晩酌をもっとおいしく!娘と父で学ぶ『お酒の学校』 いつもの一杯が最高の一杯になる、ビールの注ぎ方テクニックとは?~『お酒の学校』ビール編その1~ LEARN 2023.02.06

唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”シリーズが、さらに拡大!いつもと違ったお酒の楽しみ方やいままで知らなかったお酒の知識などを、お酒のエキスパートの方々に教えていただきます。今回は家飲みの代表格ビール編。前編は、いつものビールがグンとおいしくなる驚きのテクニックを伝授していただきます。

ビールは、注ぐ前からおいしさが決まっている!?

いつもの一杯が最高の一杯になる、ビールの注ぎ方テクニックとは?

娘・ひいな(以下、ひいな)「今回からは大リニューアルして、お酒をもっとおいしく楽しむ方法を教えてもらいます!」
父・徹也(以下、テツヤ)「お酒のプロに学ぼうってわけだな?」
ひいな「そう!いままでは日本酒だけを紹介してきたけど、ほかにもまだまだおいしいお酒があるからね。いろいろ教えてもらおう!」
テツヤ「そりゃおもしろいね!」
ひいな「今回は、ビール編です!一番身近だけど、実は知ってるようで知らないお酒だと思わない?」
テツヤ「たしかに!最近はクラフトビールもどんどん出てきてるしね」
ひいな「前編は、毎日飲んでる缶ビールをとびきりおいしく飲む方法と、後編はビールの味わい別にペアリングについて教えていただきます!」
テツヤ「おぉ!楽しみ」
ひいな「ゲストの方をお迎えします! くっくショーヘイさんです!」

蝶ネクタイ姿がすてきなくっくショーヘイさん。最高の一杯を飲むためのテクニックを教えてくださいます!
蝶ネクタイ姿がすてきなくっくショーヘイさん。最高の一杯を飲むためのテクニックを教えてくださいます!

くっくショーヘイ(以下、ショーヘイ)「はじめまして!ビアジャーナリスト・フードペアリングインストラクターのくっくショーヘイです!本日はよろしくお願いいたします!」
テツヤ&ひいな「よろしくお願いします!」
ショーヘイ「では、おふたりともお家で缶ビールや瓶ビールを飲まれると思うんですが、実は、ビールって注ぐ前から、おいしさは決まっているんです」
ひいな「え?注ぐ前から?」
テツヤ「いやいや」
ショーヘイ「日常酒として気軽に飲めるお酒でもありますが、実は一番デリケートなお酒でもあるんですよ」
テツヤ「『とりあえずビール!』なんて言っちゃダメですね(笑)」
ショーヘイ「そうですね(笑)。『とりあえず』ではなくて、やさしく扱ってあげてほしいですね」
テツヤ「マジか…」

いつもの一杯が最高の一杯になる、ビールの注ぎ方テクニックとは?

