小池栄子のお悩み相談室 第15回:「半年前に愛猫を突然亡くし、そのショックから立ち直れません」 (32歳・飲食業) LEARN 2023.07.19

仕事、プライベート、家庭生活含め、日々頑張っている人ほど悩みは尽きず、誰かに聞いてもらいたい、いいアドバイスが欲しい…そう思っている女性たちの声がHanako編集部に寄せられています。そこで、女優としてひときわ存在感を放ち、かついつもスパッと気持ちのいい発言をされている小池栄子さんに、人生の先輩としてアドバイスをしていただくこととなりました!隔週更新でお届けします。

――毎日一緒に生活して可愛がっていたペットが、突然死んでしまったら…。その悲しみや辛さは計り知れないものでしょう。現在、愛犬2匹と暮らしている小池さんもまた、その悲しみを乗り越えた経験があるようです。

本日のお悩み

半年前、4歳の猫を突然亡くしました。病気もなく、突然の心筋症でした。ひとり暮らしを始めて初めて飼った猫で、ビビリですが私にだけはなつく、愛すべき猫でした。もっと長く一緒にいられると思っていたため、あまりに突然のことにパニックになり、受け止められないまま日々を過ごしています。新しい猫を迎える勇気もなく、道で野良猫を見かけたり、インスタの猫の投稿を見たりするだけで、かわいいとは思いつつ思い出して涙ぐんでしまいます。大切なものとの別れから、どう立ち直ればよいのでしょうか。(32歳・飲食業)

――これは辛いですね…。心の準備ができていても辛いものなのに、突然だなんて。小池さんは、そのような経験はありますか?

あります。今までに猫2匹を見送りました。1匹目は11歳だったのですが、もう1匹は、先天性のエイズだということが飼い始めてからわかり、ある日黄疸が全身に出て、1歳を迎えずに旅立ってしまって…。最初はもちろん、なんでもっと早く黄疸に気づいて、病院に連れて行けなかったんだろうなどと自分を責めましたけど。夫は引きずっていましたが、私は意外と立ち直りは早くて。

――そうなんですね。そこにはどんな心情があったのですか?

心の整理がつくまでに個人差はあると思うのですが、私の考えとしては、亡くなってしまっても“物体が消えただけ”だと思っていて。楽しかった思い出も、写真もたくさん残っているから、心の中には生きていると感じたんです。だから、割と早い段階で、次の子を迎え入れたいという気持ちになりました。

――悲しみを吹っ切るために背中を押してくれた、なにか出来事やきっかけはあったのでしょうか。

当時、動物病院の先生と話した時に「先天性の病気だからしょうがないですよ」って慰められたりもしながら、救われた言葉があったんです。それは「貰い手がいなくて、ブリーダーの元でとかペットショップで亡くなるよりは、あなたと1年弱過ごせたことで、きっと彼女の思い出に残っているはず」だと言われたこと。

――心強い言葉ですね。

救われました。それから、映画『僕のワンダフルライフ』(亡くなった犬が生まれ変わり、飼い主の元へ再びやってくるという物語)を観た時に、新しい子を迎えた時には、前の子の思いがそのまま乗っかってその子が来てくれるような気がして、すごく腑に落ちたんですよね。結局、その子と別れた辛さや悲しみはいつまで経っても癒えないと思うんです。でも、だったら思い出を活かす方法として、新しい子を迎えるのも手だと思います。そして新しい子と、前の子について話すのもいいですよね。「あなたの前にここにいた○○ちゃんって、こういう子だったんだよ」「○○ちゃんとこういうところが似てるね」って。そうすれば、別れた悲しさよりも、楽しかった出来事を思い出すことも多くなると思います。

――素敵な立ち直り方ですね。この相談者は、亡くしてからまだ半年だという期間の問題もあるのでしょうか。

まあそれもあるでしょう。道で見かけた、あるいはSNSで見た猫ちゃんをかわいいと思えるこの相談者の方は、動物が好きなんでしょうね。きっとまた何かのきっかけから、新しい子を迎え入れて一緒に暮らしたいと思っているのかな、って感じました。それから、新たな子を飼ってあげることで1匹の命が救われると考えれば、いいことをしていると思えるし。

