芸能関係者も御用達〈TOM’S SANDWICH〉が広島・尾道で再出発した理由 FOOD 2024.05.08

2019年、東京・代官山で長年愛された〈TOM'S SANDWICH〉が惜しまれつつも閉店した。その後、家族で広島・尾道に移り住み、〈TOM'S SANDWICH ONOMICHI〉を開店。サンドイッチは新天地でも話題となり、変わらない“トムさん”の味を届けている。尾道で再出発することになった理由を探る。

TOM'S SANDWICH ONOMICHIが尾道で再出発を決めた理由

TOM'S SANDWICH ONOMICHIのサンドイッチ

東京・代官山ヒルサイドテラスにあった〈TOM'S SANDWICH〉は、土地柄アパレルや芸能関係の業界人も足繁く通う人気サンドイッチ店だった。1973年に開店し、46年にわたって愛されたこの店を閉めたのは2019年のこと。

代官山時代の様子。当時の看板は今の店に飾られている。
代官山時代の様子。当時の看板は今の店に飾られている。

「平成も終わるし、いいタイミングだから一緒に店もやめようと思いついちゃったの」

約60年前、カメラマンのアシスタントとしてニューヨークで暮らしていた〝トムさん〞こと佐藤友紀さんは、現地で出会ったボリュームたっぷりのサンドイッチに魅了される。この味を日本にも伝えたいと妻の百合子さんと一念発起し、店を開いた。代官山の店は、親子三代で切り盛りしていた。

「店を閉めて時間もできたから家族で旅行にでも行こうかと。常連さんが尾道にいて声をかけてくれたので遊びに行くことにした。本当に観光に行くだけの、軽い気持ちだったんです」

瀬戸内海に面した港町・尾道。町の中心に“海の川”尾道水道が通るのどかな景色は日本遺産にも認定されている。対岸に見える向島には日に何度も渡船が往来する。
瀬戸内海に面した港町・尾道。町の中心に“海の川”尾道水道が通るのどかな景色は日本遺産にも認定されている。対岸に見える向島には日に何度も渡船が往来する。

しかし、尾道水道の穏やかな景色をひと目見てトムさんは「ここに住もう」と次なる決心を固める。それならばサンドイッチ屋を開いてほしいという常連客の提案もあり、2020年に最初の店を開いた。

海を望む厨房に立つトムさん。2024年で83歳になる。
海を望む厨房に立つトムさん。2024年で83歳になる。

「まず尾道駅の駅舎で店をはじめて。そこは9カ月ほどで撤退したんだけど、この短期間だけでも地元の人たちがうちのサンドイッチをとても気に入ってくれたんです。店を続けてほしいと新しい物件まで探してくれて。とにかく人が温かい」

移転した今の店は海岸通りにある築80年の古民家。窓から尾道水道を対岸へと渡る船が見える景色がとにかく気持ちいい。

BLT(2,100円)とキャベツ&ベーコン(2,050円)。「広島のキャベツはお好み焼き向き。肉厚で甘味がある」とトムさん。
BLT(2,100円)とキャベツ&ベーコン(2,050円)。「広島のキャベツはお好み焼き向き。肉厚で甘味がある」とトムさん。

「いい場所でしょ。気候もいいし、食材も豊富。こっちに来てから地元の生産者の方との繋がりも生まれて、市場に出せず廃棄される果物が大量にあることも知った。それでジャムなど加工品も作るようになって」

代官山時代から人気の自家製マヨネーズやレバーペーストと並び、尾道産の果物のジャムやシロップなどの瓶詰めが新たな名物に。「いずれ専用の工房も作りたい」と夢はまだまだ膨らむ。尾道から全国へ、トムさんの味はこれからも届けられる。

TOM'S SANDWICH ONOMICHI

住所:広島県尾道市土堂1-12-10
TEL:0848-38-2273
営業時間:8:00~15:00(14:30LO)
定休日:火水休(木金は要予約)
席数:20席
HP:
Instagram:@toms_onomichi

サンドイッチを家で仕上げる通販セット「おうち de TOM'S」も。

photo_Norio Kidera text_Kana Umehara edit_Kana Umehara

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