「自分が店をやるなんて」。70年間人々に愛され続ける鎌倉〈イワタコーヒー店〉の3代目オーナーの転機とは?
2018.08.13

「鎌倉とわたし2」 前編 「自分が店をやるなんて」。70年間人々に愛され続ける鎌倉〈イワタコーヒー店〉の3代目オーナーの転機とは?

銅板で丁寧に焼くホットケーキや美しい庭など、70年にもわたり人々に愛され続ける鎌倉の名店・喫茶店〈イワタコーヒー店〉の3代目オーナー、岩田亜里紗さん。自然体の笑顔で店を切り盛りする姿からは一見わからない、深い思いを伺いました。

編集部 / Hanako編集部

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「自分が店をやるなんて、本当に考えたこともなかったんです」。
創業1945年(昭和20年)。古き良き正しき佇まいをいまだ残す、鎌倉を代表する喫茶店〈イワタコーヒー店〉。この現オーナーが、3代目にあたる岩田亜里紗さん。東京の大学を卒業後、外資系のアパレルブランドに勤めていたという亜里紗さんが、なぜ実家の家業である喫茶店を継ぐことになったのか。それは夏の雨のように、突然の出来事だった。

フルーツがたくさん入ったプリンアラモード1000円。自家製のプリンは懐かしさあふれる製法で、甘すぎずさっぱりとしたおいしさ。

「店を切り盛りしていた叔父が、急に亡くなったんです。2005年ですね」。後継者の問題で岩田家はにわかに混乱した。「叔父は独身で、私の父も兄も会社に勤めていて継げないと。ただ多くの従業員がいたので、とにかく店は開けて、とりあえず母と私で簡単な経理を始めたんです」。
このとき初めてお店の経営状況を知り、愕然とした。「店の預金通帳に3000円しか残っていなかったんです。えっ?60年以上やっていてこれだけ?と」。
建物も深刻な老朽化が進んでいたが、最終的には亜里紗さんが、自分の意思で仕事を辞め、店を継ぐことを決めた。「それが、自分でも不思議で。それほど思い入れがあったわけでもないのですが、ただ『無くしたくない』そう強く思ったんです」。

夏メニューのマンゴーパフェ900円。

〈イワタコーヒー店〉の創業者は、亜里紗さんの祖父・岩田光之さん。「改装好きで新しいものをどんどん取り入れるタイプだったようです」。いずれはここをビルにする計画もあったそうだが、志半ばで挫かれたのは、光之さんが事故で亡くなったから。その後、亜里紗さんの叔父にあたる武さんが店を継ぐことになった。
ところが日々の仕事に追われて、武さんの時代には、メニューなど、何も変えられない状態が続いた。「私にとって叔父は、少し怖い印象でしたね」。店は停滞し、時代に取り残されていく。それでも続けられたのは祖母・岩田ふみ子さんのおかげだと、亜里紗さんは言う。
「小学生の頃は第二の家みたいな感じで、私もしょっちゅう店に来ていました。そこで思い出すのは、やはり祖母の姿なんです。80歳手前くらいまでずっと店に立ち続けていて、祖母こそが、ここの名物だったと思います」。

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(Hanako1158号掲載:photo : Akira Yamaguchi text : Mitsuharu Yamamura)

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