〈SPICE SPACE UGAYA〉

【カレーときどき村田倫子】第6回 知る人ぞ知る注目スポット・奥浅草で愛される店〈SPICE SPACE UGAYA〉へ。奥深いスパイスカレーの数々がここに。 Learn 2019.12.09

「カレーときどき村田倫子」へようこそ。食べたいカレー屋さんを訪ね、自身でつらつらとカレーに対する想いを綴る、いわば趣味の延長線ともいえるこの企画。今回訪れたのは、知る人ぞ知る人気エリア、奥浅草にある〈SPICE SPACE UGAYA〉を訪れました。

人ぞ知る人気エリア・奥浅草にある〈SPICE SPACE UGAYA〉

人々で賑わう浅草寺の北側、少し足を伸ばすと下町の雰囲気が残る住宅街が。このエリアは奥浅草と呼ばれ、古くから地元の人が足繁く通う隠れた名店や新進気鋭のニューカマー達がひっそり軒を連ねる知る人ぞ知る人気エリア。実は私、このエリアに引き寄せられる太刀らしく、過去カレー連載において〈PQ’s 〉〈ガヤバジ〉で訪れているのです。今回は三度目ましての奥浅草ね。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

さて、今日のお店は〈SPICE SPACE UGAYA〉。あたたかなウッディー調の店内。オーナーの宇賀村さんと奥さん。ご夫婦で営む居心地のよい一間。

「パパのカレーは美味しいよ」とこそっと耳打ちする可愛い娘さんも。
「パパのカレーは美味しいよ」とこそっと耳打ちする可愛い娘さんも。

奥浅草ににあるバー〈Chanbow〉にて二年ほどケータリングや間借りでカレーを振る舞い、一年ほど前にこの地で自身の城を構えた宇賀村さん。“間借りからの独立”。ここ最近よく耳にするカレー会のインディーズからメジャーへのストーリー。しかし彼の歴史はその中でもユニークだ。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

実は宇賀村さん、カレーを振る舞う以前は和食の調理人を7年ほど経験している。そして驚くのは、その後はデザイナーへ転身。〈テレビ朝日クリエイト〉に入社しCG制作、グラフィックを担当。食の場からうってかわってクリエイティブな場に10年ほど関わっているのだ。「どちらも好きなことで一つに絞れなかったんです。なので双方トライしたくて…。」なんとも男気溢れ、潔い人生選択なのだろう。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

目標地点を満を持して通過した宇賀村さん。「次にやりたいことはなんだろう…」そう考えたときに彼の脳内をジャックしたのは「カレー」だった。和食をまかなっていた時代から、いや幼少期からずっと好きだったカレー。さて、いざカレー屋を…といかないのが彼の流儀。カレーのコアとなる「スパイス」について研究すること2年、スパイスコーディネーターの上級資格“スパイスコーディネーターマスター”を取得した。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

今まで多くのカレー屋さんを取材してきたが、こんな資格があったことすら初耳だ。前述したエピソードもそうだが、彼の「好き」への誠意と熱量は計り知れない。

〈SPICE SPACE UGAYA〉

豊富な人生経験、スパイスの確かなる知識。多くの装備を持ち合わせた宇賀村さんの作るカレーも多種多様。黒毛和牛使用の看板カレー「牛すじカレー」、カルダモン香るインド系カレー「チキンカレー」、中華インスパイア系カレー「豚バラカレー」、ごろごろ野菜が入ったヘルシーな「野菜の食べるカレー」、スパイシーでクリーミーな「ドライキーマ」、和ベースのサバカレー「ドライ鯖キーマ」…と定番だけでもこのラインナップ。
和食の経験を生かし、出汁を核としたカレーが特徴の〈SPICE SPACE UGAYA〉。驚くことに、全てのベースの配合が違うためどのメニューも風合いが全く異なるのだとか…。二種あいがけがあると色々と楽しめるのは有難い。

「牛すじカレーとドライ鯖キーマのあいがけカレー」
「牛すじカレーとドライ鯖キーマのあいがけカレー」

「牛すじカレーとドライ鯖キーマのあいがけカレー」デザイナーとしての息遣いを感じる色彩豊かな盛り合わせ。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

最後にバーナで焼きを入れているサバの切り身は、香ばしさを纏い、出汁をふくんだ旨味が上品に広がる。主張しすぎず奥ゆかしい味わいは、まるで割烹料理のようだ。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

繊細な味わいの層に、アクセントを与えるナッツの存在も面白い。ここで緩急がついてまた違った表情を楽しめる。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

お客さんからも熱烈なラブコールが絶えない「牛すじカレー」和ベースのスープ、チキンブイヨン、牛のスジや骨から取ったフランスのだし汁フォンドボー…など秘伝のベースから織りなす旨味の層。一口の衝撃波は十分なのに、後味は軽快で潔い。なんだこの矛盾…。ほろほろジューシーな黒毛和牛の身を口に含んだら最後、このカレーに骨抜きされること間違いなし。いくらでも入ってしまうぞこれは…!(美味しすぎて罪)

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

洋風でありながら、芯に宿るのは出汁が香る和の心。濃厚なインパクトがありながら、すっきりと嫌味なく胃袋に浸透する感覚。我らのソウルウード味噌汁を洋風にしたならば、それが近いかもしれない。

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

奥浅草に昔から馴染みがある宇賀村さん。食材は昔馴染みの友人から紹介された卸しから仕入れているため、良心的な価格で私たちはカレーを楽しめる。(だって黒毛和牛で1,100円ってねえ…ありがたや)

