村田倫子さんのために選んだ一冊とは/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』
2020.07.01

第12回 今のあなたにピッタリなのは? 村田倫子さんのために選んだ一冊とは/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

木村綾子さんがさまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う本を処方していくこちらの連載。自粛期間を終え、久しぶりの対談となった今回のゲストは、ハナコでお馴染みの村田倫子さん。モデル業の傍ら、洋服をつくったり、執筆したりと、さまざまな職種を軽やかに行き来する彼女の姿勢に、木村さんも興味津々…!
木村綾子
木村綾子 / 文筆業・企画

「出たり書いたり企画したり、本にまつわるお仕事してます。「太宰治検定」も企画運営。」

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今回のゲストは、モデルの村田倫子さん。

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個性的なファッションセンスだけでなく、最近では “カルチャー色強め” のライフスタイルでも注目を集める村田さん。Hanako.tokyoでの連載コラム『カレーときどき村田倫子』では、自ら取材・執筆を担当し、溢れんばかりの “カレー愛” を炸裂させています。今年5月には念願だった自身のアパレルブランド『idem(イデム)』もスタートさせました。

話題は、5月に立ち上げた『idem(イデム)』について。

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木村綾子さん(以下、木村)「はじめまして。…やっと会えましたね!(笑)実は、村田さんとの対談は4月初旬に予定していたんですが、タイミング悪く自粛期間に入ってしまい…。「二子玉川 蔦屋家電」に来られたのも、3ヶ月ぶりなんです。ここでお会いできるのをずっと待ってました!」
村田倫子さん(以下、村田)「私もすごく楽しみにしていました!対談や撮影も、こうして復活できて良かったです…!」
木村「お互いにこの数ヶ月は、これまでの価値観や経験則が覆される日々を過ごしてきたと思うんですよね。生活や仕事のスタイルも世界規模で大きく変わりつつあって。だから、4月に話せていたかもしれないことと、今日これから話すことはきっと全然違ってくるんだろうなとも思うんです」
村田「はい!私にとってもこの数ヶ月は、いままで経験したことのないレベルの挑戦の日々でした」
木村「自粛期間中、ご自身のブランドを立ち上げられたんですよね?」
村田「そうなんです。『idem(イデム)』というブランドを立ち上げて、5月28日にはオンライン販売をスタートさせました」
木村「東京都の緊急事態宣言が解除されたのが5月25日だから、解除を待望していた意気込みが日付からも伝わってきます」
村田「企画自体は去年から動いていたんです。でも、新型コロナウイルスの影響もあって、春には「諦めるしかないのかなぁ…」ってところまで落ち込んじゃって…。でも、こんな状況だからこそ、みんなが少しでも明るい気持ちになるような洋服を届けようと気持ちを切り替えて、やっとその日を迎えました」
木村「実際にスタートして、どうですか?「届ける」という意味ではモデルのお仕事で長くそれをしてきたと思うんですけど。そこに「作る」という工程が加わった今、洋服と向き合う姿勢は変わりました?」
村田「すごく変わりました!今までは、自分が媒体になって「伝える」っていうのを意識してきたつもりだったんですけど、今では 「ものづくりをしてる」 って感じがすごくします!」
木村「いつか自分のブランドをやりたいって気持ちは昔からあったんですか?」
村田「はい。昔から自分自身を評価されることよりも、アイデアや、自分がいいなと思うモノを評価してもらえることの方が嬉しく感じることが多かったんです。だから今は自分でつくったお洋服に対して、何かしら反応をもらえるっていうのがすごく楽しいですね。ポジティブな反応もネガティブな反応も全部学びになってます」

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木村「自分が指揮を執る洋服作りの現場は、どういうものですか? 既存のブランドとコラボするのとはやっぱり全然違います?」
村田「違いますね。 企画から制作、撮影、流通、SNSの運用まで、チームで連携を取りながらやっているんですが、クリエイティブディレクターはブランドの顔にもなるので…。経験があって得意なジャンルもあれば、ゼロから勉強しなくちゃ分からないジャンルもあって…。特にコロナ禍での販売にオンラインシステムは必須なので、そのシステムの管理がめちゃくちゃ大変!(笑)」
木村「そんなことまでされているんですね!」
村田「しかも、ローンチ初日からシステムエラーでお客さんにご迷惑をかけてしまって。本当に心が痛いスタートでした…」
木村「いままでなら、実際に来て見て着て、買ってもらえれば済んだことも、オンラインでフォローしなくちゃいけないですもんね」
村田「オンラインで顔が見れない分、お客さんの声をできるだけすくいとるようにしてます。インスタなどに届くDMも、細かくチェックをしたり、『idem』に対する反応にはできるだけ真摯に答えたいと思ってます」
木村「でも、その誠意ある対応ひとつひとつが、『idem』の信頼に繋がっていくんだと思います。『idem』は、“クリエイター”・村田倫子のブランドなんだって」
村田「そうだといいんですが。おかげさまで、より一層気が引き締まりました」
木村「ずっと気になってたんだけど、今日のそのワンピース、もしかして『idem』!?」
村田「残念ながら、今日のは違うんです。実はまだ私の分が届いていなくて…」
木村「自分のが最後なんですね(笑)そういうところにも村田さんの人間性がにじみ出てます」

