海を感じるお店たち。葉山〈HAYAMA BREAD Club〉&〈アフロパン〉/池田浩明のまだ見ぬパン屋さんへ。 FOOD 2023.05.15

リゾートといえば、パンのレベルの高い町が多い。葉山もその例に漏れず。地元の魚介を使ったり、アメリカ西海岸風だったりと、“海”を感じるお店へ。パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」からお届けします。

〈HAYAMA BREAD Club〉人気店をクローズして始めた、新たな展開とは。

広々としたカフェスペース。パンのイートインだけではなく、プレートや、コーヒー、ナチュラルワインも。
広々としたカフェスペース。パンのイートインだけではなく、プレートや、コーヒー、ナチュラルワインも。

相模湾を見渡せる小高い丘の上にあるベーカリーカフェ。
陳列棚に並んだパンやお菓子に、どれを食べようか迷いながら通路を進むと…視界が開け、広々としたイートイン席に大きな窓からたっぷりの光が降り注ぐ感動の光景。湘南らしい演出だ。

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店主は中本わかなさん。伝説的なサワードゥの店〈wakanapan〉を閉じ、パンから離れて旅したアメリカ西海岸で素敵なベーカリーカフェに出会い、自分でもやってみたくなり、この店をオープンしたそうだ。ベーカリーであり、カフェ、スイーツショップ、雑貨店…こんな大箱を個人で運営するとは。

名物のクロワッサン。2個分はあろうかというアメリカンサイズをむしゃむしゃと食べ進むよろこび。エアリーでありつつ、薄く伸びた層からバターがじゅわーと。濃厚でありつつ後味がさわやかなのは、グラスフェッドバターのたまもの。
地元のおいしい肉屋さん〈横須賀松坂屋〉のでっかいソーセージをはさんだフランクドッグ。薄く歯切れのいいバゲットはむにむにと揺れ動き、小麦のおいしさも冴えて、輝いている。パンと具材をつないでいるのは、クリーミーでさわやかな自家製のランチソース。中本さんが西海岸で出会ったものだ。
バラエティ豊かなこれらのパンをパン酵母(イースト)なし、約20年継いだレーズン種と市販の発酵種で作り出すのはすごい技術力。店のまわりにはたくさんの桜が立ち並ぶ。この号が発売される頃がちょうど見頃か。テラス席でパンを食べながらお花見ができる。

〈アフロパン〉とれたての海の幸が、ピザ風パンにも。

武家屋敷のような引き戸で、店名が「アフロパン」? おもしろいミスマッチだ。パンという洋のものと和の食材を合わせて、どこにもないパンを作り出す。
シェフの出身は、ますます評価が高まる〈トロパントウキョウ〉。名高いクロワッサンのDNAを受け継ぎ、さらにしょうゆごまをトッピングした「香るゴマクロ」。意外な組み合わせだが、甘じょっぱさがバター感とマッチする。
「子供がご飯にかけてむしゃむしゃ食べてたんで、クロワッサンにかけてみたらおいしくて」

あるいは、そば屋さんで好んで飲んでいたそば茶をカンパーニュに混ぜ込んだり。圧巻なのは、午前中に行けば焼きたてに出会えるピザ。
近くの佐島漁港で揚がったタコを使った「タコピザ」に「シラスピザ」。こんなものがあつあつで置かれているから、お腹がグーとなる。どんな人がこのパンを作っているのだろう。奥から出てきたシェフは、本当にアフロヘアだった。

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「葉山でアフロだとよくサーファーだと思われるんですけど、まったくできないです」
パンも本人もどこかユニークなキャラクターだ。

photo:Kenya Abe text:Hiroaki Ikeda

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