宮沢氷魚
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宮沢氷魚にインタビュー。HANAKO PEOPLE story#11 Learn 2023.03.14

日々の記憶や感情、自分を取り巻く物事の中から、気になる3つのテーマについてインタビュー。パーソナルなストーリーが紡がれます。第11回は、俳優・宮沢氷魚さんが登場。

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Theme #1 旅

子供の頃から、祖父母が住むアメリカに年2回ほど遊びに行っていたので、飛行機に乗って日本を出るというのがごく当たり前で、旅は日常の一部でもあります。その中で、改めて「旅っていいな」と気づきがあったのは、大学2年のときのロードトリップ。貯めていたお金で安い中古車を買って、友達と二人で、1カ月間かけてサンフランシスコからアリゾナまで行って、また戻ってくるという旅をしました。当時、学生でお金もなくて、安いモーテルに泊まったり、ときには野宿……予期せぬこともたくさんあったし、普通のダイナーで特別おいしいわけじゃないステーキを食べたこととか、そういう記憶が今となっては鮮明に残っていて、自分にとってとてもいい時間でした。

表現を仕事にしていると、僕の場合は常に自分の持っている何かを出し続ける状態になって、ときには〝もう出し尽くして何もない〟みたいなことが起こりがちです。もっと器用ならば仕事からインプットができて、健全なサイクルの中で働けるのだろうけど、現状ではそれが難しい。僕にとって「旅」は、貴重であり、最も手っ取り早いインプットでもあります。

ここ数年、自由に旅ができない状況が長く続いて、どこか息苦しいというか、なかなか発散もうまくできずにいました。仕事と絡めてではありますが、昨年末あたりからやっと海外へ行く機会が増えてきて、改めて旅で得られる刺激に触れて、一気にパッと心が晴れるような楽しい時間が戻ってきました。

旅は心と体を安定させてくれて、呼吸しやすくなる、そんな感覚もあります。

ちょうど昨年末からヨーロッパに2回ほど行く機会があって、どちらの滞在も3日間ぐらいの短い時間でしたが、自分が実際に色んな人、色んな景色に出会って、肌で感じることで学ぶことがたくさんあったんです。参加したCHANELのイベントでは、各国のアンバサダーのみなさんと、お互いの今後の作品について話をする機会も。映画『パラサイト』の舞台に挑戦すると話すと、日本や韓国だけではなく、アメリカやUKチームまで「え! あのパラサイト?」と興味を示してくれて。世界的に注目されている作品であり、しかも初の舞台化。自分が携わる作品の大きさ、そこに参加できる感慨深さを改めて実感できた時間でもありました。

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Theme #2 アート

絵を描くのは得意じゃないんですが、学生時代から版画は大好き。木版画ではなく、学生時代に図工の授業で出合った〝リノリウム版画〟というもので、その技法を使ってファンクラブ用のグッズを作ったりしています。Tシャツやハンカチにプリントしたりと、大人になった今も楽しんでいて、アートは割と身近にあるもの。今、住んでいる家は前の家に比べると少し壁の面積が広くなったので、何か飾りたいと思い、手塚治虫さんの『ブッダ』をモチーフにした版画の作品が飾ってあります。子供の頃、基本的にマンガが禁止だったんですが、手塚治虫さんの作品は家にあって。そのブッダの版画にすごく引き込まれたし、あとはなんか縁起がよさそうだなとも思ったんですよね(笑)。ほかには、宮崎駿さんの『となりのトトロ』の絵、俳優のでんでんさんが描いてくださった僕の似顔絵のイラストも額に入れて。少しずつですが自宅にもアートが増えています。

映画『はざまに生きる、春』では、とにかく青が大好きな画家の青年・屋内透を演じています。透くんにはアスペルガーがあって、コミュニケーションや自己表現がうまくいかなかったり、日常生活で生きづらさを抱えている。でも、自分がこれだ! と魅力を感じた物事に対して、とてつもない熱を持ち、不器用ながらほかの誰かと分かち合おうとする。透を通して感じたのは、作品や作品に込めた思いというのは、さまざまな壁を飛び越えて、人に伝わっていくものだということ。むしろ自己表現が苦手な人のほうが、僕は作品に魅力があふれてくるのかもしれないと思っています。日常で表現ができないからこそ、そのすべてを作品に注ぎ込める。いいアートが生まれる瞬間にもつながっていくのかなと。