ショーヘイ「ここにある冷蔵庫で、すでにビールを冷やしています。今日はおふたりがお好きだという缶ビールと瓶ビールをそれぞれご用意しました!実はこれらのビールに、ある魔法をかけてるんですけど…」
テツヤ&ひいな「魔法?」
ショーヘイ「そこらへんにあるスーパーやコンビニで買ってきた、いつものビールなんですけど、“あること”を事前にしているんです」
テツヤ「え?」
ひいな「なんだろう?」
ショーヘイ「おそらくみなさんは、その日に飲むビールを、その日に買ってきて、冷蔵庫でちょっと冷やして夜、晩酌や風呂上がりに飲んでるかなと思うんですけど」
テツヤ「まさにそうですね」
ショーヘイ「今日飲んでいただくビールは、昨日買ってきたビールなんです」
テツヤ「おぉ!つまり、1日寝かせるってことですか?」
ショーヘイ「そういうことです!」
テツヤ「輸送のストレスをなくしたほうがいいってことですね。ビールも必要なんだ!」
ひいな「冷蔵庫に置いて、落ち着かせるってことですね」
ショーヘイ「ビールはその日に飲んじゃダメ。1日置いてから飲んだほうが絶対においしくなります」
テツヤ「うわぁ、知らなかった。ということは、あらかじめストックがあったほうがいいってことですね?」
ショーヘイ「そうですね。毎日飲む方はあるといいですね」
ひいな「なるほど」
ショーヘイ「ビールって炭酸飲料なので、振動が加わっていると注いだ時や飲んでいる最中に炭酸がより抜けやすい状態になるんです。たとえば、缶を開けた時にプシューと泡が吹き出す時あるじゃないですか。あれは、液の中にある炭酸が逃げている証拠なんです」
ひいな「あぁ…」
テツヤ「たとえば、酒屋さんが車で持って来てくれるじゃないですか。それも、その日に飲んじゃダメってことですね?」
ショーヘイ「マラソンして、はぁはぁと息が切れてるような状態のまま、その日に飲んじゃダメなんです。疲れているので一度休ませてあげましょう。1日置いておく。これがまず一番大事なポイントになります」

いつもの一杯が最高の一杯になる、ビールの注ぎ方テクニックとは?

ひいな「おいしいビールは前日からはじまってるんですね」
テツヤ「ビールなくなったから、コンビニ行ってくるわ!っていう時点で味が違うってことですね…」
ショーヘイ「なるべく、そーっと静かに買ってきていただいて(笑)」
テツヤ「振動がダメってことですもんね」
ショーヘイ「ビールは、あともう2つ、熱と光にも弱いんです。日本の大手ビールは常温保存可能ですが、夏場や冬の暖房などで温かい部屋を避けるのもちろん、なるべく冷蔵庫に入れておいてほしいです。直射日光や蛍光灯もなるべく避けたほうがいいですね。そういう意味ですと、店舗や輸送時の状態にもよりますが、缶は光を通さないので瓶よりもおいしく飲める可能性が高いんです」
テツヤ「なるほど」
ショーヘイ「その3つを守って保管していただけたらと思います。まずは、1日寝かすのを実践してもらうだけでも、よりおいしい状態でビールが飲めますよ」
ひいな「いままで考えたこともなかったね」
テツヤ「ほかのお酒より、ビールは適当に扱ってたから……反省します!」
ショーヘイ「冷蔵庫で昨日から冷やしてあるので、しっかり温度も冷えて、炭酸も落ち着いた状態になっています。ドアポケットとか、ドアの開け閉めで振動が加わるところにはなるべく置かないで安定したところに置いてください。静置させておいたビールをゆっくり取り出しまして…」
テツヤ「ここで、ガタンって倒しちゃったら明日まで飲めなくなっちゃう(笑)」

いつものグラスにも、ひと工夫!洗い方&乾かし方にポイントが!

いつもの一杯が最高の一杯になる、ビールの注ぎ方テクニックとは?

