季節の草花をかたどった上質な和菓子を。 5月前半だけ楽しめる老舗和菓子店〈とらや〉の生菓子4選!知っておきたいモチーフ知識も。 LEARN 2019.04.30

季節を楽しみ、年中行事に願いを込めて。そんな和菓子の文化を、もっと日常で楽しんでみては?〈虎屋〉広報・小泉芙美恵さんをナビゲーターにお迎えして、5月前半に楽しめる〈とらや〉の和菓子をご紹介します。Hanako『ひみつの鎌倉』「ポジティブおこもり」よりお届け。

〈とらや〉の5月の和菓子

端午の節句には、柏餅やちまきが店頭に。また菖蒲やつつじなどの季節の草花をかたどった生菓子も。「半月ごとに生菓子が入れ替わり、夏季は葛や寒天など涼やかな見た目に」(小泉さん)

春夏秋冬の和菓子のモチーフ例
春:桜、ちょうちょ、菜の花 
夏:蛍、水のせせらぎ、金魚
秋:栗、紅葉、柿
冬:雪、柚子、紅梅

【牡丹】羊羹製「花の王」堂々と咲き誇る牡丹をかたどって。

とらや「花の王」

牡丹はかつての権力者たちに好まれ、城の襖絵などに描かれてきた花。百花の王、花神との異名を持つ牡丹の、堂々と咲き誇るさまを表したお菓子。初出は1912年。★ 5月1日~6日

【山吹】きんとん製「井出の里」山吹の名所の地名を冠した歴史ある一品。

とらや 「井出の里」

井出は現在の京都府綴喜郡井手町にあたり、山吹の名所として数多くの歌に詠まれた。そのため井出と名のつく菓子には山吹の花の黄色を用いる。初出は棹物(さおもの)として1694年。★ 5月1日~15日

【あやめ】薯蕷製「菖蒲饅」饅頭をキャンバスに描かれた菖蒲の美しさ。

とらや 「菖蒲饅」

山芋を使った薯蕷饅頭に菖蒲の花の焼印を押し、葉が伸びる姿そのままに、丁寧に一葉ずつ筆で描かれている。芋の風味と、しっとりした食感が楽しめる。初出は1918年。★ 5月1~15日

【つつじ】羊羹製「岩根のつつじ」岩間に咲きこぼれる晩春の花。

とらや 「岩根のつつじ」

つつじは、藤、山吹とともに晩春を代表する花として、古来数多くの歌に登場します。岩間に咲く色鮮やかなつつじを、緑の生地と紅のそぼろで表現。初出は1800年。★ 5月7日~15日

和菓子は五感の芸術。五感で愛でる晩春。

〈とらや〉には常時6、7種類の生菓子があり、半月で入れ替わります。販売する生菓子の多くが当店に伝わる菓子見本帳にあるもので、古くは元禄時代のものも。今は山芋を使った「薯蕷饅頭」や、木型を用いた「羊羹製」の菓子を販売。これらは暑い季節の販売はなく、6月後半からは、葛や寒天などを使った涼やかな菓子に。和菓子はおいしさだけでなく、見た目の美しさ、素材のほのかな香り、黒文字で切るときの感触、菓銘の響きなど五感で味わうもの。お茶やコーヒーなどと自由に合わせて楽しんでいただきたいです。

〈虎屋〉広報・小泉芙美恵/室町時代後期、京都で創業した和菓子店〈虎屋〉で広報を担当。端午の節句の忙しいGWは店の手伝いに入る予定。

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Hanako『ひみつの鎌倉』

(Hanako1172号掲載/photo : Natsumi Kakuto text : Kyoko Kashimura, Miho Arima, Nao Yoshida edit : Nao Yoshida)

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