いいね!は社会の映し鏡。 カルチャー発ソーシャル行 Meet #10/
こちらあみ子+タコピーの原罪 CULTURE 2023.02.15

映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。

救いも希望もないけど、後味は悪くない。そんな物語が妙に残る。

ひたすらしんどかった。それでも(それゆえ!?)周囲に薦めまくっているのが映画『こちらあみ子』。主人公の、広島に暮らす小学5年生のあみ子は、こだわりが強く、相手の気持ちを理解するのが苦手なため、友達ができない。義理の母(父は再婚している)は心の病になり、実兄は不良になり、優しかった父までがあみ子の育児を放棄する。が、彼女は周囲から疎まれ孤立していることに気がつかず、空想の世界と現実の世界を生きていく。手をさしのべたり、包摂してくれる人やコミュニティは本作には現れない。けれど不思議と後味は悪くない。常にアップデートを迫られがちな世の中で、あみ子はただ、「生きている」。成果や成長といった承認ゲームから離れた場所にいる。と書くと、「その純粋無垢さが尊い」と持ち上げようとする感動ポルノ的な視点も出てきそうだが、きっとあみ子はそれらも相手にしない。ただ、生きている。

『こちらあみ子』/主人公・あみ子を演じたのはオーディションで選ばれた広島の小学5年生・大沢一菜(かな)。見れば納得のキャスティング。TCエンタテインメントより2/10 DVD発売予定。
公式サイト

ちょっとズレている子を異分子として排除する、ということでは漫画『タコピーの原罪』も印象深い。複雑な家庭環境の中、学校でいじめに遭い、「笑わない」少女しずかと、タコ型地球外生命体タコピーとの物語。登場人物の誰もが意地悪な部分があり(その方がリアルだ)、誰にも感情移入できないまま物語は終わる。が、やっぱり後味は悪くない。後味が「良い」と「悪くない」では、私は後者の物語が好きなのだろう、と思った。

『タコピーの原罪』/タイザン5による漫画。地球にハッピーを広めるために来たハッピー星人・タコピーは、助けてくれた少女しずかに笑顔を取り戻そうと奔走するが…。集英社より単行本上下巻が発売中。
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タコピーの原罪

[今月の担当]編集部S/ドキュメンタリー好き。 ABCテレビ『探偵! ナイトスクープ』の新探偵が誰になるか、ドキドキしています。Twitter:@bakatono72

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