LIFEHACK JOURNAL 暮らしを健やかにする知識とヒント[ 賢く備える防災編 ]

LEARN 2023.09.10

働く女性に役立ち、毎日をアップデートしてくれる情報を月替わりで紹介。今月のテーマは、9月の防災月間に合わせ、日々の備えなどにフォーカス。賢く備えるヒントを届けます。

INTERVIEW いまの時代、そして自分に合ったアップデートされた防災知識がある。

東日本大震災から10年以上。私たちのライフスタイルが変わったように、“本当に役立つ”備えのあり方にも変化が。いま、賢く備えるための考え方とは?

東日本大震災をきっかけに、子育て世代の母親目線で防災の普及活動をしている冨川万美さん。被災者への支援活動は、防災事業を主軸とするNPO法人「ママプラグ」設立のきっかけにもなったという。
「震災当時、私も含めママプラグのメンバーのほとんどが目まぐるしい日々を送っていて。同じ境遇で被災した女性たちのために何かアクションを起こしたい、という衝動には駆られていたのですが、家をあけて被災地へ支援活動に行くことが難しい状況でした。いたたまれない気持ちのなか、震災から半年経ってようやくスタートできたのが、都内に避難しているお子さん連れの女性や、その家族を対象にした支援活動である『つながる.com』です」
 
活動をしていくなかで、被災者の体験談を聞く機会が増えた冨川さんは、そのリアルな声を一冊の本にまとめた。それが『被災ママ812人が作った 子連れ防災手帖』だ。
「私たちが持っていた防災知識と、実際にあがった要望の声はあまりにもかけ離れていました。これは次に備えて伝えなければと思い、マスコミ業界出身のメンバーも多かったので、チーム総出でアンケート取材をして本を作りあげました」

日常の延長で備える大切さ。
出版を機に冨川さんが伝え始めたのは、防災に対して前向きな姿勢で、そして日常の延長として考える「アクティブ防災®」というものだった。

「“防災”にはどうしても重くネガティブなイメージがあり、また“自分には縁遠いこと”という、どこか他人事として捉えられている部分があるのではないかと感じました。そう考えると、備えを特別なことではなく、日常生活の延長線上として捉えることで“いつのまにか災害に強くなる”のが理想だなと思ったんです。例えば、“推し活をしていてペンライトをたくさん持っているから、停電になったらそのペンライトを非常灯代わりに役立てることができそうだ”とか。まずは“自分で考えてみて、その上で行動できること”が大切なんです。アクティブ防災では、そのきっかけとなるような企画や課題解決のテーマなどを提案しています」

“普段通り”を目指す備え。
防災事業を始めてから10年ちょっと。世の中の防災に対する意識にはさまざまな変化があった、と冨川さんは語る。

「以前は防災セットや非常食など、防災専用のアイテムをとりあえず一式そろえなければ!という声が多かった印象ですが、最近では普段の生活で使っているものをいざというときにも応用しよう、という考えが多くなってきたと思います。例えば、企業が“以前から展開しているこの商品は、実は非常食としても使えるんですよ”といった紹介を積極的に行ったり、防災への高い意識を持った人が、“いつも使ってるこのアイテム、実は被災時にも使えるよ”とSNSで発信したり。暮らしに寄り添った備え方をしよう、という考え方が、身近に広まってきたように思います。これが、まさに私が伝えたかった防災のあり方だと感じています。災害自体は避けて通れないからこそ、命を守るだけでなく被災後もいつも通りの生活を少しでも送れるよう備えることが大切。そのヒントや気づきは、意外にも日常に転がっていて、自然と防災に取り組む環境になってきていることを日々実感しています」

CHECK INSIDE 冨川さんの防災ポーチの中身を拝見。

SHOP グッドルッキングな防災グッズを手に入れるなら。

NY発、「未来の日用品店」を掲げるコンセプトショップ〈New Stand Tokyo〉。災害時にも役立つフェイズフリーなアイテムを発見!

2020年7月、NYにある本店のスピリットを受け継ぎ、本国外の1号店として東京・六本木にオープンしたコンセプトショップが〈New Stand Tokyo〉だ。伝統工芸の技術を現代のデザインに落とし込んだ品や、プラスチックフリーの保存容器、サステイナブルを意識した洋服…など、“未来に日用品になってほしいものや考え方”を基準に選ばれたアイテムが並ぶ。
「防災も、まさに日常のスタンダードになってほしい考え方」だと、〈New Stand Tokyo〉スタッフは話す。デザイン性の高い長期保存食や、最先端のフェムテック商品など、日常にも防災にも役立つスマートなアイテムが充実している。“日常の延長にある備え”のヒントになる、そして持っていてもうれしくなるあなたの味方を見つけてみよう。

IDEAS

身近な備えのアイデア。

備えをしようと思ったら、普段の生活を見直すところから。
今日から始める人も、まずはこの2つから実践しよう。

「今日なかったら困るもの」は、常にストックを。
災害用に買い足す、というよりは日常生活の延長としてローリングストックを習慣にすることがポイント。非常食にこだわらず、自分の嗜好に合わせたものを置いておこう。日用品も忘れずに。

家具の高さを見直してみる。
なるべく腰より低い家具やインテリアを意識して。シェルフやラックなど背の高い家具がある場合は、下に重心がくるように物を入れると倒れにくくなる。

KEYWORDS

気になる防災ワード。

防災の基本のあり方も、日々アップデートされる。
最近スタンダードになりつつある、2つの考え方とは。

KEY WORD【フェーズフリー】
「非常用に新しく備える」ではなく、「日常的に使っているものを非常時にも活用する」という考え方。備えに対するハードルも下がり、垣根をなくすことでQOL向上にも繋がる。

KEY WORD【オーダーメイド防災】
全員同じものが必要なのではなく、自分に必要なものを備えようというスタイル。既存の防災セットなども、旅行時のように取捨選択をしながらパッキングして。

GOODS 備えを始めるなら、こんなグッズから。

非常時はパニック状態に陥る。そんなときに使いこなせるのは、普段から使い慣れているアイテムだ。いつもの生活の中でも役立つもの、デザインが好きなものを、備えの第一歩に選ぼう。

photo_Hikari Koki, Wataru Kitao text_Ami Hanashima

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