浅間造り”と呼ばれる建物は国の重要文化財に。 日本一の富士山を拝む神社〈富士山本宮浅間大社〉へ。安産祈願やお宮参り…家族連れにも人気のスポット! TRAVEL 2020.09.06

古来、人々から崇められてきた富士山。その麓で、〈富士山本宮浅間大社〉は昔から変わることなく、いまもなお凛として静かに佇んでいました。 今回は日本一の富士山を拝む神社、〈富士山本宮浅間大社〉をご紹介します。

富士山に神を見た人々の時を超えた思いを感じて。

くっきりと姿が見えれば「きっといいことありそう!」、曇っていれば「うぅ残念」。そんなふうに、私たちを容易に一喜一憂させるパワーを持つ日本一の山、それが富士山。古代より神の鎮まる場所として人々の信仰を集めてきたという事実にも、すんなり頷けるのではないだろうか。

富士登山の玄関口にあり、富士信仰の要として麓に構える富士山本宮浅間大社は、全国に1300ほどある浅間神社の総本宮だ。富士山の噴火により荒れ果てた国を治めるため、垂仁天皇が浅間大神を祀り、山霊を鎮めたのが始まりなんだとか。それが紀元前27年のことだというから、まるでおとぎ話の世界のようだが、そんなわけで〝浅間〞は火と深い関係を持つ言葉となっていまに伝わっている。時代を追い806年、現在の地に社殿が築かれ、さらに1604年頃、関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康によって大造営が行われた。本殿、拝殿、楼門はいまも当時の形のまま残されている。なかでも本殿は2階建てと、全国的にも珍しい造り。一説には、1階の屋根部分を霊峰富士に見立て、その上に社があるように見せるためといわれている。

調べてみれば、富士山と浅間大社にまつわる伝説は数えきれないほど存在する。現在の主祭神、日本神話に登場する〝木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやびめのみこと)〞もしかり。神の世界でもっとも美しいと評判のその女神は、火が放たれた小屋で出産したという逸話の持ち主。〝美しい〞〝強い〞〝生み出す〞という形容が、富士山のそれと似ることからも縁起のいい神として崇められてきた。

浅間大社にはご神木の桜の木が500本も植えられている。3〜4月には夜桜の演出に提灯が灯され、境内は様変わり。
浅間大社にはご神木の桜の木が500本も植えられている。3〜4月には夜桜の演出に提灯が灯され、境内は様変わり。

ちなみに富士山の高さを1〜10合目に区切って数えるのは、生命をお腹に宿す10カ月間を意味するともいわれ、木花之佐久夜毘売命がゆえんになっている。特に、神がいると信じられてきたのは噴火口の深さに達する8合目。それより上は浅間大社奥宮の境内となっていて、山頂で朝日を拝む〝ご来光〞が験担ぎの代名詞となっているのもよくわかるだろう。

話はちょっと脱線するけれど、今回の取材で訪れた店の女将が、撮影後に雲隠れした富士山を指さして、「あなたが女の人だから、サクヤビメがやきもちを妬いちゃったのかもね」なんて、気の利いた言葉をかけてくれた。こんな何気ない会話の中にも、人々の心に自然と神が棲み着いて、千年も二千年も続いていく山の懐の深さを感じた気がした。

さて、場所は浅間大社の境内にある〝湧玉池〞。富士山に降った雨や雪が流され湧き出て満ちたこの池でかつて富士山に登る人々は禊を済ませて登山に臨んだという。白装束をたいまつつけ、松明を手にし、お経を頼りに何かを得ようと、いや、削ぎ落とそうと、神にすがる気持ちで山を登ったのだ。そういった先人たちの生きることへの感謝や畏怖、日々のあらゆる思いが、池の底まで透き通った水の中にゆらゆらと揺れて見えた。

〈富士山本宮浅間大社〉

本宮の境内の広さは約17,000坪という広大な敷地。全国に1,300ほどある浅間神社の総本宮だ。起源は紀元前27年にまで遡る。
■静岡県富士宮市宮町1-1
■0544-27-2002
■6:00〜19:00 ※季節によって異なるので要確認

(Hanako特別編集 合本・完全保存版『幸せをよぶ、神社とお寺。』掲載/photo:Masako Nakagawa text:Shiho Nakamura)

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