ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの〜第10回〜
ドラァグクイーンはネイルをしない方が良い?
LEARN 2024.06.11

踊り場世代のドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダさんの"ゆずれない、ゆずりたくない、でも時々ゆずっちゃってるかもしれない?!大切にしているコトやモノ”をゆるーくご紹介する連載です。

ハッシュタグは#ドリゆず。あなたのゆずれないもの、なんですか?

今月のゆずれないもの/“些細な混乱”を届ける。渾身の【ネイル】

Hanako WEBをお読みの皆様、ごきげんよう。ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダです。

今この原稿を書いているのは、イベント出演のため熊本に向かう飛行機の機内。いつも飛行機で移動する際は、事前に映画を一本ダウンロードしてゆっくり観るか、練習中の楽曲でも聴きながらリラックスして過ごしています。でも今日のアタシはちょっぴり緊張の面持ちで座っています。厳密に申し上げると、“その緊張具合を周りから察知されることが出来ないくらいのフルメイク”で座っているのです。

原因はとってもシンプル、寝坊です。本来はこの一本前の便に乗り、現地でリハーサルを終えた後にホテルでゆっくりメイクをする予定でした。しかし予想外に充実した睡眠の結果、目を覚ましたのは飛行機が出発する1時間前。アタシの家からでは到底間に合いません。こういう時は逆に冷静になるもので、すぐさまイベントの主催者にお詫びのご連絡を入れ、インターネットで次の便を購入(正規購入のチケット料金に目を剥きました)。

続いて“どのタイミングでメイクをするのが一番効率的か”を熟慮した結果、羽田空港の人の少ないカフェでメイクを仕上げました。ほっと一安心といったところですが、機内の周りのお客様はそうもいきません。謎のメイクとカラフルなネイルを施した中年男性の登場に、アタシの周囲には微かな緊張感が漂っています。斜め前の座席からは、お母さまの膝に乗った幼児の真っ直ぐな視線が注がれています。居心地が悪い…。でも完全に自業自得…。周りのお客様への申し訳なさに胸を痛めながら、あと数十分のフライトを乗り切ることにいたします。

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前置きが長くなりましたが、今日の「#ドリゆず」は、今のアタシの指先を彩っている【ネイル】についてお話ししたいと思います。

アタシの指先には基本的に常に美しいネイルが施されています。今でこそ暇さえあれば自分の爪を見てウットリとしていますが、本格的にネイルをするようになったのはこの一年半ほど。それまでのアタシは「ドラァグクイーンというのは、メイクや衣装は女性的でも、それ以外に男性的な部分が残っているからこそかっこいい」という想いの元、ネイルにはあまり興味がありませんでした。まして当時のアタシは恋人募集中の独身ゲイでしたので、爪先を美しくすることによるメリットよりもデメリットの方が遥かに大きく感じられていました。

そんなアタシに転機が訪れたのは二年半ほど前。パートナーがネイリストを目指し始めたのです。彼はネイルの専門学校に通い、アタシの古くからの知人が経営するネイルサロンで修行することになりました。数ヶ月後、彼がそのサロンでネイリストとしてデビューする際に施術してもらったのですが、その日からアタシのネイル人生が始まりました。最初は自爪にシンプルなデザインをお願いしていたのですが、すぐに物足りなくなってしまい、今はジェルチップにギラギラとしたデザインを施してもらうのがお気に入りになっています。ステージでは照明で輝いて見えますし、指の先まで意識が向くので自然と所作が美しくなり、ファンの方からもご好評をいただいております。何より自分の指先というのは常に視界に入るので、その度に心が華やぎます。そしてドラァグクイーンとしての様々なプラスの作用に加えて、予想外だったのは、スッピンの時にも素敵な作用を感じられたことです。

前述した「ドラァグクイーンというのは、メイクや衣装は女性的でも、それ以外に男性的な部分が残っているからこそかっこいい」という想いは今でも変わっていませんが、これは「メイクや髪型や服装は男性的でも、それ以外にどこか強烈に女性的な部分があると、それはそれでかっこいい」と言い換えられることに気づきました。ごく一般的な中年男性の風貌で指先だけは極彩色という、一種の“ハレーション”“異物感”は、アタシが常日頃からドラァグクイーンとして世界にお届けしたいものと全く同じだったのです。電車の中で“五度見”されるのは、“些細な混乱”をアタシから受け取ってくれた証だったのね。嬉しい…!

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自分は興味がないと決めつけていたことでも、何かのタイミングに一度試してみると、様々な発見と共に人生が鮮やかに色づきだすこともあるのだなぁと、しみじみと感じております。

地面に落ちた硬貨は拾えないですし、ネックレスやイヤリングの金具は付けにくいですし、生活の中のあれやこれやはちょっぴり不便ですが、アタシはこれからも派手なネイルをし続けたいと思います。

そんなことをつらつらと書き連ねている間に、飛行機は無事に熊本空港に着陸しました。会場まで急がなくちゃ。今日のステージも楽しみだわぁ!

今回も最後までお付き合いいただき本当にありがとうございます。またお目にかかれることを楽しみにしております。それでは、ごきげんよう。

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text_ Durian Lollobrigida collage_Fumiko Oda edit_Wakaba Nakazato

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