伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第25回 LEARN 2022.08.19

乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。

(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Chika Niiyama)

山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」

「今とこれから」

この1カ月、今までとは異なる仕事の進め方を試している。私の今の立場から説明すると、「事務所を移籍するのは決まってるんだけど、どこに行くのか決まってない」というなんとも中途半端な状態である。これはひとえに、アイドルをやりながら移籍先を探す、ということができなかった不器用かつ無知な私のせい。それを理解してくださっている現事務所社長のご提案で、残留期間、すなわちアイドル時代からお世話になっている方々に、一旦身元を預かっていただいている。「もう知りません〜全部自分でやってくださいね」的な突き放しに遭っているわけじゃなく、むしろ私の身を案じて守ってくださっているので、関係各所の皆様には感謝してもしきれない。

ということでこの期間は、自分でできることはなるべく自分でやっているが、どうしても難しい事務的な部分は、引き続き旧知のスタッフさんがやってくださっている。ラジオ現場での動きはあまり大きく変わらないけれど、事務所を経由して原稿を提出していたこの連載は、編集者さんと直接やり取りさせていただくようになった。記事に掲載される写真も自分で確認するようになり、カメラマンさんに撮影していただいた写真のデータをタブレットにダウンロードし、レタッチが必要だと感じた箇所があれば、タッチペンで書きこんでお願いしている。そういった作業のさじ加減などの小さな疑問が浮かぶたびに、昔から面倒を見てくださっているスタッフさんに尋ねながら、本当に少しずつやれるようになってきた。洗練されていない現在の生活は常時カオスだけれど、How toを指南してくださる方々のおかげで、大きなトラブルを起こさずに進められている。改めまして、この場をお借りして伝えさせてください。預かりの身である私にもやさしくしてくださり、本当にありがとうございます……。

変わったことで言うと、元々撮り直す予定はなかったのだが、自己判断で宣材写真も新しく撮り直した。アイドル時代の写真を使い続けるわけにもいかないし、メディアへ提出できるプロフィールがない状態が続くと先方を困らせてしまうかもしれないな、自由に使える写真があったほうが便利かな、みたいな思考を巡らせた末である。自分から撮り直したいと言うのだから、当然自分でカメラマンさんにお願いしなければならない。しかしほとんどツテがない。先行き不透明な中、私が10代の頃からお世話になっていたスタイリストさんに「カメラマンさんをご紹介いただけないでしょうか?」と相談したら、紹介どころか、衣装の用意からロケ先への移動車まで用意してくださった。さらには撮影場所も決めてくださり、私が当日までにやるのは、駐車場と準備場所と室内スタジオを会社に借りる手続きだけ。決まった撮影日は意外とすぐだったので、ヘアメイクは自分でやるか、ダメもとでオファーしてみるか迷い、「またザキさんの現場につかせてね」と言ってくださっていたヘアメイクさんに連絡を取ってみたら、快諾してくださった。なんてことだ。特に人生の変わり目では、たとえどんなに目まぐるしくても、差し伸べられた救いの手にちゃんと気づき、感謝し、掴まなくちゃいけない。このご恩は忘れません。

ここ数週間、頭の中では仕事のことが渦巻き続けているし、ちょっとアドレナリンが出すぎている気もする。翌日の仕事内容によっては、寝ながら夢の中でも仕事しちゃうくらいの緊張っぷりだが、向こう半年くらいは食いっぱぐれても大丈夫なように貯めておいたお金も、どうにか切り崩さずに生きている。予想していなかったような方面からのお仕事も時間の許す限りやらせていただいており、今まで使ってこなかった筋肉をすごく使ってきた。人は分かりやすく美化された過去に恋するし、ある程度分かっている結論に向かって走りたくなる。でも過去を愛おしく思うばかりでは、新しい経験はなかなかできない。予想外の結末に笑ってしまうような出来事とか、珍しい話を聞けそうな出会いとか、それに伴って背負うリスクも増えるかもしれないけれど、そういう自分の思い込みを覆すようなことが人生に起こるうちは、積極的に向かっていったほうが良さそうな気がしている。ただ、「何者かになりたい」のではなく、いろんなものを観察したり経験したり学んだりしたいだけなので、働き盛りと言われる年齢のくせにこんなことを言うと怒られるかもしれないが、最終的に数十年後はなるべく働かず、好きに生きていきたい。

ワンピース 17,380円シールームリン(シールームリン ■03-6804-6844)/バッグ9,900円、サンダル 13,900円 (共にチャールズ&キース|チャールズ&キース ジャパン https://charleskeith.jp )

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