エピソードその1「ブランド名は本から引用しました」

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木村「ブランド名はどういう意味なんですか?」
村田「『idem』って言葉は、原田マハさんの本からの引用なんです。『ロマンシエ』っていう小説に出てくる、リトグラフ(石版画)工房が「idem」っていう名前で。シャガールやミロなどのアーティストが集っているような場所なんですが、皆から愛されていて素敵だなと思って」
木村「素敵ですね。村田さんは本を読む人だって聞いていたので、きっと洋服づくりをしている時にも、インスピレーションを受けたりしているんだろうなって思っていました」
村田「原田さんの作品は読む度に新しい気づきや学びを与えてくれるので昔から大好きなんです。ついこのあいだは『サロメ』を読みました」
木村「原田さんの『サロメ』面白いですよね。この小説は、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』の英語版に挿絵を提供した画家オーブリー・ビアズリーの人生を追いながら美術史の謎にも迫ったいわゆる“創作”なんですが…。ワイルドの『サロメ』は読んだことありますか?」
村田「まだないんです。でも原田さんの小説を読んで、原典も読んでみたいと思っていたところでした!」
木村「戯曲『サロメ』は、多くの言語で翻訳や翻案がされていて、日本でも、古くは森鴎外が訳したり、三島由紀夫が演出したりしてるんですよ」
村田「そんなにたくさんの人が!何から手にしたらいいのか迷っちゃいます」

処方した本は…『サロメ(平野啓一郎)』

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光文社出版/2012年初版刊行
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「同じ作品も、違う目線から見てみると面白いよ」と木村さん。

木村「現代に生きている女性の感覚に鋭敏な村田さんに読んでもらいたい翻訳版といえばこれ! 平野啓一郎さんが訳した『サロメ』です」
村田「え、そんな選び方があるの!?平野さんの『サロメ』のオススメ理由、聞いてもいいですか?」
木村「まずは読みやすさ。古典だけど、現代の私たちが普段使ってる言葉で会話が重ねられているから、すっと入っていけるところ。でも、物語はきわめて原典に忠実だから、ワイルドの世界観を堪能できる。そしてなんと言っても平野訳『サロメ』の素晴らしいのは、主人公・王女サロメの描き方!少女的な愛らしさと残虐さ、純真ゆえの潔癖、それによって訪れる悲劇的な運命が、すごくしっくり来たんです」
村田「翻訳する人が変わると、描かれ方も大きく変わってくるんですね」
木村「原田さんの『サロメ』を通して、ビアズリーの描いたサロメの絵に妖艶な毒婦的な印象を持っているとしたら、平野訳とのギャップをいっそう楽しめるんじゃないかな」
村田「いまのお話を聞きながら、私は洋服にも通じる部分があるなって思ってました。オーソドックスなカットソーでも、着る人が変われば雰囲気も変わるし、アレンジ次第で違う魅力が引き出されるから面白いんですよ。翻訳作品にもそんな楽しみ方があるんですね!」

エピソードその2「クリエイティブの勉強がしたい」

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木村「『idem』のお洋服は、どうやって作り上げているんですか?」
村田「イメージやコンセプトづくりは私が担当しています。パターンを引くことはまだできないので、デザイナーさんにどうにかこうにかニュアンスを伝えて。二人三脚でひとつずつカタチにしていってる感じです」
木村「じゃあクリエイティブは、ほぼ二人で?」
村田「そうなんです。WEBサイトとかInstagramの世界観、あとはモチーフや下げ札、梱包の箱なんかも自分たちで考えましたね。あ、ブランドのロゴは私の手書きです!」
木村「いいですね! 洋服作りもきっといろんなプロフェッショナルが集って一つのブランドを作っていると思うんですけど、本の世界でもそういうのを感じられるとしたらこれっていう一冊があります!」
村田「あるんですかそんなのが…!最近、クリエイティブの勉強がしたいと思って『Pinterest(ピンタレスト)』でデザインばかり見ていたところなんです」

