“好きなことでつながっているから、私うまくやれているのかも”文筆家・佐々木ののかさんが移住した理由【後編】|私を生きる、ワタシの選択 Vol.6 LEARN 2024.05.27

結婚や妊娠、家庭とひと口に言っても、その在り方は人それぞれ。“普通”とされる選択“じゃない方”がしっくりくる人だってたくさんいる。そして、そのどれもが正解であり、自分らしい生き方。カップル間でのコミュニケーションや心理学を学んでいる、工藤まおりさんが、そんなあらゆる価値観や選択を掬い上げ、言葉として綴ります。前編に続き、東京を離れ北海道へ移住して3年が経つという文筆家・佐々木ののかさんにインタビュー。

【目次】文筆家・佐々木ののかさんが移住した理由。

東京での生活に疲れ、そして馬と一緒に暮らしたいという想いが高まり、家を建てることを決意した佐々木さん。故郷でありながらも、幼い頃とは環境の異なる北海道でひとり、地元の人とどのように繋がって暮らしているのか。後編では地方でのコミュニティ形成について話を聞いた。

同じ「目的」でつながっているから、居心地が良い

佐々木ののか

──新しい土地に一人で移住するとなると、新しい人間関係の構築が大変だと思います。どのように地域の方とコミュニケーションをとっていったんですか?

「移り住んだ当初は、自分で起業している方や小商いをされている方など、おもしろそうなコミュニティに顔を出して、色んな人と会ってみたんです。でも元々、人付き合いが苦手なのもあって、無理するのをやめました。なので、興味がある地域の集まりがあれば参加するくらいです。乗馬クラブ猟友会(狩猟者団体)に入ってるので、そこの人たちと交流しています」

──乗馬クラブと猟友会には、どのように参加したんですか?

「乗馬クラブは、馬に詳しい母の知り合いからの紹介です。馬と仲良くなるための調教システム『ホースマンシップ』を教えてくれる乗馬クラブがあると紹介してもらって、そこに通うようになりました。猟友会は、狩猟免許を取った後に役場に連絡すると会員の人たちに繋いでくれます」

──それぞれのコミュニティには、どんな人たちが所属しているんですか?

「乗馬クラブは10代の学生さんもいますけど、40代後半から50代くらいの方が中心ですね。私が通っているところは好きなときに行きたい人が集まって、お茶したり喋ったりするみたいな温かい雰囲気です。
狩猟の会は60代以上の方がメインで、女性は私の他にもう一人だけ。9割が男性で、これまでに獲った獣や良い猟場の話などを聞かせてもらいます。どちらのコミュニティも、農家の方や会社員の方など、いろんな職業の方がいます」

──どちらのコミュニティも佐々木さんと同世代の人がほぼいなさそうですが…

「確かに、言われてみたら同年代ほぼいないですね。だから私、うまくやれているのかもしれない。生きてきた年代が違うと、共通点も少ないじゃないですか。年長の方が譲ってくださっていることもあるでしょうし、自分の趣味好きなことという共通の“目的”でつながれるから、たとえ考え方やバックグラウンドが違っても衝突が起きない。この方が、居心地が良いのかもしれないです」

動物との距離が近い生活をしたい

猫

──因みに、なぜ狩猟免許を取得しようと思われたんですか?

「10年近く前から狩猟に興味があって、取材に行かせてもらったりしてたんです。当時は狩猟免許を取得しようとまでは思ってなかったんですけど、地元なら車も乗れるし、鹿もたくさんいるというのもあり、ここなら狩猟ができるかもって思い始めたんです。あとは、動物との距離感が近い生活をしてみたいという思いもありました」

──その理由は?

「東京に住むことに疲れたというのも、人間関係に疲れちゃった部分もあるんですよね。
当時から猫を飼ってたんですけど、動物とだったら安心できるみたいなところがすごいあったんです。狩猟も、動物と近い関係になりたかったから興味を持ったのかもしれません。殺す、殺される関係になった相手のことは、一生忘れられないじゃないですか。それぐらい近い間柄になりたかったんです」

──普段は、どのような感じで狩猟をしているのか、とても気になります

「初心者なので、1人でノコノコは行けなくて。狩猟の会に所属している人たち、20人がかりで鹿を囲いながら獲っています。山の上から鹿を追い込む係と、下で待ち構える係がいて、ベテランの人達が追い込む係を担当してくれて、私は下で待って銃を撃って仕留める担当をさせてもらっている、という感じです。まだまだ未熟で、撃てたことはないんですけどね。そのあと、血抜きをして捌いて、みんなで分けて持って帰ります。私はディアステーキとかローストにして食べるのがお気に入りです」

決めすぎない人生の方が生きやすい

佐々木ののか

──移住して今年で3年目になりますが、住みづらさは感じませんでしたか?

「東京で暮らしていた頃に髪を真っ赤に染めていて、こちらに住み始めてからもしばらくは赤髪をキープしていたのですが、その頃は住みづらかったです。スーパーで買い物をしていると、バーっとモーセの十戒みたいな感じで道が開かれるんですよ。小さい子供に『赤い髪の人だ!』と指さされたら、その親から『見ちゃダメ!』って言われたりもして(笑)。怖い印象を持たれてしまいそうだったこともあって、移り住んでから1年経った頃に黒く染めました」

──多様な人がいる都心では、髪色だけで拒絶をされることはあまりないですもんね。地方だと“出産=結婚”という考えが根強い地域もありそうですが、結婚について色々聞かれたことはありますか?

「妊娠した時も、家を建てた時も『結婚は?』と聞かれたことはあります。ただ、それは“地方だから”ではなくて人によるのではないかと。結婚をしてないことを伝えたら、今流行りのオシャレなやつねと言ってくれたり、シングルで子どもを育ててるなんて立派だと褒められたりもします(笑)」

──最後に、佐々木さんは今後の暮らしについてどう考えているか教えてください。

「小さい頃から東京に憧れて、死ぬまで東京で暮らしたいと思ってきたのですが、今では故郷に戻って家まで建ててしまった。どうせ決めても思い通りにならないその時の選択で良いようになっていくということだけは移住をして分かったので、最初から決めてかからずにいこうという考えになりました」

──昔の自分が今の自分を見たら、なんと思うと思いますか?

「なんだか面白い展開になってない?って思っているかも(笑)。昔は、自分自身こうでなきゃいけないみたいな執着があったけど、思い通りにならないこともあるということを知って。北海道に移住して、自分で自分の枷みたいなものを外すことができた気がします。決めすぎない人生の方が生きやすいです」

自分の庭で育てた野菜や、自分で獲った動物を食しながら北海道でのびのび暮らす佐々木さんの姿は、とても輝いていて、自然で、美しかった。移住という選択をしたことで、東京では味わえないような人生の楽しみ方を新しく見つけたのかもしれない。

text_Maori Kudo photo_Takako Iimoto

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