ハナコラボSDGsレポート 捨てられたおもちゃをリサイクルした腕時計「YOT WATCH」 SUSTAINABLE 2023.07.11

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。今回は、ライターとして活躍する五月女菜穂さんが、腕時計「YOT WATCH(ヨットウォッチ)」を手掛ける〈三栄コーポレーション〉の田代萌乃さんに話を伺いました。

〈三栄コーポレーション〉の田代萌乃さん。
〈三栄コーポレーション〉の田代萌乃さん。

子どもたちが使っていたプラスチックのおもちゃをリサイクルして生み出された腕時計「YOT WATCH」。子どものファーストウォッチにも最適ですし、親子でお揃いの時計にしてリサイクルや環境について考える機会にもなりそうです。

どんな想いでYOT WATCHが生まれたのか。ブランドを手掛ける〈三栄コーポレーション〉の田代萌乃さんにお話を聞きました。

想いを巡らせ、資源を巡らせ、時計の針をぐるりとその前へ

「YOT WATCH」
「YOT WATCH」

ーーYOT WATCHのプロダクト誕生の経緯を教えてください。

「我々〈三栄コーポレーション〉は2018年に『Our EARTH Project』というプロジェクトを立ち上げました。“より地球にやさしい”をコンセプトに『サステナブル』『エシカル』をキーワードとして、地球に、そして生活にやさしい製品やサービスを提供するプロジェクトです。

そのプロジェクトを進める中で、環境にやさしい活動を行っている企業様と知り合うことが増えまして、リサイクル関係の企業様と知り合う機会がありました。さまざまなお話をする中で、おもちゃが大量に捨てられている現状が分かり、何か弊社でも課題解決のお手伝いができないか。不要になったおもちゃを新しいモノに生まれ変わらせ、そしてそれを子どもに再び還元できるものはないか。そんな発想からYOT WATCHの製品化に至りました。

名前の由来は、おもちゃという意味の『TOY』をひっくり返した『YOT』というところから。時間を巻き戻して、新たに時間を刻んでほしいという意味が込められています」

捨てられたおもちゃをリサイクルした腕時計「YOT WATCH」

ーーリサイクル業者からのお話にあった、捨てられたおもちゃ…。どんな現状があったのですか?

「お子様はそれぞれたくさんおもちゃを持っていると思うんですけど、成長するとどうしても捨てられてしまうおもちゃがあるわけです。捨てられたおもちゃがリサイクル業者様のもとに集まってくるんですね。

私も昨年冬にリサイクル工場を見学させてもらいました。自分も子どもの頃使っていただろうなと思う人形など、ありとあらゆるおもちゃが箱に詰められていて。実際におもちゃで遊んでいるときは、捨てるときのことを考えないと思うんですけど、大切にしてきたおもちゃやお気に入りのおもちゃたちも、こうして捨てられてしまうのだなと衝撃を受けました。

YOT WATCHは、そのおもちゃを素材別に選別し、使える素材と使えない素材に分別します。使える素材をリサイクルして、時計の本体の樹脂の部分に使用しています」

親子でお揃いのYOT WATCHをつけるのも楽しそう。
親子でお揃いのYOT WATCHをつけるのも楽しそう。

ーーリサイクルして時計を生み出すというのもおもしろいですよね。なぜ腕時計にしようと思ったのですか?

「もともとおもちゃはお子様が使っていたものなので、お子様に還元したいという思いから始まっています。そんな中、お父様/お母様から贈り物としてあげられるものだったら、より大切にしてもらえるだろうということで、お子様のファーストウォッチにしたらどうだろうというアイディアが生まれました。そのほかにもペンなど文房具も候補に挙がったのですが、ストーリーがより感じられる腕時計ということに決まりました」

ーー田代さんはYOT WATCHのブランドにどのように関わっているのですか?

