まちをつなげるパン屋さん by Hanako1182 人気ベーカリー統括シェフが新店オープン!鎌倉〈BREAD IT BE〉でつくる「〈SAWAMURA〉と〈THE CITY BAKERY〉で積み重ねた10年の集大成」。

LEARN 2020.03.07

パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、神奈川県鎌倉市にある〈BREAD IT BE〉をご紹介します。

人気ベーカリーのシェフが原点回帰する食事パン。

いまや一大ベーカリーチェーンとなった〈SAWAMURA〉、〈THE CITY BAKERY〉。その統括シェフである森田良太さんの本気が伝わってきた。鎌倉・若宮大路から本入った路地に月日オープンした〈BREAD IT BE〉。食パン、カンパーニュ、クロワッサン...濃厚な焼き色のパンはオーラをまとっている。「クリームパン、カレーパンをやる気はない。ハード系などの食事パンに特化して作っていきます」思いを象徴するシャンデリア。 食パンやクグロフなど、各店から集めた型でできている。

〈BREAD IT BE〉鎌倉

「〈SAWAMURA〉と〈THE CITY BAKERY〉で積み重ねた10年の集大成です」大きな店で実現できなかったとっておきのレシピを、小回りよく実現するためのアトリエなのだ。森田さんが目指すのは、「フィリングではなく、生地自体がおいしい」パン。人気の菓子パン・惣菜パンに目もくれない。それでも客足が引きも切らないのは、なぜか。心地よいもちもち感、しっとり感、ちゅるりとした口溶け、つづいて小麦の甘さ。ハード系特有の食べにくさは感じない。

「ハード系っていうけど、しっとりしてもっちりしているんですよ。お客さんがもっている『硬い』というイメージを変えたい」そのための武器が、店のロゴにもなっている「石臼」。「おいしい小麦を自分で挽いて、おいしいパンを作ろうと」「秦野産小麦自家製粉コンプレ」は、秦野でとれた「ゆめかおり」を湘南小麦の〈ミルパワージャパン〉が製粉、プラス同じ小麦を石臼で自家製粉したものもブレンド。これが挽きたてならではの甘さなのか。まるできなこのような心地よさ。ぷるぷる感も相まって、ハード系なのに、わらびもちを食べているかのようだ。

食感も香りもインパクトを残す特別なパン作りのアトリエ。

森田さんは和歌山県田辺市とも関係を築く。50種類もの柑橘を育てる生産者による季節の柑橘ピールで作られる「サングリア」というパン。取材時使用されていたレモンピールは、野性味、生き生きとした苦味や酸味で、レーズンなど他のドライフルーツに刺激を与え、おいしくしているのだ。森田さんはこの小さな実験室に 原点回帰し、ローカルとつながっ て、大量生産の素材にはない、新しいおいしさを発見しつつある。

〈BREAD IT BE〉

〈BREAD IT BE〉鎌倉

〈SAWAMURA〉〈THE CITY BAKERY〉の森田良太統括シェフによる新店。看板は石臼による自家製粉。水出しコーヒーや厳選のジャム、オリジナルグッズも。
■神奈川県鎌倉市小町2-16-35
■0467-33-4680
■9:00〜18:00水、第2木休
■テラス8席/禁煙

池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog

(Hanako1182号掲載/photo:Kenya Abe)

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