ハナコと考えるSDGs 【〈RICCI EVERYDAY〉共同創業者・COO 】仲本千津さんのストーリー/「リスクを想像しすぎるのではなく、まずは行動してみること。」 SUSTAINABLE 2020.06.19

最近よく耳にするようになったSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉。「持続可能な開発目標」と訳され、2030年までに“誰一人取り残さない”よりよい世界を目指して17の国際目標が掲げられています。それは政府や企業の頑張りだけでなく、私たちがもっと意識して毎日を“変えて”いくための課題でもあるのです。そこでハナコは、SDGsについて読者のみなさんと考える特集を企画しました。今回は“わたしらしく働く”ことをあきらめない、〈RICCI EVERYDAY〉共同創業者兼 COO/仲本千津さんのストーリーを紹介します。

自分が欲しいバッグを作る。それがすべての始まり。

代官山にある〈RICCI EVERYDAY〉では、アフリカンプリントのバッグをはじめ、自分の好きな布を選んでオーダーできるアパレルなどもそろう。
代官山にある〈RICCI EVERYDAY〉では、アフリカンプリントのバッグをはじめ、自分の好きな布を選んでオーダーできるアパレルなどもそろう。

「学生時代にアフリカ政治の研究をしていたこともあり、NGOで働いていました。ずっと行きたいと思っていたアフリカ・ウガンダへ駐在することになったのが2014年6月。これが私の転機ですね」と話すのは、アフリカンプリントの布を使ったバッグブランド〈RICCI EVERYDAY〉の代表・仲本千津さん。駐在先でアフリカンプリントと出合った。「お店で初めて手に取った時、時間を忘れるほど夢中になりました。

アフリカならではの小物類も充実。
アフリカならではの小物類も充実。

『これはビジネスになる!』と思い、動き始めました。私自身は裁縫ができないので、まずはデザインして縫える人を探したんです」そうして紹介してもらったのが、現在も共に働くウガンダ人のシングルマザーだ。さらにメンバーを増やし、現地の女性3人と2015年2月に事業をスタートさせた。「最初はNGO団体に在籍したまま平日夜と休日に新規事業を進めました。ビジネスとして成立するという自信はあったけれど、立ち上げたばかりだったので、退路は断たないようにしたんです。

PCやiPadケース、メモ帳なども。また、プリント地で作られたぬいぐるみも多数。
PCやiPadケース、メモ帳なども。また、プリント地で作られたぬいぐるみも多数。

8月にはサンプルも出来上がり、実際に日本での販売を開始。母が販促に協力してくれ、徐々に販路を拡大していきました」その後、仲本さんがNGOを退社したのは2016年に入ってから。「ビジネスが軌道に乗る確信を持てた時にやっとの仕事を辞めました。『アフリカンプリントで自分が欲しいと思うバッグを作りたい』というところから始まっているので、会社を辞めるまで自分の仕事が多くなるのは苦痛ではなかったんです」現在ウガンダで働くスタッフは全部で21人。その8割はシングルマザーだという。「ウガンダ人や日本人の学生、60代の母など年齢や国籍、性別を問わず、いろんな人がそれぞれの能力を持ち寄った結果が今に繋がっています」

仲本さんに「リーダーとしての素質とは何か」と問うと、「私自身、能力のある人間ではないんです。NGOの前に銀行に勤めていた頃は劣等生のレッテルを貼られるくらい仕事ができなかったんです」と意外な答えが返ってきた。「自分が上司に怒られると萎縮してしまうタイプで、その負の経験からも学びました。できない人がいてもそれよりもどうすればいいかを考えるようにする。自分ができない部分を誰かに委譲しているので、相手に対しては常に敬意を持つこと。私が得意な分野は調整や環境づくり、コミュニケーションなので、みんなの能力を伸ばせるようにコーディネーションしているだけなんです。120%の能力を全員が発揮できる場所を作ることが、私の役目だと思っています

【わたしが影響を受けたもの】『ブルー・セーター』ジャクリーン・ ノヴォグラッツ

『ブルー・セーター』ジャクリーン・ ノヴォグラッツ

貧困を解消するために革新的な方法で取り組んでいる起業家、ジャクリーン・ノヴォグラッツの著書です。作中に出てくる彼女の“Follow your inner voice(心のままに生きよ)”という言葉に、これまで何度も勇気付けられたかけがえのない一冊。(英治出版/2,200円)

Profile/仲本千津(なかもと・ちづ)

〈RICCI EVERYDAY〉共同創業者兼COO。大手銀行で働いたのち、2011年にNGOに転職。2014年のウガンダ駐在で出合ったアフリカンプリントの布に魅了され、2015年に現地でバッグ工房を立ち上げ、現在に至る。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について。

昨年、国際労働機関(ILO)が発表した日本における女性の管理職比率は、全世界平均27.1%に対してわずか12%。この国は女性にとってまだまだ働きにくい環境だといえます。今後、世界中が一丸となって、女性の力をもっと引き出せるような取り組みが進められていく中、私たちも自分の働き方についてポジティブに見つめ直す良い機会なのではないでしょうか。
Hanakoは“わたしらしく働く”ことをあきらめない、女性のストーリーを紹介します。

(Hanako1184号掲載/illustration:Nodoka Miyashita photo:Takehiro Goto , MEGUMI, Yoshiki Okamoto text:Makoto Tozukai, Rie Hayashi, Narumi Sasaki, Rio Hirai edit:Rio Hirai)

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