豊かな未来のために、今、みんなで考える。 職場でのジェンダーレスを考える。|4人の賢者が答える、未来のための相談室。 LEARN 2022.07.27

全ての人が尊重される未来の実現のためには、わたしたちの悩みの解決も大切な一歩なはず。すぐには解決しなくても、どう考えればいいのかだけでも、教えて賢者たち!

Q.1「すっぴんの女性社員に、化粧をしてほしいとお願いするのは時代錯誤?」

無えええ題

現在管理職で、他の社員に注意することも多い立場にあります。接客を担当する女性社員がいつもすっぴん、髪の毛パサパサで出勤します。周囲からも「化粧くらいしてくるように伝えては?」と言われるのですが、昨今のジェンダーレス的な考え方からすると、男性社員は化粧をしなくてもいいのに、この女性社員に化粧をするように注意することは果たして適切なのか?という気持ちがあり、何も言えずにいます。最低限の身だしなみとしてお化粧はしてほしいと思うのは時代錯誤でしょうか。(ももあいす/33歳)

A.イシヅカユウ「清潔にしていれば化粧の有無は本当のところ問題ではないと思います」

男性と女性で分けて考えているから良くないのではないでしょうか。身だしなみが大事な業務なのであれば、性別にかかわらず同じように身だしなみに注意が必要ですが、女性だけがお化粧をすることが身だしなみであるかと言われると答えはNOだと思います。そしてこれは昨今の「ジェンダーレス的な考え方」などではなく、男女差別の話だと思います。直接お客様に関わる業務であっても、清潔にしていれば化粧の有無は本当のところ問題ではないと思いますし、女性だけが能力や業務とはなんら関わりのない化粧をすることを強要されるのならそれはルールの方が間違っていると思います。

Q.2「セクハラを気にする男性部下とうまく付き合うには?」

3無題 (1)

私の部下は、ほとんどが既婚男性。私が意識しすぎているのかもしれないとも思うのですが、彼らはハラスメントに非常にセンシティブになっていて、私への発言に日々気を使っているのが伝わってきます。だからこそ、私も気を使ってしまって彼らを食事に誘うこともできません。上司と部下であっても男性同士では2人で飲みに行き、その後職場でのコミュニケーションが円滑になっているような様子を目にすると、羨ましいという気持ちが募ります。マネージメントする立場の人間として、職場以外でもコミュニケーションを取りたいと思うのですが、仕方がないものでしょうか。 (sun/41歳)

A.吉村泰典「まずは自分の部署が心理的安全性を確保できているか見直してみる。」

セクハラをする人は論外ですが、ハラスメントをしない人たちがお互いに必要以上に気を使っていると感じるならば、あなたの部署が〝心理的安全性〞(「組織や集団の中で、非難や拒絶の不安がなく発言できる環境」を指す心理学用語)が得られる部署になっていないのかもしれません。

心理的安全性が保たれた組織は“話しやすさ”が担保されているのが前提で、“助け合える”“挑戦する意識を持てる”“新規性が歓迎される”という点が大切だといわれています。そのためには顔を合わせてたわいもない雑談を交わしたり、互いの心身に対しての配慮をすること。女性の生理に対する理解も重要でしょう。これは相談者様のように上司が女性であっても、男性であっても同じです。職場外でのコミュニケーションを求める前に、まずは自分の部署が心理的安全性を確保できているか見直してみる。そうすることでその先のコミュニケーションも変わっていくのではないでしょうか。

Answerers

◆吉村泰典(よしむら・やすのり)/産婦人科医師・慶應義塾大学名誉教授・ウィメンズ・ヘルス・アクション代表。生殖医療の第一人者として、不妊症、分娩など数多くの患者の治療を担当。ウィメンズ・ヘルス・アクションのメディア「わたしたちのヘルシー」(https://watashitachino-healthy.com/)にて、心と体の話を始めるきっかけを発信している。

◆太田啓子(おおた・けいこ)/弁護士。神奈川県弁護士会所属。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバーとして、主に離婚、セクシャルハラスメント、性被害などの案件を手がける。近著に『これからの男の子たちへ「 男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店)など。

◆イシヅカユウ/モデル・俳優。1991年生まれ。2021年に、文月悠光の詩を原案とした短編映画『片袖の魚』で主演としてスクリーンデビューを果たす。雑誌やCM、ショーなどさまざまな媒体で活躍中。体が男性として生まれながら女性のアイデンティティを持つMtFであると公表している。

◆鈴木涼美(すずき・すずみ)/社会学者・作家。1983年生まれ。慶應義塾大学在学中にAVデビューしたのち、東京大学大学院を修了し、日本経済新聞社記者を経て作家に。書評から恋愛エッセイまで幅広く執筆。近著に『ニッポンのおじさん』(角川書店)、『娼婦の本棚』(中央公論新社)など。

(Hanako1210号掲載/illustration : Suzu Saito text & edit : Rio Hirai, Uno Kawabata (FIUME Inc.))

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