ショーヘイ「おふたりは普段どんな感じで飲まれていますか?」
テツヤ「うすはりのグラスに注いで飲むことが多いですね」
ひいな「私も小さいグラスで飲んでました。缶でそのまま飲むこともあります」
ショーヘイ「そうですよね。缶でそのまま飲むという方も多いかと思うんですが、缶や瓶のまま飲むと炭酸を強く感じすぎておなかがふくれやすくなったり、香りや味わいも感じ取りにくくなるので、ぜひグラスに注いで飲んでみてほしいです。では、実際におふたりに注いでいただきましょう」
ひいな「緊張するね」
テツヤ「いつも通りでね」
ひいな「プシュ!わぁ、ほんとに泡が出てこない。では、いただきます!わ、味が違う!」
ショーヘイ「寝かせるだけでも、だいぶ味が変わるので」
ひいな「おいしいです!」
テツヤ「僕らの注ぎ方は何点でしたか?」
ショーヘイ「う〜ん、50点ですかね」
テツヤ&ひいな「あはは(笑)」
ショーヘイ「よくみなさんがやる一般的な注ぎ方ではあるんですが、それだとせっかく静置してベストな状態になったビールの味わいを崩しちゃってますね。さらに味を損なわずに、もっとおいしくなるテクニックをお伝えしますね」
テツヤ&ひいな「ぜひ!」
ショーヘイ「注ぎ方も大事ではあるんですが、注ぐ前にやらなきゃいけない大事なことがあるんです。それは、グラスの状態をよくしておくこと。油脂やホコリ、傷がついたグラスだと、おいしくなくなってしまいます。もしグラスに油脂やホコリがついていたりすると、泡立ちが悪くなったり、炭酸が逃げて酸化やべたっとした味わいの原因になってしまうんです」
テツヤ「なるほど」
ショーヘイ「ご自宅で飲む時って、洗って乾かしたグラスを使うと思うんですけど、実はビールって、グラスを濡らしてから飲んだほうがおいしいんです」
ひいな「えぇ?濡れたグラスで飲むんですか?」
ショーヘイ「はい。水で軽くすすぐことでホコリも洗い流してくれますし、ちょっと傷がついていても水によってグラス表面の摩擦が減るんです」
テツヤ「へぇ〜!」

グラスを洗うスポンジを別で用意して。
グラスを洗うスポンジを別で用意して。

ショーヘイ「あとは、グラスを洗う時には必ず別のグラス専用のスポンジを用意してほしいですね。特別なものじゃなくていいんです。100均で売っている、やわらかいスポンジであればなんでもかまいません」
テツヤ「なるほど、グラス用に分けるってことが大事なんですね」
ショーヘイ「はい。洗剤は普通に使っている中性洗剤で大丈夫です。脂がまったくついていないスポンジで洗ってください」
ひいな「はい!」
ショーヘイ「汚れがついたグラスだと、グラスの側面にぷちぷちとした炭酸の泡がつくんですが、それはまさに炭酸が逃げている証拠なんです」
テツヤ「わぁ、そうなのかぁ。これからは気泡が気になっちゃうね」

いつもの一杯が最高の一杯になる、ビールの注ぎ方テクニックとは?

ショーヘイ「まず、洗剤を使って洗って、よく洗い流します。そしてそのままグラスは拭かずに自然放置でOK。グラスを拭くと傷がついたり、糸くずやホコリがつくので拭かなくて大丈夫です。洗って立てておくだけで大丈夫です」
ひいな「濡れたままでいいなら楽だね」
ショーヘイ「ここでもうひとつ。普段私たちが飲むラガービールを飲む場合は、グラスも冷やしてあげるとさらにおいしくなります。ビールを飲む適温は『アルコール度数と同じくらい』と覚えてもらえるとわかりやすいです。普段飲むビールって5%くらいなので、5度くらい。ビールを注いだ時にグラスの温度によってもビールの温度が変わってしまうので、のどごしを楽しみたいラガービールはグラスを冷やしておくといいですね。クラフトビールなど香りや味わいをより楽しみたい場合は、温度が高い方がより感じやすくなるのでグラスは冷やさずすすぐだけでOKです」
ひいな「よく冷凍庫で冷やしたグラスとかあるよね」
ショーヘイ「冷凍庫の場合、霜がついたり、臭い移りやビールの凍結の原因になるのでそれよりも氷水で冷やすのがオススメです。冬の場合は水道水だけでも十分。グラスに水を入れて1分くらい置いておくだけで構いません」

テツヤ「ちょっとした手間をかけてあげるってことですね」
ショーヘイ「この下準備がビールには大事なことですね」
テツヤ「ビール飲むのになんで氷いるの?って思う人は、わかってないねぇってなるね(笑)」
ひいな「いや、グラスを冷やすんだよってね!」

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