――なるほど。小池さんが観た映画や動物病院の先生の言葉のように、なにか刺さる言葉や気持ちを切り替えるような出来事があるといいですね。

そうそう、何かしら助けになるような言葉に出会えたら、また変わるかもしれないですね。まあ無理に立ち直ろうとしなくてもいいですが、悲しい悲しいと思い続けていたら、ずっと悲しいままですから。きっかけを見つけて、新しい子を迎え入れてもいい気がします。

私は定期的に親や家族と 死生観について話すようにしています。

――ペットのことに限らず、“死”について、小池さんは一家言ありそうです。

家族の中でも私だけなんとなく死に対して違う考えがあると思います。それに、日頃から結構普通に、死生観について親とも話していて。

――へぇ〜。それはどんな話なんですか?

親に「どういうお葬式をしたい?」と聞いたり、「万が一私が死んだら、棺に唐揚げ敷き詰めて」とか(笑)。親からは「やめて、縁起でもない!」なんて言われますけど。でもそういうことを聞かないまま、急に亡くなってしまった時に、どうやって送り出せば故人のために一番いいのかわからなかったり、悩んだりするほうが怖いから、親の想いを聞いて、自分の意見を話しておきたいんです。だから結構定期的に話していますよ。その人の望む形で見送ってあげたいですから。

――すごく大事だし、いいことだと思います。そういう考えになったきっかけはあるのですか?

うちのおばあちゃんの影響はかなり強いかもしれないですね。おばあちゃんは晩年、病気で苦しんでいたのですが、亡くなる直前まで「ああしてほしい」「こうしてほしい」という意見をちゃんと伝えてくれていたんです。その中でも印象的だったのが「私が死ぬ時をちゃんと見ていなさい。あなた女優なんだから。こういう役が来るかもしれないでしょ」という言葉。強い人でした。

――わ〜、素晴らしい。カッコいいおばあちゃんだったんですね。

そうなんです。きっと多くの人が、これまでの人生でペットを亡くしたり、親戚や親しかった人を見送ったという経験はあると思いますが、それは避けては通れない。例えば幼かったとしても、命は永遠じゃないんだ、いつかは死ぬんだ、ということを学ぶし、だからこそ1日を大切にしようって思えたりするし。私自身も、自分のワンちゃんはやっぱり人間よりは寿命が短いんだと覚悟した上で毎日接していて、だからこそなるべく一緒にいたいって思うことで、愛犬との生活や向き合い方も変わってきたところもあります。

――限りがあるからこそ楽しく過ごしたい、ということでしょうか。

そうですね。先ほども“物体が消えただけ”と言いましたが、もちろん愛情を欲することは尽きないけれど、肉体がいなくなっただけで、それまでに故人から十分に愛をもらったはずですから。実際に身近な、愛する家族が亡くなったら悲しいし辛いし、きっとたくさん泣くと思うけど、その人の教えや思い出があれば生きていかれるんじゃないかと思っています。心にはずっと生きていますから。そして、いつか自分も人生を全うした時に、また向こうで会えるんだろうな、という希望も持っているんです。

――そう思えば、死に直面することも、自分が死ぬことも、少し怖くなくなりますね。

そうそう。私、秋川雅史さんの『千の風になって』という曲は当時刺さりました。「そこ(お墓)に私はいません」って。亡くなったおばあちゃんは海外旅行が好きで、亡くなる前まで「あそこに行きたかった」って言っていたぐらい。だから今頃、早くに亡くなったおじいちゃんと世界を旅しているかもって思えるんです。

――この相談者もいつか悲しみから立ち直って、もしかしたらまた新しい子と、前の子の思い出を語れるようになるといいですね。

本当にそう思います。悔いが残るだろうけれど、旅立った猫ちゃんも自分と過ごした思い出を持って天に行ったんだと思えたら、きっと救われると思います。まだお若いし、いつかまた、もう1回チャレンジしてみてもいいんじゃないかな。

Photo : Syu Yamamoto text : Aya Wakayama

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