伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第34回

LEARN 2023.01.06

乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。

(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Ayumi Nakaitsu)

「肩書きに戸惑って」

大学生の頃よく通っていたカフェに、最近また訪れるようになった。目的は仕事のための勉強をするためで、その内容は主に時事。多くの人の人生が絡んだ壮大な背景のある出来事に対し、数分のVTRを見て数十秒で何か言う。昨年の下半期から、この手の仕事が急増した。番組によっては、直前の打ち合わせで新聞やネットニュースのコピーを渡される。でもそれをパラパラ読んだ程度では当たり前に支離滅裂になる。そんな「素人コメンテーター」の必要性は、やっている自分が一番わからない。ニュースを専門的な分野から論じるのは無理だし、制作側もそこまでは頼んでない。きっと望んでもいない。私が有益な視点をもたらすとは誰ひとり思っていないだろうから、その点では気楽。だがメディアで何らかの発信や表現を続けていると、視聴者の誰かを傷つけてしまったり、嫌われたり、軽蔑されたりする。それがどうもきつい。いつか慣れるかなと思ったけど全然慣れずに、毎度しんどいなあと思う。

そもそも私は自分に自信がない。自分の見た目も人格も声も、気になるところや直したいところばかり。自分の出た番組を見返すのも得意じゃない。たまに見直しても粗ばかりが目立ち、山盛りの反省点に落ち込むので、自分の過去は必要以上に振り返らないようにしている。一方で、世の中で起きていることには興味津々。選挙のしくみ、ロシアによるウクライナ侵攻、国葬、宗教問題など、報道番組への出演を機に調べていくと、世の中への目の向け方が少しずつ変わっていって楽しい(内容はかなりヘビーですが)。一方で知らないことは何も知らない。サッカーワールドカップも『愛の不時着』も『ONE PIECE』も、昨年初めて見た。避けていたつもりはないのに通らなかったエンタメが多すぎる。面白くてびっくりした。かなり遅いけど。

メディアに携わる仕事を始めた当初、何をやりたいか、どんな仕事がしたいか、明確な目標はなかった。頑張って背伸びしてでもなりたい理想像も思い浮かばない。どうしたら目の前にある仕事を成立させられるか、どうしたら周りの人と気持ちよく働けるか、そればかり考え、悩み、時に楽しみ、緊張もしながら、結果としてカメラやマイクの前で話している。それ以上でも以下でもないので自分が「芸能人」だとは思っていないし、いかにもな肩書きで紹介されると困惑する。たとえば、昨夏までは「乃木坂46の山崎怜奈」と所属先を合わせて紹介していただいていたし、それをありがたく思っていた。じゃあ今は「元乃木坂46の」が適切なのかというと、首を傾げてしまうのが本音。グループ時代にお世話になった方々との交流も続いているし、気まずさみたいなものは全くない。だが、ほかの誰かが「元〇〇区役所の」とか「元〇〇保育士の」などと紹介されている場面は想像しにくく、過去の職歴が紹介され続けることに違和感があるのだ。どうしても番組側から肩書きを求められた時は「タレント」で了承していただいているけれど、それはそれでフワッとしていることも自覚している。肩書きにこだわりたいわけではない。されど気になってしまうのが、私の面倒くさいところ。

でも誰が何と評したとしても、私は自分でしてきた選択の全てが、これでよかったと思いたい。それだけは変わらずに抱き続けている願望。あと「時間がない」とは字義通りの意味というよりも「体力がない」という意味だと最近学んだので、知的好奇心を満たすためにも重い腰を上げて体を動かし、地に足をつけるどころか突き刺すくらい堅実に、欲張ることなく仕事します。今年もよろしくお願いします!

コート 85,800円、パンツ 34,100円(共にフミエタナカ|ドール■03-4361-8240)/ベスト 30,000円(ジュゲム|UTS PR■03-6427-1030)/シューズ 36,300円(セレナテラ|ホールバイセレナテラ■03-6419-7732)/Tシャツ、スカーフ(共にスタイリスト私物)

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