ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの
〜第1回〜「手洗い・うがい」でご機嫌取り! LEARN 2023.09.11

踊り場世代のドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダさんの"ゆずれない、ゆずりたくない、でも時々ゆずっちゃってるかもしれない?!大切にしているコトやモノ”をゆるーくご紹介する連載です。

ハッシュタグは#ドリゆず。あなたのゆずれないもの、なんですか?

今月のゆずれないもの/「手洗い・うがい」

Hanako WEBをお読みの皆様、はじめまして。
ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダと申します。突然現れた謎の生命体に戸惑いを覚える方も多いかと思いますが、アタシは“ドラァグクイーン”というものを生業としている38歳の男性です。もちろん、ゲイです。ドラァグクイーンとは欧米のゲイクラブシーンから花開いた表現様式で、主にゲイ男性が派手なメイクや衣装を身に着けて様々なパフォーマンスをする、そんな存在です。「主に」と付けましたが、中には女性のドラァグクイーンもいらっしゃいますし、ヘテロ(異性愛者)男性のドラァグクイーンもいます。そんなドラァグクイーンを始めて17年。大御所クイーンと若手クイーンの間を所在なさげに漂っている、踊り場世代のドリアンです。

この度、長年日本の女性をエンパワーメントし続けてきた『Hanako WEB』さんで【ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの】というタイトルでコラムを書かせていただくことになりました。無名女装のこだわりなんぞ、読者の0.02%にしか刺さらないことを承知の上で企画を通してくださった編集部の皆様のチャレンジスピリットに感謝しつつ、「果たしてアタシのゆずれないものって何かしら…」と改めて思い返してみました。ドラァグクイーンをしている以上、厳しいマイルールや美学があると思ってくださっているはず。なにか“クイーンらしい”かっこいいポリシーを期待しているに違いないわ…!と半ば焦りつつ暫く思案したのですが、これが出てこない。本当にゆずれないものって、もしかしたらあんまりないのかもしれない、と気づきました。ということでこちらのコラムでは、“ドリアンさんのゆずれない、ゆずりたくない、でも時々ゆずっちゃってるかもしれない、大切にしているコトやモノ”をゆるーくご紹介させていただきたいと思います。#(ハッシュタグ)はそうねぇ、「#ドリゆず」でお願いたします。適当でいいのよ、こういうのは。

ドリアン3

前置きが長くなりました。記念すべき一回目の「ドリゆず」は【手洗い・うがい】です。
「初回から流石にゆるすぎるだろっ!」という読者の皆様のツッコミが聞こえてきますが、これはアタシの生活やお仕事、引いては人生を左右する大切な習慣なのです。そもそもドラァグクイーンの主な芸当は“リップシンク(Lip Synch)”といって、古今東西のディーバや歌い手の歌声に合わせて唇をシンクロさせて、さも自分が歌っているようにステージでパフォーマンスをすることが主流です。ただの口パクを遥かに超えて、歌姫たちの息遣いやビブラート、歌声に込めた想いや世界観までをも表現しきることが求められる非常に難しい芸です。

アタシもクイーンとしてデビューした頃は主にリップシンクのショウをしていたのですが、ここ6~7年ほどは自分の生歌をステージでお届けする機会も増えてきました。最近ではCDデビューをさせていただいたり、ディナーショウをさせていただいたりする機会もたくさんあって、生歌はドリアン・ロロブリジーダにとって欠かせないものになっています。そうなるととても大切になってくるのが喉のケアなのです。

アタシは基本的にプライベートでも鼻歌交じりでご陽気に過ごすことが多いのですが、喉の調子が悪くなってくると途端に落ち込みます。負担を減らすために言葉を発する回数が少なくなり、おしゃべりができないのでだんだんと楽しくなくなってきて余裕もなくなり、家の中の空気がよくない方向に変わっていきます。そして何より、パフォーマンスの質が下がります。いつか別の機会にお話しするつもりですが、アタシはいつもステージでは「観てくれているお客様やほかの誰よりもまず自分が一番楽しむ」ことを大切にしています。それには健やかな喉が必要不可欠なのです。なのでアタシの鞄や自宅には常に多種多様な喉ケアグッズがあります。龍角散は勿論、スプレータイプのモノやマヌカハニー、紅茶や寝る際の喉タオルなど、“喉に良い”という触れ込みのものがあればすぐ購入してしまうほどです。

とはいうものの、アタシは喫煙者なのです。煙草を止めればいいことは百も千も万も承知なのですが、なかなか長年の習慣を止めることも難しく…。「そんな矛盾した自分も人間臭くて好き!電子タバコに変えたから有害物質も減ってるはずだわ!」と、都合のよい解釈をしております。てへへ。

ドリアンさん愛用の喉ケアアイテム。龍角散はマスト。
ドリアンさん愛用の喉ケアアイテム。龍角散はマスト。

そんな調子だからか、喉に不調をきたすこともたくさんあります。ちょうど先日も、北海道でのディナーショウの翌日からSUMMER SONICという音楽フェスに二日間連続で出演した際に喉をつぶしてしまい、1週間ほど声が出なくなったことがありました。そのあともすぐに別のステージが控えていたので、あの1週間の戦々恐々とした気持ちは今思い出しても背筋に冷たいものが走ります。いやだわぁ。

アタシももう40歳近くになって、肉体的な衰えを日々感じています。体調の回復にも時間がかかるようになってきました。これから先もどんどん「こんなはずじゃないのに…!」という想いを感じることが増えてくるでしょう。だからこそ大切なのが毎日の小さなケアなのです。毎日の手洗いやうがいで少しでも健やかな状態を保つようにする。それが自分のご機嫌を取ること、引いては自分の人生をポジティブなものにすることにもつながると思っています。
読者の皆様も「こういうときの自分が好き」「こういう時の自分はあまり好きじゃない」という“心のご機嫌”を注意深く観察して、なるべくご機嫌な状態を保つように(例え小さなことでも)毎日心がけることは大切なんじゃないかしら。アタシを含め、もういい大人の皆様!自分の機嫌は自分で取っていきましょ!

今回はこんな感じかしら。初回からダラダラとした問わず語りにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。またお目にかかれることを楽しみにしております。それでは、ごきげんよう。

ドリアンさん1
text_ Durian Lollobrigida collage_Fumiko Oda edit_Wakaba Nakazato

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