと思います。それに対してお二人はどういうアイドル像を目指していますか?

ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
ベッド・インは大人のアイドルとして、ロリロリ重視の現代のアイドルシーンにいっちょケンカの安売りをしようか、というコンセプトなんです。もちろん、今をときめく彼女たちに罪はないんですけどね! あと、私はファンにも依存させたくないんですよ。だって、私は彼ら彼女らの一生を背負えるわけじゃないから。正直でいたし、嘘をつきたくない。元々そういうスタンスでいるつもりです。
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
わかります。私はハロプロが理想のアイドルすぎて、私自身はアイドルを自称していないんです。憧れの嗣永桃子さん(Berryz工房)は自立した方で、引退されるときも「私の心配をするな。あなたたちが幸せになれ」と言って去っていった方でした。私もももちまでとはいかないけれど、誠実に人と向き合っていこうと思っています。

ーーこれからどういう姿勢をファンに見せていきたいですか?

でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
私は好きなように生きてた結果の今、みたいなところがあるので、 みんなも好きに生きてくれたらいいなと思います。でもみんながみんな自分みたいに気が強くないのはわかるので、気の強い自分が多めに発信することで、 ちょっとでも救われる人が増やせたら嬉しいですね。
ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
私たちを見て元気になったり、悩み事がちょっと和らいだり、なにかのきっかけになれるような存在になれたらいいなと思います。大きなことを言っちゃいますけど! これは男女限らずです。
でか美ちゃんイラスト
でか美ちゃん
わかります。男性には男性の呪いがありますもんね。
ちゃんまいイラスト
ちゃんまい
性別関係なく、みんながちゃんと開放できる場をつくれるといいですね。
「今日は下ネタ少なめですいません(笑)」とちゃんまい
「今日は下ネタ少なめですいません(笑)」とちゃんまい
ちゃんまい画伯自ら描いた2人のイラスト。2年ほど前から突如描き始めたという彼女のイラストのパンチ力は一見の価値あり。
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cooperation_aloft tokyo ginza photo_Ko Tsuchiya edit&text_Daisuke Watanuki

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