わたしが選んだ、新しく住むところの選択肢。|働く女性のための転機の準備 WORK&MONEY 2022.11.18

人生の転機を考えたときに避けては通れない「どうやって働くか」、そして、「どこに住むか」。今回は、10月28日発売「正しく整う大人のリゾート 温泉&サウナ」特集より「住むところ編」をお届け。住むところを変えるのは勇気がいること。その少しの勇気を出して実際に住まいを移したり・増やしたり、そうして新しい自分と出会い世界を広げてきた人たちのリアルな声を集めました。

FILE #1 藤原麻耶さん「無理だったら戻る! まずは行動すること」

藤原さん

コロナ禍で在宅勤務が当たり前になり、前々から考えていた移住に踏み切った藤原麻耶さん。「夫と2人、都内の1LDKでの在宅勤務に限界を感じ、逗子に引っ越そうと。東京の友人と頻繁に会いにくくなるので友達関係が希薄になるのではないかと心配しましたが、逗子にも知り合いができ、また、東京からも友達が遊びに来てくれるようになって、楽しいことが増えました。逗子の家では自分の仕事部屋を持つことができ、好きなものに囲まれて働けています。夏は仕事が終わったらおいしいごはんとライブを楽しみに海の家へ。春と秋は週末にビーチでSUPをし、冬は三浦半島をハイキング。とにかく家の外のアクティビティが楽しいです。また、月に2、3回は東京に行くのですが、それもいい気分転換になっています。移住は2年ぐらい考えていたのですが、夫と“無理だったら東京に戻ろう”を合言葉に一歩踏み出しました。やってみないとわからないことがたくさんあるので、まずは行動することが大事かな」

「嫌なことも“まぁいいや”と思わせてくれる海」
「嫌なことも“まぁいいや”と思わせてくれる海」

藤原さんが住んでみて感じた、メリット・デメリット。

メリット「海のそばに暮らす、憧れの生活を手に入れた」
自分の理想の暮らしが実現できたこと。逗子に暮らす人たちのいい意味で“ゆるい”ライフスタイルに学ぶことも多いです。

デメリット「スーパーが近くにないので、買い物が結構ハードです」
東京のように自宅近くにスーパーがあまりなく、またUberEatsやネットスーパーも範囲外なので、日用品の買い物が大仕事に。

FILE #2 松波砂耶さん「頑張りすぎず、自分のペースで働けるように」

松波さん

「コロナ禍でリモートの仕事が増え始めたタイミングで、東京のマンションの更新時期を迎えたので、思い切って地元・愛媛で家を借りることにしました」と松波砂耶さん。「自宅で仕事する時間が長いので、快適に暮らせるかがネックに。知人に紹介された愛媛のマンションの大家さんが同世代で、しかも、そこに友達も住んでいたので、ここに住んだら楽しそうだな、とイメージができました。休みの日になると友達と海や山に行ったりして、自然の中で思い切り遊んでいます」。今は月の3週間を愛媛で過ごし、1週間は東京に滞在。「東京を離れてみて自分は頑張りすぎていたんだと気づきました。東京にいたら緊急事態も対応しないといけませんでしたが、愛媛にいたらそれは無理なので、自分のペースで仕事ができるように。心に余裕が生まれたおかげで、キャパシティが広がったのか、気がつけば、クライアントが愛媛だけでなく、徳島、大阪、京都、鎌倉にまで拡大。今は旅するような感覚で仕事をしています」

快適な住環境を追求し、フルリノベした愛媛の自宅。
快適な住環境を追求し、フルリノベした愛媛の自宅。

松波さんが住んでみて感じた、メリット・デメリット。

メリット「食材などの物価が安い! 良質な温泉もすぐ近く!」
愛媛は野菜や果物がとにかく安くておいしいし、マッサージの料金も東京の半額以下。温泉が近くにあるのもうれしい。

デメリット「東京のホテル代がかさむと、家計を圧迫する出費に」
東京での滞在費。今は安く泊まれる快適なホテルを利用しているのですが、今後値上がりしてしまうとちょっと辛いですね。

FILE #3 河井菜摘さん「拠点の数だけ、自分らしい働き方をデザインする」

河井さん

京都に暮らしていた7年前、インスタグラムでフォローしていた方が暮らしていた鳥取の一軒家を購入することになった河井菜摘さん。当時は京都で修復家として活動し始めたばかりだったため、お客さんが離れてしまうことが不安だったそう。そのため、京都にも拠点を残し、定期的に金継ぎ教室を始めることに。鳥取は作家活動の拠点とするはずが、意外にもこの場所に来たいという生徒が増え、ここでも教室をスタートすることに。そして、二拠点を始めた翌年には東京にも拠点を借りて教室を開き、現在三拠点で生活をしている。「鳥取への引っ越しを機に、定期的に場所を変えるのが楽しくなって、今は各地を隔週で移動しています。教室を始めたことは自然の流れでしたが、教えることから学ぶことも多く、毎回発見が。教室があることで各拠点の維持費や交通費も一定して賄えるし、人との接点が増え、仕事の幅も拡大。多拠点生活によって働き方や生き方を自分でデザインできることを学びました」

鳥取の家。窓の向こうに美しい里山の風景が広がる。
鳥取の家。窓の向こうに美しい里山の風景が広がる。

河井さんが住んでみて感じた、メリット・デメリット。

メリット「複数の拠点を持つことで、フットワーク軽く、より自由に」
1カ月のうち6日を京都、10日を東京、残り2週間ほどは鳥取で過ごします。一つの場所にとどまらないことで考え方も自由に。