表現して、誰かに届けるというのは大変だけど、同時にすごく素敵なこと。

僕自身は、コミュニケーションは苦手ではないものの、余計なことを考えがち。考えなくていいことまで考えて、自分を追い込んでしまうクセがあるんですが、アートはもちろん、料理をしたりして、自分の手をせっせと動かしている間は目の前のことだけに没頭できる。強制的に考えないようにして、頭をクリアにできるという点で、僕もアートに救われている部分があります。透くんが感じている社会的な居心地の悪さやコンプレックスも、きっとアートと向き合っているときだけは忘れられる。そういう意味で共感を伴いながら演じられたと思います。

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Theme #3 スイーツ

詳しいわけじゃないんですが、甘いものが好きで、一人暮らしをしている今でも自分で作ったりもするんです。祖母がアメリカ人ということもあって、遊びに行くと、定番ですがチョコチップクッキーやブラウニーを焼くのが恒例。クリスマスもそうだし、イベントがあると何かしらのスイーツが絡んでくるので、ジンジャーブレッドハウスというクッキーでできたお菓子の家を作ったり、スイーツを手作りするというのがものすごく身近でした。実家を建てるときも、キッチンには大きなオーブンが欲しいとリクエストしたそうです。子供の頃は、母と兄弟みんなで、そのオーブンを使ってカップケーキやクッキーを焼きました。生地を粘土遊びみたいにこねて、焼き上がったら思い思いにデコレーションをする。

お菓子作りがある意味で家族の時間でもあり、家族との楽しい記憶でもある。

昨年末、友達の家に遊びに行ったときに、チョコチップクッキーを手作りして持っていきました。おそらくみんなは何か買ってくるだろうなと思ったので、僕は手作りのほうが面白いかもと、当日は朝からクッキーを焼き続けました。「どこのクッキーなの?」「朝、焼いてきました!」というやりとりがあって(笑)、みんな相当喜んでくれました。僕はパクパク食べられる一口サイズが好きなので、自分のために作るクッキーは小さめ。アメリカには簡単に作れるクッキーミックスが売っているので、家族にたくさん買ってきてもらっています。そこに卵やバター、牛乳を入れて混ぜるだけ。オーブンレンジに入れて、焼き上がるまでの時間が一番ワクワクします。大体1回目はちょっと失敗するんです。オーブンのクセで右側のほうが火力が強いな、とか焼きぐあいにムラがでるので、そのクセを把握した上で、温度や時間、クッキーの厚さを自分なりに調整してみる。そうやって試行錯誤するのが研究のようで楽しい。

自分でスイーツを買って食べるときは、すごくシンプルなものが好きです。イメージでいえば、いわゆるスタンダードなモンブランや、奇をてらっていない、ごくごくオーソドックスな味わいのシュークリーム……。子供の頃から変わらない、慣れ親しんだシンプルな味わいのスイーツが好きなんです。ちょっとお酒が入った大人な味も好きですけど、普段食べるのであれば素朴であるほどいい。世間的に、僕はお酒が好きというのが先行しているみたいですが、実はスイーツも大好きです。

Information

映画『はざまに生きる、春』
恋も仕事もうまくいかない雑誌編集者・小向春(小西桜子)は、ある日、取材で発達障害がある画家・屋内透(宮沢氷魚)と出会い、次第に惹かれていく……。恋の切なさやすれ違いを丁寧に紡いだ純愛ストーリー。5月26日(金)より全国公開。

ジャケット218,680円(クリスタセヤ︱アダム エ ロペ ジュンカスタマーセンター TEL:0120-298-133)/ジーンズ50,600円(スタジオ ニコルソン︱インコントロ TEL:03-6805-1082)/靴63,800円(ホームレステイラー︱オーバーリバー info@overriver.com)/Tシャツ、ベルトはスタイリスト私物photo : Mariko Kobayashi styling : Masashi Sho hair & make : Taro Yoshida (W) text : Hazuki Nagamine

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