ハナコラボSDGsレポート テーブルで共に祈ろう。ウクライナ料理店〈Smachnogo (スマチノーゴ) 〉 SUSTAINABLE 2023.06.14

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。今回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、ウクライナ料理店〈スマチノーゴ〉のオーナー・TAKANEさんに話を伺いました。

自分の国を逃れなければいけないほどの大きな出来事に翻弄される人々がいる。そんな現実をどう受け止めたらいいのか。自分ができる小さな小さなアクションを起こすため、西新橋にあるウクライナ料理店〈スマチノーゴ〉を訪ねてみることにしました。

ささやかでも形にできる場所

ーーTAKANEさんはアーティストなどの活動をされていたそうですが、避難民の働くお店をつくることになったきっかけをお聞かせください。

「イタリアに10年ほど住んでいたこともあり、ウクライナは同じヨーロッパの一部のような仲間意識はありましたが、私自身行ったこともなければ友人がいたわけでもないんです。それでも、今回のことは報道を見て気の毒だと思いました。避難してきたのは同じような年代の女性たち。生活上で何か手助けしてあげられないかと考えた末に思いついたのがレストランでした」

ーー飲食店を形にするのはかなり大きなアクションだと思います。開店まで大変ではなかったですか。

「“いくらかは、必ず誰かの役には立つだろう”という想いがあったので、細かい壁はありましたが、支援が遅れないよう3カ月ほどで準備して、2022年9月にオープンしました」

ーーすごいです。私は何もできずにモヤモヤしていたので、こうやって直にウクライナを感じられる場所があることはありがたいです。

「日本人の中にも、ウクライナの人たちに心を寄せている人たちがたくさんいることを知らせてあげることで、避難民の彼女たちを勇気づけることができると思いますし、同時に『何かしてあげたいけど、何をすればいいかわからない』と支援の気持ちを持っている日本人たちが簡単に一歩を踏み出せるために、気持ちをささやかでも形にできる場をつくりたかったんです」

充実のメニューはコミュニケーションを重ねて

ーー実際にどんな風にしてウクライナ料理のメニューを作られたのですか。

「うちの店でも作っている黒パンのレシピを提供してくれたリディアさんご夫妻の避難先である三河安城(愛知県)までお話を伺いに行きました。私たちにとってなじみのないウクライナ料理はネットの情報だけが必ずしも確かとは限らないですし、地域や季節によって違うのか、どんなお肉やスイーツが人気なのかなど、もう少し詳しく知りたくて。その際にいただいた候補の中から店名も決めたんです」

ーー「スマチノーゴ」とは、どういう意味でしょうか。

「“おいしく召し上がれ”という意味です。ボナペティみたいにおいしくどうぞ、みたいな感じでね。支援のお店でもあるし、毎日とは言いませんが、毎週でも来れるように、できるだけヘルシーで日本人の口に合いやすいよう、和食とのフュージョン(融合)にしています。また和の要素とウクライナの要素を融合・調和させることで、避難民と日本人のコミュニケーションが上手くいき、避難民が居心地良く滞在できるという私の願いも象徴しています」

ーーメニューはスタッフのみなさんと一緒に考えられているんですか?

「基本は私が考えたものを料理長や避難民のスタッフにつくってもらい、出来るだけ集まって試食。みんなから意見を聞き、3〜4回試食を重ねてメニューになります」

ーーそういったコミュニケーションの場もあるんですね。お店ができてからのみなさんの様子はどんな感じですか。

「お店の面接のときは途中で泣き出してしまう方もいれば、一言もしゃべれない方もいて、当然ですが不安と憂鬱で笑顔の方は1人もいませんでした。開店前に別件でスタッフの取材をした記者の方が、しばらくして店に来たときに『別人のように明るくなっている!』と驚いたくらい、私から見ても明るさが戻ってきていると思います」

期間限定であれ…「終戦祈願スペシャルコース」

ーー店舗は「期間限定」と“続かない”ことを初めから打ち出す点では、通常の飲食店と大きく違いますよね。

「早く戦争が終わって国に帰れるのが1番なので。みなさん家族を残してきており、家も向こうにありますし、当然帰国を希望してます。だから早く戦争が終わって、みなさんが帰国できればいいなと思っています」

ーー私も毎日願ってはいますが、なかなか終わらないなぁ…と。これもモヤモヤさせられる原因の1つではあります。

「冬場は寒くて辛いから降参するという考えは両国の頭にもないでしょうから、勝負時期は春から夏だと思うんです。お互い早く終えたいのは山々で、どちらも続けたいわけではないはず。ゼレンスキー大統領も広島サミットに来られましたし、なんとか次の冬を迎えないために勝負をつけたい、そのために動いていると期待しています。どうか『終戦祈願スペシャルコース』を提供している期間に停戦に向けた一歩が、動きがあればいいなと思っています」

ーーそういうお話を聞けると希望が持てます。このテーブルから願いが届いて欲しいですね!

「去年のクリスマスは、ウクライナのクリスマス料理を避難民のみんなで手作りして、私も教わりながら提供しました。そのときは『最初で最後のウクライナ避難民による手作りクリスマスディナーになるかもしれませんよ』と提供していましたが、本当にそうなる可能性は十分にある。そうなって欲しいとも思っていますし、逆に召し上がれた方々がラッキーだったということになればいいなと願っています」

photo:Miyu Yasuda

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