食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。CASE50 臼井 悠
うすい・はるか/長野県生まれ。編集業の傍ら、2010年〜四谷三丁目の伝説の店〈スナックアーバン〉(現在は閉店)のママとして店に立つ。2022年〈ニューアーバン〉開業。編著多数、料理教室も主宰。@snack_urban。
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家具にこだわりナシ、蒐集品がインテリアに。

どこに焦点を合わせるべき? そう戸惑う〝目の声〞が聞こえてきそうな空間。物量と情報量の洪水。話を聞き始めると「これはタイの市場で買ったもの」「こっちはフィンランドの蚤の市で」と、物の一つひとつから情報の枝葉が伸びてゆく。キッチンの棚からあふれんばかりの布コレクションなど、万国〝布〞博覧会状態だ。酒場の主で、料理教室も開き、書籍や空間の編集も手掛ける臼井悠さんのお宅。ご本人の肩書も、情報量過多なのだから仕方ない……のか?
「グリーン」が基調のアンナチュラルな室内。

インテリアの取材で「グリーン」といえば、だいたい観葉植物のこと。天井まである観葉植物や温室のようなバルコニーは多く見てきたが「グリーンが大好きで」と話す臼井さんの家では、家具のカラーがグリーンだった!組み立て式のスチールシェルフに収納ケース、アフリカ製のチェア、古い食堂で見かける丸椅子のビニールレザーまで、さまざまにグリーン。撮影日の服装も、ライムグリーンのパンツという決まりようだ。
近ごろ主流のシンプルやナチュラルの真逆をいくにぎやかさ。スチールシェルフは計三台あり、キッチンに置かれた一台には調理器具や食器、布類がみっちり、収まっている。
寝室兼リビングに置かれた大型の二台は、本の収納がメイン。「東日本大震災のときに、本の山が崩壊してから、ずいぶんと処分、整理して。最近は極力、電子書籍を活用しています」と、話すが、それでも膨大な蔵書量だ。純文学から名作漫画、人文科学系まで、背表紙がそそる。「サンクトペテルブルクの空港で買ったんですよ」というお気に入りを筆頭に、ぬいぐるみコレクションがずらり。伊丹十三のDVDボックスに手塚治虫の知られざる作品(の、レプリカ)などなど、〝知の堆積物〞ともいうべき圧巻のコレクションである。
強すぎないこだわりがユニークさを醸す。
住まいの絶対条件は、仕事場と駅に近いことで、望むのは静かな環境と窓の多さ。すべてをクリアした東京・新宿区内にある今のマンションは、暮らし始めて4年になるという。
「出身が長野県の松本なので、東京の基点は新宿。新宿に出やすい町が落ち着くんです」
同じ町で住み替えをする人は多く、臼井さんも2回の引っ越しをしながら、20年近く、界隈に暮らしているのだとか。新しいより古い物件が好みだとも。築26年のマンションには、最近の建物にはなかなかない出窓が二カ所にあり、蒐集物のディスプレーに活用されている。
「インテリアにあまり強いこだわりがないところがこだわりですかね」と話し、収納用具などを購入した店を訪ねると「だいたいインターネット」とあっさり。得意げに教えてくれるのは、とにかく便利なもの、安く買ったけれど手放せないもの、百均アイテムの独自の活用法などなど。「一応名作家具」らしい本棚の脇に、健康器具があったり、実はキッチンには最新の調理家電もいくつかあったりと、室内は無秩序の大海原だ。
数あるアート作品の中には著名な作家の作品もいくつかあるが、値段や世の中的な価値より、自分の好き」が最優先。作品の裏には作家への敬意が、ときに個人的なつながりがあり、あまたの土産物は、旅の記憶と密接だ。逆説的だけれど、たとえもの自体が消えても消えない何かをまとうものたちばかりで、その何かこそが臼井さんのコアなのだと妙に納得した。
マニアックなのに間口が広い、どことも似ていない店や、そこで繰り広げられる誰もやらなそうだけれど、なんだか楽しそうなイベントなどなどは、たぶん、この部屋から生まれている。

【TODAY’S SPECIAL】旅の記憶でつくるやみつきの味。

〈ニューアーバン〉でも料理教室でも人気の、豆鼓と花椒が効いた中華風前菜の通称“無限枝豆”。手に入りやすい材料を基本に、臼井さんの旅を追体験できるような料理を習える料理教室は、お酒好きのリピーターでいっぱいなのだとか。家での食事はその試作や余り、あとは麺類と簡単に。自分のお酒は外飲み派。
【MY ESSENTIALS】意味がないほど愛おしい! 旅と人生の断片。
分類不可の捨てられないもの。

冷蔵庫扉には“いやげ物”の定番、ご当地マグネットからウズベキスタンの高速鉄道で配られた菓子の紙袋、人生最高のコメントに歓喜したおみくじなど。
聴きそこなった音楽。

(確か)カンボジアの旅で買ったカセットテープは、一度フリマに出すも買い手がつかず(笑)。「気に入ったら迷わず買う」布は南インドから。
悩んだら「実家」の発想で!

バンコクのチャイナタウンの露店、欧州各地の蚤の市の戦利品などなど。コーディネートなどと気取らず「実家での使い方を思い出して使うべし」。



















