京都の庭園で注目すべきは…。庭園デザイナーが教える池泉式と枯山水の見方。
うがや・ゆり/大学卒業後、兵庫県立淡路景観園芸学校、カナダ・ナイアガラ園芸学校で学ぶ。庭園の設計など、国内外で活躍。『京都の庭とお菓子さんぽ』(エクスナレッジ)など著書多数。
ただ眺めているだけでも心が落ち着くけれど、見方がわかれば庭巡りはもっとおもしろくなる。
「庭を通して日本文化を知ることができるのが何よりの魅力です。優美で美しいなと思ったら『公家ゆかりの庭だった』など背景がわかると、心惹かれた理由がわかってグッと楽しくなりますよ」と庭園デザイナーの烏賀陽百合さん。日本庭園を大きく「池泉式庭園」と「枯山水庭園」に分け、楽しみ方を聞いた。「二つの違いは水があるかどうか。水を引き込むには川が近くになければならず、造るには大きな権力が必要でした。石や砂で水を表現する枯山水庭園は室町時代に発展した様式で世界でもほかにありません。街なかの小さな敷地でも造ることができ、禅寺を中心に広まりました」
どちらの様式でも注目すべきは、石。庭を読み解く鍵となる。「三つの石で仏様を表現する三尊石(さんぞんせき)、滝を登る鯉を表す鯉魚石(りぎょせき)など、石から庭のテーマが見えてきます。とりわけ京都は鞍馬石、貴船石といった美しい石に恵まれ、なおさら見どころです」
一年中いつでも拝観できる庭も多く、気軽に立ち寄れるのも京都のすばらしさ。
「春は桜、秋は紅葉が楽しめる庭も多く、葉が落ちた冬も庭の構造がわかっておすすめ。四季を通していつも美しいですよ」
水を巡らせた庭。【池泉式庭園】

池や小川などがある「池泉式庭園」。水が豊かな日本の景色を映し出す。極楽往生を願い浄土をイメージした平安時代を代表する「平等院庭園」をはじめ、豊臣秀吉が基本設計した醍醐寺「三宝院庭園」、徳川家による二条城「二の丸庭園」など、京都には歴史を物語る名庭が残る。「武家の庭は大きな石が配されて勇壮。公家ゆかりの庭では歌会や舟遊びが行われたりもしました。巡ると様々なスタイルが見えてきます」(烏賀陽さん、以下同)植物を知ることも庭巡りの楽しみ。「京都は湿気が多く苔の美しさも特徴。春秋に公開される「白龍園」は1963年に造園され、典型的な池泉式庭園とは少し違いますが苔が見事です」
【橋】庭を引き締め奥行きを出す。
石橋や木橋、土橋など、庭によって様々。「景観に奥行きや変化を与えます。灯籠や敷石なども見どころ。好きなデザインを見つけてください」
【石】大きな石こそ庭の主役。
古来、神聖なものとされてきた石が、庭づくりの主軸に。「石を運ぶにはマンパワーが必要。ふんだんに使うことは権力の表れでもあります」
【松】青々と力強い不動のエース。
冬も青々と美しい長寿の象徴。京都は赤松、東京は海沿いに多い黒松が主流。「京都は湿気が多い盆地なので松葉を剪定で減らし、風を通します」
石と砂から想像する。【枯山水庭園】

禅の思想などを石や砂で表す「枯山水庭園」。室町時代、方丈(本堂)前の空間に禅の教えを表す庭が造られるようになった。「禅寺の庭でよく表現されるのが中国から伝わる教え『蓬莱思想』。大きな石が不老不死の仙人が住む蓬莱山を表し、修行の末に死を恐れない悟りの境地へ行くことを意味します。石と砂の庭に海や山、龍や滝を見る。禅の庭はイマジネーションが必要。隠されたテーマを知ることで感動が深まります」大徳寺塔頭寺院 龍源院は室町から昭和まで時代の違う4つの庭と出合える。昭和を代表する作庭家・重森三玲(しげもりみれい)による東福寺の「八相の庭」、光明院の「波心庭」はモダンで新鮮。
【石組】組み合わせて景色をつくる。
石の配置からテーマを読み解く。三尊石は中央の大きな石が仏、左右の石が脇侍を表す。縁起の良い数字「七・五・三」の配置もよく見られる。
【雨】晴れも雨も雪も見もの。
晴天はもちろん良いけれど、濡れた石が美しい雨の日もおすすめ。「雪景色もぜひ見てほしい。砂紋の上に雪が積もってラインが際立ちます」
【砂紋】波を描き出し大海原を表現。
水を使わず水を感じさせるのが砂紋。波の動きを表す。「白砂の照り返しで方丈の中まで光が入り、満月の夜も明るく、間接照明の役目も果たします」
烏賀陽さんおすすめの庭。
醍醐寺「三宝院庭園」
桃山文化を代表する庭園。主石は足利家から細川家、織田信長から秀吉へ渡った藤戸石。
住所:京都府京都市伏見区醍醐東大路町22
TEL:075-571-0002
営業時間:9:00~16:30(冬期~ 16:00 )受付終了
拝観料:1カ所600円(春期800円)ほか。
東福寺「八相の庭」
作庭家・重森三玲の代表作。「全国の庭を実測調査し、美しさを探究。時代を超えて愛されるモダンな庭に」。
住所:京都府京都市東山区本町15-778
TEL:075-561-0087
営業時間:9:00~16:00(季節で変動)
拝観料:500円(11/1~600円)
建仁寺「潮音庭」
「監修の北山安夫氏は石使いが巧み。四方のどこから見ても三尊石が美しい」。方丈前の枯山水庭園は「大雄苑」。
住所:京都府京都市東山区大和大路通四条下ル小松町
TEL:075-561-6363
営業時間:10:00~16:30受付終了
拝観料:800円


