処方した本は…『ブックデザイン365(松村大輔)』

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パイ インターナショナル出版/2020年初版刊行
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真剣な眼差しでページを覗き込む村田さん。

木村「これは本の装丁を集めた図鑑みたいなつくりになってるんですけど、書籍の概要、用紙の情報やデザインコンセプト、編集者やデザイナーの名前など、一冊の本に携わった人とその思いが事細かく紹介されています」
村田「すごい、こんな本があるんですね。いつまでも見ていたくなるような装丁が並んでいます…!」
木村「本の顔を眺めるのって、すごく楽しいですよね。とくに単行本は、表紙だけでじゃなくて紙質や文字のフォント、組み方に至るまで、本当に細やかなこだわりを物語と一緒に味わえるのが最大の魅力だと思っているんです。でもそういう情報までは、本には明文化されていないから、こうしてまとめてくれるのは嬉しいですよね」
村田「物語を読み終えてから、この本で改めて情報に当たることで、「あ、だからこういうデザインになったんだ」って思いを馳せるのも楽しそうです」
木村「パラパラ見てるだけでも、「私、この人の作品ばかりに惹かれるな」っていうのが出てくるんじゃないかな」
村田「「この本とこの本がこの人で繋がってる!」みたいな。屋台骨を支える人の仕事に触れられる本は、いまの私に必要な刺激です」

エピソードその3「カレーにハマった理由」

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木村「私、村田さんのカレー連載が好きで、よく見ているんですけど。もう結構長く続いているんですよね?」
村田「わ、嬉しいです!あの連載はHanako.tokyoの前から続いているので、実はもう4年目になります」
木村「カレーって、メジャー故に難しいジャンルだと思うんですよ。水野仁輔さんやメタ・バラッツさんのカレーの表現方法みたいに、作ってもプロ、書いてもプロって人もいるし…。そういう人の中で、4年続けてこられた秘訣は何だと思いますか?」
村田「私はお店の背景にフォーカスを向けることを意識的にやってます。大げさじゃなくて、カレーには作り手の人生が反映されてる気がしていて…。それがお皿に盛られて自分の目の前に提供されるまでの背景に思いを馳せて、いつも文章を綴っています」
木村「確かにカレーって、その味の成り立ちに思いを馳せたくなりがちです(笑)。食のエッセイを書くうえでは、誰かの文章を参考にされたりしていますか? 」
村田「実は、結構感覚的にやってきてしまったなという部分が大きくて。最近、表現の幅に限界を感じる瞬間が出てきてるんです」
木村「ずっとカレーですもんね。「辛い」「深い」「マイルド」「スパイシー」あとは、うーん…、他にどんな形容詞があるだろう(笑)」
村田「そうなんです。一皿一皿が私にとっては全然違う味なので、どうしたら読者に伝わるかなっていうのはいつも考えているんですが。もう少し違った見せ方や切り口が欲しいなっていう気持ちはありますね」
木村「食エッセイは本当にたくさん出ているけど、名著とされているものから読んでみるのがいいかも」
村田「芯があるものを読んでみたいです!」

処方した本は…『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる(石井好子)』

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暮しの手帖社出版/1963年初版刊行
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木村「ここ見て。“フアグラ”って書いてある!」

木村「この本は、初版が1963年だから、ベストセラー中のベストセラーですね。シャンソン歌手の石井好子さんが、フランス留学中、下宿先のマダムに作ってもらったオムレツの話から始まって、それを食べたときの風景や情景が、まるで匂い立つような表現で綴られているの」
村田「私、タイトルから結構タイプです…!」
木村「バターは“バタ”、オーブンは“天火”、フォアグラは“フアグラ”とかってレトロな表現もあるんだけど、まったく古びた印象を受けず、むしろ「いま使いたい!」って思っちゃう気品さえ伺えて。これって書き手のセンス故だよなぁ…って、読む度うっとりしちゃいます」
村田「装丁もかわいいですね」
木村「これは花森安治さんのデザインですね。文庫版と単行本、ちょうど両方あるけど、ここまで話してきた感じだと、村田さんには敢えて単行本をオススメします!」

木村さんとの対談を終えて。

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対談後、「こうやって自分のことを知ってくれた上で、お勧めしてもらえるのはすごく嬉しい。どれも普段読まないジャンルばかりだったので尚更…!」と話してくれた村田さん。時間をかけて選んだ数冊を、大切そうに抱えながらレジに向かう姿が印象的でした。村田さんのお洋服への愛がいっぱいに詰まった『idem』の全貌はこちらから。ぜひ覗いてみてください~!

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