「私は昨年入社したばかりで、社会人2年目です。YOT WATCHのブランドは私も含めて3名がメインとなって動いており、私はECやSNS関連、営業全般を担当しています」

ーープロダクトとしてこだわった点を教えてください。

「サステナブルだから良い商品というわけではありませんので、まずはファッションウォッチとしてのデザイン性やファッション性、そして着けることに楽しみを感じてほしいという遊び心も意識をして、デザイン、商品構成をつくりました。ベルトも簡単に交換できるような作りにして、気分に合わせてベルト交換できるようにしています。

また、お子様が、お父様やお母様ともお揃いでつけていただけるように、Kidsモデル、32mm、40mmの3サイズを展開しています。

やはり『一緒につける』『お揃いでつける』ことを喜んだり、楽しんだりしているお客様も多いです。カラーバリエーションも6〜10色展開しており、とてもカラフルなので組み合わせを楽しんでいただいております。コロナ禍でなかなか外出の機会もなかったと思うのですが、これから家族でお揃いのYOT WATCHをつけて遊びに行きたいといった声もいただいていて、うれしい限りです」

YOT WATCHは3サイズ展開。
YOT WATCHは3サイズ展開。

ーーちなみに田代さんの1番好きなカラーは?

「私はカーキが好きですね。このカーキは、回収したおもちゃを一旦ペレットにするんですが、そのときのオリジナルの色なんです。ちなみにKidsモデルははっきりとした色が人気ですが、32mmや40mmですと、カーキや黒など落ち着いた色合いが人気です」

ーー御社は「Our EARTH Project」を進められていますが、その中でYOT WATCHはどのような位置付けなのですか?

「Our EARTH Projectでは、これまでサステナブルへの意識が高く先行している欧州のブランドを国内販売する形で進めてきました。例えば、KERBHOLZは天然の木材の端材で作られた時計になります。

その中で、YOT WATCHは弊社が自社企画したブランドであり、今後は日本のみならず、海外への販売も目指しています。世界中の人に知ってもらえればと願っています。

お子様の商品を扱っている展示会などに参加させていただく機会があったのですが、 本当に初めての経験ばかりで、日々学ばせてもらっています」

腕時計の本体の樹脂部分がリサイクルされているそう。
腕時計の本体の樹脂部分がリサイクルされているそう。

ーーこの連載はSDGsに関する連載なのですが、SDGsについて思うことはありますか?

「地球にやさしいことをすることは当たり前のことだと思うんですけど、一方で『意識が高い人がやること』というイメージがどうしてもあるんですよね。そういったイメージをつけないために、飾らずに、気軽に、楽しく続けられる取り組みや商品開発をしていけたらなと思っています。『サステナブルだから買う』というのではなく、『欲しいから買ったら、結果サステナブルだった』というのが理想的だなと。

SDGsには17つの項目がありますが、お子様向けのプロダクトに関わるようになって、個人的には『質の高い教育をみんなに』という項目に関心が出てきました。実際にYOT WATCHのKidsモデルには付属の冊子『とけいのよみかた』『りさいくるってなぁに?』をつけて、お子様が時間について学びやすくする工夫もしています。このプロダクトを通じて、時計の読み方やサステナブルな活動についての親子の会話が生まれるといいですよね。

ーー今後の展開について教えてください。

「YOT WATCHは、まだデビューしたばかりのブランドですが、世界三大デザインアワード『IF DESIGN AWARD2023』や『ソーシャルプロダクツ・アワード2023』での受賞を機に、取材の機会も増え、認知度が上がっているなと感じております。今後は、海外への展開も目指しており、日本のみならず多くの方々に知っていただけたらうれしいです。

また、今後は新色のベルトや、タイプの違うベルトも打ち出していきたいと考えています。YOT WATCHはおもちゃをリサイクルして生まれた腕時計ですが、そのことを意識しすぎず、当たり前のものとして受け止めていただいて、みなさまの生活に溶け込んでいけたらいいなと思っています」

photo:Miyu Yasuda

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