父考案の茄子あんかけそば1,600円。季節を問わず人気。地鶏入り。
父考案の茄子あんかけそば1,600円。季節を問わず人気。地鶏入り。

蕎麦前も酒も充実 京都で毎日通いたい!
町の小さな蕎麦屋〈通しあげ そば鶴〉 Food 2023.09.13

両親への愛があふれる仲良し3きょうだいが、各自の役目をこなしつつ、協力体制で臨む蕎麦屋。飲んだり食べたりするうちにどんどん楽しくなる、温かい雰囲気が漂う。

京都の味-家族物語-

カウンターに座ると、壁面全体に広がる貫禄の食器棚が目に入る。長年使い込んで、いい味出してる棚である。家族がここまで紡いできたあの話この話を静かに見守ってきた、店の〝主〞だ。
 

美しい食器棚
美しい食器棚

一乗寺に店を構える〈通しあげ そば鶴〉は仲良し3人きょうだいが営む蕎麦屋だ。じっくり熟考型の、本人曰くショートスリーパーの長男・石田重人、ちゃらく見えるが真面目なモテ次男・英雄、周囲に元気をふりまく眞咲子の3人だ。ハッキリ性格が違うように、いただいた名刺の名前のロゴが三人三様なのもおもしろい。

そもそもは父が始めた店である。父は中学を出て、塗装屋、新聞配達、ボーイなどを経て、蕎麦屋へ。何をしても要領がよかったが、ぶつかることも多かった。23歳で独立。よく言えば我が道を行く人。悪く言えば、好き勝手な人だった。店を始める際も、長男出産のため母が里帰りしている間に勝手に建ててしまったのだ。現在の店舗には、長男が小学校2年生のとき、転居した。2階が自宅。入口は店と同じだから、きょうだい3人とも学校から帰ると必ず店を通って2階に上がった。両親が働く姿をいつも見ていた。

父と同じように毎日メニューを書くのは長男。下書きなし。そして左から書く。「とめとかきっちり書きたいタイプ」だそうだが、美しい。
父と同じように毎日メニューを書くのは長男。下書きなし。そして左から書く。「とめとかきっちり書きたいタイプ」だそうだが、美しい。

つい昨日のことのように、両親の思い出を話す3人。自分の親でもないのに、聞いてるうちに胸が熱くなる。

バブルの頃は店舗を拡大し、京都に4軒も店を構えるほど「一時はイケイケだった」そうだ。現在の店舗の前で、父と母と3きょうだいでの記念撮影。
バブルの頃は店舗を拡大し、京都に4軒も店を構えるほど「一時はイケイケだった」そうだ。現在の店舗の前で、父と母と3きょうだいでの記念撮影。

きょうだい3人、紆余曲折を経て最終的にここで働くことになるのだが、最初は両親と次男、次に長男が加わる。しばし4人で働いたが、母が病に倒れる。母は太陽のような人で、余命宣告を受けても、丸坊主にバンダナ姿で働いていた。兄弟は絶対に暗くならないよう、明るく明るく振る舞った。母が逝った2年後、母のことが大好きだった父も逝った。肝臓ガンだった。

父考案の茄子あんかけそば1,600円。季節を問わず人気。地鶏入り。
父考案の茄子あんかけそば1,600円。季節を問わず人気。地鶏入り。

母が亡くなってヒマになり、父が亡くなってまたヒマになった。「兄弟2人でボーッとしてたなぁ。ヒマやし、いろいろ考えた」。知らず知らずのうちに暗くなっていた。このままではダメだ。店を守らなくては。そして、自分たちがもっと楽しもうと気持ちを切り替えると、「こんなんやってよ」というリクエストが増え、楽しくなってきた。客層も変わっていった。

米子の白ねぎを使った人気のねぎの天ぷら750円。天丼のたれをかけて。
米子の白ねぎを使った人気のねぎの天ぷら750円。天丼のたれをかけて。

その頃、妹が戻ってきた。3本の矢ではないが、店がぐっとパワーアップした。蕎麦前のさらなる充実をはかり、日本酒も強化した。「3人体制になったとき、最初に役割を決めたんです。長男は酒担当で、接客と厨房を行き来する。次男は厨房のみ。私は広報部長(笑)」と、眞咲子さん。店に活気が戻ると、おもしろいことに、いったん離れた客も戻ってきた。「3人とも店が好きだった。だから、ここがあって、ほんとうによかったなと思う」

蕎麦を打つのは長男。香り豊か。細めの上品な蕎麦だ。
蕎麦を打つのは長男。香り豊か。細めの上品な蕎麦だ。

〈そば鶴〉は、毎日来てもあきないくらい蕎麦前が充実している。気取りのない、街の小さな蕎麦屋だが、一品一品に心がこもっている。両親が大事に育ててきた店、3人の思い出も詰まった店だ。これからも力を合わせて頑張っていく。

通しあげ そば鶴

住所:京都府京都市左京区高野玉岡町74
TEL:075-721-2488 
営業時間:11:30~15:00、17:30~21:30LO、土日祝11:30~21:30LO 
定休日:月・第2火休

名物のピリ辛味のすじこん1,000円、蛸のサラダ1,500 円など。蕎麦は、せいろそば750円、ぶっかけ900円はじめ多彩。丼ものも多々。蕎麦前も蕎麦も食べたいものばかりが揃う。

photo_Keisuke Fukamizu text_Michiko Watanabe

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