娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 【日本酒】幻のお米を現代によみがえらせる!復刻米を使った日本酒3選~『伊藤家の晩酌』第三十夜~

LEARN 2022.03.06

弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第三十夜は、かつて使われていた米を復刻して造られたという限定酒を3本ご紹介。

明治時代の復刻米「亀の尾」を使った「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」

ひいな「1本目は『鳳凰美田』です!」
テツヤ「飲もう飲もう」
テツヤ&ひいな「乾杯!」

テツヤ「うわ!うまいなこれ!吟醸?」
ひいな「うん。純米吟醸」
テツヤ「昼間に飲む純米吟醸っていいね。でも正直なところ、復刻米かどうかはよくわからないけど…」
ひいな「『鳳凰美田』って結構テンション高いお酒が多くて。全体的に甘さが際立つお酒なんだけど、その中でもこの『亀の尾』っていう復刻米を使ったこのお酒は落ち着いてる感じがするというか」
テツヤ「これで落ち着いてるんだ」
ひいな「うん。これは『鳳凰美田』のなかでは落ち着いてるほうだと思うよ」
テツヤ「そうなんだ。甘さのわりにあと口がキレるというかさ。これすごくうまいよ」
ひいな「甘ったるくはないよね。上品な甘さがある」
テツヤ「復刻米だから、そういう味わいになったのかな」
ひいな「うん。そうだと思うよ。この『亀の尾』っていうお米は明治のお米なの。『亀の尾』の亀は、阿部亀治さんという方が、冷害で被害を受けた田んぼのなかで元気に育ってる3本の稲穂を見つけたことで名づけられたんだって」
テツヤ「3本しかなかったんだ」
ひいな「そう。冷害を乗り越えた3本だったの」
テツヤ「丈夫に生きてたんだね」

【日本酒】幻のお米を現代によみがえらせる!復刻米を使った日本酒3選~『伊藤家の晩酌』第三十夜~

ひいな「阿部亀治さんが山形で見つけたお米なんだけどね。1925年ごろは、“東の亀の尾、西の雄町”って呼ばれてくらい有名なお米だったんだって」
テツヤ「へぇ。あの雄町と!」
ひいな「そう。雄町に匹敵するお米っていわれてたの。でも『亀の尾』が廃れた理由は、冷害には強いんだけど、虫に弱かったり化学肥料や農薬を使うとお米が極端にもろくなっちゃうらしくて」
テツヤ「なるほど。それは育てるのが難しいお米なんだな」
ひいな「そっか。農業の現代化に向いてなかったんだね。『夏子の酒』って漫画あるでしょう?」
テツヤ「あるある」
ひいな「幻の米で造った吟醸酒が忘れられないっていう話を聞いて種もみを探し始めて復活させて、そのお米で鑑評会で金賞を取るっていう物語があるんだけど、その幻の酒米のモデルが『亀の尾』なの」
テツヤ「へぇ!いや、実に上品だね、このお酒。でもちゃんとジューシーさもあってうまい!これが『亀の尾』のうまさなんだろうな。復活させてくれてありがたいね」
ひいな「地元に愛されるお酒を目指そうとして、昔ながらのお米である『亀の尾』に着目したんだろうね」
テツヤ「原点に戻ったんだね」
ひいな「新しいお米じゃなくてね」
テツヤ「『亀の尾』で造ったほかのお酒も飲み比べてみたいな」
ひいな「いいね。すごい数になっちゃうと思うけど」
テツヤ「え、そうなの?結構、あるってこと?」
ひいな「『亀の尾』は、平成9年から11年間、亀の尾サミットっていうのがあったりするくらい、復活してからは『亀の尾』を使ったお酒がたくさんあるの。『亀の尾』ってね、実はコシヒカリとかササニシキ、あきたこまちの先祖なの。『亀の尾』がルーツなんだって」
テツヤ「へぇ。どれも寒いところの米だもんな」
ひいな「そうだね、冷害に強いからね。しかも収穫量が多いらしい。粒が大きいから吟醸造りで削っても残るんだって」
テツヤ「だけど、育てにくいんでしょう?」
ひいな「そう(笑)」
テツヤ「すごい手間ひまかけて育ててるっていうことなのかな。ということはお値段も張るんじゃないの?」
ひいな「2,200円です!」
テツヤ「ちょっと高めだけど、こだわりの米を使ってるんだから妥当だよね」
ひいな「だよね」
テツヤ「『亀の尾』だね。もう覚えた!」

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