夏子の大冒険 〜美術館をめぐる旅〜 ポーラ美術館の『モネからリヒターへ』へ。「残っているということ」編
今回の大冒険の舞台は〈ポーラ美術館〉。Googleマップで調べてみると “森の中にある地下美術館” の文字が。気になる気になる。この連載で行かない訳にはいきません。というわけで、現在公開中の超大型企画『モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に』展にお邪魔してきました。
森で“ととのう”。
到着してまず案内していただいたのは、美術館を囲む「森の遊歩道」です。鬱蒼とした緑の中に点在する作品を鑑賞しながら散歩を終えた頃には、すっかり感覚も研ぎ澄まされ、俗に言う、“ととのった”状態に。さあ、いよいよモネやリヒターの作品に会いにいくんだ。抑えられないワクワクを抱えて、いざ入館です。
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「残っているということ」
どこからが友だちなのか、その線引きが難しい。先輩と仲良くなることが多いせいか、勝手に友だちと呼ぶのも気が引けて、結果、自信を持って友だちと呼べる人数は片手に収まる程度なのだ。
そんな数少ない友だちの一人に、幼なじみ K がいる。K とは生まれた時から同じマンションに住んでいたらしい。言葉にならない“バブバブ言葉”を交わしてきた仲、正真正銘の友達である。
そんな K と3年前、〈ポーラ美術館〉のある、ここ強羅(ごうら)へと来たことがある。平日の昼下がり、「暇〜」のひと言で新宿に集合。どういう訳か、「箱根に一泊しよう〜!」と盛り上がり、小田急線のロマンスカー乗り場を目指した。もちろん宿なんて決めていない。
小田急線の改札まで来て驚愕した。ロマンスカーはおろか、特急も動いておらず、箱根へは鈍行で向かうしかないらしい。しかし、すっかり箱根の気になっている私たちは、もうどんな手段を使ってでも箱根へ行かなくてはならなかった。持て余した車内の時間で宿を予約し、強羅駅の宿に着いた頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。
無事に着いた安堵と、宿の飲み放題プランのおかげで“へべれけ”になった私たち。箱根の雰囲気に酔いしれて、深夜の俳句大会を催した。
「大人かも 電車で宿を ポチッとにゃ」(K)
この日、金賞の句。部屋のメモ帳に書き殴った相当数の中から選ばれた。季語は無視。ザ・酔っぱらいクオリティ。でも残っていることが大切なのだ。メモ用紙に書かれた十七文字が、あの一泊を思い出させてくれる。人はいろんな形で忘れたくない一瞬を残してきた。それが芸術になったりもした。
「歳重ね また開きましょう 俳句会」(N子)
今のところ私たちの芸術はこんなである。翌日、芦ノ湖の手漕ぎボートで流されて半泣きになった話なんかもあるんだけど、それはまた今度。
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今回訪れたのは…〈ポーラ美術館〉
強羅の思い出話みたいになってしまったけど、言いたかったのは、いろんな美術品が残っているって偉大だなということ。展示、素晴らしかったです。モネとリヒターが並んでいる光景はもちろん、ルノワールに始まり、セザンヌ、振り向けばピカソ。こんな豪華な並び見たことないというオールスター揃いでした。ポーラ美術館の熱意に感動させられた一日でした。
〈ポーラ美術館〉
■神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
■0460-84-2111
■9:00~17:00(受付締切16:30)
■無休
■1,800円