デメリット「使っていない時間が長いと家賃をもったいなく感じる」
外出自粛期間中、県をまたいだ移動がしづらく、1日も使っていない部屋の家賃を払い続けるのは辛かったです。

FILE #4 鈴木 茜さん「選択肢が少ない地方でも やりがいのある仕事を」

鈴木さん

「家族との時間を考え始めた時、地元に戻る決意をしました」と鈴木 茜さん。東京でECサイトの運営者としてバリバリ仕事をし、次のステップへ踏み出そうとしていた時期。福島に行くことは前向きな選択だった。「ただ、最初に就職した地元企業が想像以上にゆっくりで(笑)。これまで培ってきた技術や知識を活かし、やりがいも感じられる仕事がしたいと思ったら、地元にはその選択肢がとても少ないことに愕然としました」。その後、web業界の知見を活かせる今の会社の社長と知り合い、転職。「web制作業務と合わせて、webデザイナー養成講座のスクールもやっています。生徒さんの話を聞くと以前の私のように、“地元に戻ったけど興味のある仕事がない、キャリア形成ができない”と悩んでいる人が多い。現在はリモートで仕事がしやすくなったことで、場所に縛られない働き方が増えました。自分は何ができるのか、どんな仕事をしたいのかを常に考えて、情報を集めることが大事だと思います」

「“東北のお伊勢様”こと開成山大神宮がお気に入り」
「“東北のお伊勢様”こと開成山大神宮がお気に入り」

鈴木さんが住んでみて感じた、メリット・デメリット。

メリット「自分の車を手にしたことで移動できる範囲が広がった!」
車移動が当たり前になり、行動範囲が格段に広がった。東京は維持費が高く、マイカーを持つなんて考えられませんでした。

デメリット「気になるショップが近くにない。物足りなさを感じることも」
コスメやファッションなど気になる店が近くにないこと。ECは便利ですが、実物を見て買いたい時は、ちょっと不便です。

FILE #5 武井史織さん「大自然と都会のいいところをより実感」

武井さん

ソフトウェア開発をメインとしたグローバル企業に勤める武井史織さん。約2年前、オフィスがある東京以外に山口県にも住居を構えた。「もともと自律分散的な生き方を模索していて国外も視野に居住地を探していましたが、妊娠・出産を機に日本の大自然の中で子育てしたいと思い、山口県を選びました。会社はリモート体制が整っており、さらにコロナ禍以降はほとんどの打ち合わせが録画できるようになったので、より自分のペースで働きやすくなりました。現在は2、3カ月に一度のペースで二拠点を行き来。山口は一軒家なので、数カ月離れると庭がジャングルのようになりますが(笑)、庭で採れたキウイを近所の方に差し上げると、お礼に釣った魚をもらえることもあり、そういった交流に心が温かくなります。一方で、都会でネオンや雑踏を見るたび、“あぁ、この感じ堪らない!”とさらに愛しく思うように。多様な生活を体験することで、物事をより多角的に捉えられるようになりました」

「暖かくて海が近い山口県で、子育てできるのがうれしい」
「暖かくて海が近い山口県で、子育てできるのがうれしい」

武井さんが住んでみて感じた、メリット・デメリット。

メリット「自然豊かな環境にいると、いいアイデアが浮かびやすい」
気持ちのいい日は庭の木陰にアウトドアチェアを出して仕事。自然の中で考えていると新しいアイデアが出やすいです。

デメリット「自分の居場所はどこ? と不安になることも」
一つの場所に常にいるわけではないので、自分の居場所がどこなのか考えることも。でも、これはどこで暮らしても同じかな。

FILE #6 村上 萌さん「様々な地方の良さを知ることが強みに」

村上さん

プロサッカー選手の夫の移籍に合わせて、神戸、北海道、大阪、長崎と住まいを変えてきた村上萌さん。会社がある東京との二拠点生活を始めて10年になる。「彼との生活を考えて、大学卒業後は就職するよりも自分の裁量でやりたいことができるよう、起業を選択しました」。現在は“季節の楽しみと小さな工夫”がコンセプトのコミュニティメディアを運営するほか、地方の案件も手がける。「夫の所属チームはこちらで決められないので、なじみのない場所に引っ越すことは戸惑う場合もありますが、“せっかくだから楽しもう”精神で、その土地でしかできないことを体験したり、おもしろい人に積極的に会いに行くようにしています。すると、地元の人は気づいていないその土地の良さを発見でき、それが仕事のアイデアにつながることも。また、それぞれの場所で過ごす時間が限られるため、やりたいことが明確化でき、引っ越しごとに持ち物を見直す習慣も。自分にとって大事なものがはっきりするようになりました」

「長崎湾で初めて釣りを体験。大きなヒラメを釣りました」
「長崎湾で初めて釣りを体験。大きなヒラメを釣りました」

村上さんが住んでみて感じた、メリット・デメリット。

メリット「“ホーム”が各地にあることで人間関係も豊かに」
「おかえり」と言ってもらえる場所が増えたこと。自分の居場所が多数あることは、娘にとってもいいことだと思っています。

デメリット「子どもが学齢に達したら、学校はどうしよう?」
子どもの学校問題。今は未就学児なので私の出張に合わせて娘も行き来していますが、小学校に入ったらどうしようかと考え中。

【番外編】ハナコラボパートナーに聞いた住むところの理想と現実。

生の声を探るべく、ハナコラボパートナーにアンケートを実施。住む場所の条件、移住のきっかけ、気になるキーワードなど、住まいへのリアルな意識を聞きました。

text:Rio Hirai, Ayako Nozawa(FIUMEInc.), Mariko Uramoto

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