〈SPICE SPACE UGAYA〉奥浅草

この居心地のよい店内も、仲間内の職人や、ご自身でつくりあげたそう…。もちろん、このメニューもデザインby宇賀村さん。(デザイナー経歴強し)

「ドライキーマ」1,000円
「ドライキーマ」1,000円

間借り時代からの看板メニュー、「ドライキーマ」。ぎゅんと旨味がつまった濃厚なキーマ。まろやかできめ細やかな“コク”が印象的だが、生クリームは使用せず、ココナッツ、中華でよく用いられる“マー油”という焦がしニンニク油が味のコアを支えている。そこに、つるんと輝く黄身の黄金ソースを絡ませれば…もう…(ごくり)同じキッチンから生まれたカレーとは思えないほど、宇賀村さんのカレーは個々が生き生きとしている。

〈SPICE SPACE UGAYA〉

〈SPICE SPACE UGAYA〉の魅力を知るには胃袋が一つじゃ足りないんです。定番も全て味わえていないし、不定期に週替わりや日替わりのメニューもあるのだとか。これはまた奥浅草を訪れる素敵な理由ができちゃったな…。
和食の調理人としての経験値、クリエイティブな場で培われたセンス。宇賀村さんの人生の足取りが余すことなくしっかり刻まれている。枠がなく自由だからこそ、カレーは人生そのものが如実に滲み出るフード。だから私は底なしにカレーを愛しているのだ。

〈SPICE SPACE UGAYA〉

奥浅草に根付く愛と、そのイズムを紡ぐ一皿。まるで彼の人生そのものがが映し出された唯一無二のカレーは、複雑みが奥深く、そして何よりあたたかい。

〈SPICE SPACE UGAYA〉

■東京都台東区浅草5-23-7
■070-7524-0444
■11:30〜14:00、18:00〜22:30(22:00L.O.)日・月定休

(photo:Kayo Sekiguchi)

☆前回の「バイブスが高まるカレー!?ハイセンスな空間で食べるカレー〈VIRES CURRY〉はいかが?」はこちらから。

Videos

Pick Up

SPpeachPeachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅。2021年に世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。一年を通して比較的温暖で豊かな森も美しい海も楽しめ、旅先に選ぶ人が増えています。 簡単におさらいしておくと、奄美大島は鹿児島本土と沖縄の間の洋上に浮かぶ離島。加計呂麻島や徳之島、沖永良部島など周辺の島々を合わせて奄美群島と呼び、フェリーや飛行機を使って群島ホッピングも可能です。 そんな奄美大島、いざ行くとなると「アクセスが良くなさそう」「航空券も高くなるのでは」と心配の声が聞こえてきますが…。大丈夫です! 日本のLCCを代表するPeachなら、奄美への直行便があるのです。成田空港から約3時間、関西空港から約2時間、そして(時期にもよりますが)片道4990円からとリーズナブル。これは、躊躇していたら損!Travel 2023.02.28 PR
サントリーvol3SP文筆家・塩谷舞による「今日、サントリーホールで。」Vol.3「何か豊かなものに触れて気持ちを切り替えたい。美術館で何かいい展示してないかな、映画館は……」。そんな日常の選択肢に加えて欲しいのが「コンサートホール」。クラシックといって構える必要はありません。純粋に音を楽しむのはもちろん、目を閉じてゆっくりと息を吸いながら、最近の自分のことを振り返ったり、あるいは遠くの場所や知人のことを思い出したり。ホールを出るころには心と体がふわっと軽くなる。文筆家・塩谷舞がサントリーホールで体験して綴る、「コンサートホールのある日常」。Learn 2023.02.28 PR
サントリーホールのオルガンは、オーストリアのリーガー社謹製。職人たちが1年がかりで手作業で作ったパイプをはるばる船で運び、半年かけて設置したのだとか。文筆家・塩谷舞による「今日、サントリーホールで。」Vol.2「何か豊かなものに触れて気持ちを切り替えたい。美術館で何かいい展示してないかな、映画館は……」。そんな日常の選択肢に加えて欲しいのが「コンサートホール」。クラシックといって構える必要はありません。純粋に音を楽しむのはもちろん、目を閉じてゆっくりと息を吸いながら、最近の自分のことを振り返ったり、あるいは遠くの場所や知人のことを思い出したり。ホールを出るころには心と体がふわっと軽くなる。文筆家・塩谷舞がサントリーホールで体験して綴る、「コンサートホールのある日常」。Learn 2023.01.27 PR
記事3_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅③ | 絶景サンセットから、夜の森でアマミノクロウサギに遭遇!絶滅危惧種を含むユニークな動植物が数多く生息する鹿児島県の奄美大島。奄美群島のひとつである徳之島、沖縄島北部、西表島とともに2021年に世界自然遺産に登録され、海外からも熱い視線が集まっています。 サンゴを育む奄美ブルーの海と白砂がまぶしいビーチ、アマミノクロウサギをはじめとする天然記念物も暮らす亜熱帯の森やマングローブの原生林。地球の宝ともいえる、奄美ならではの美しい自然を味わってみませんか? 奄美大島は「アクセスが良くない」というイメージもありますが、LCCのPeachが運航する直行便なら、成田空港から約3時間、関西空港から約2時間。そして時期によっては片道4,990円からとリーズナブル! “遠い楽園”が身近になるPeachの直行便で奄美大島2泊3日の旅に出たのは、ハナコラボパートナーであるフォトグラファーのもろんのんさん。今回はサンセットの名所と森のナイトツアーを体験した絶景&アクティビティ編をお届けします。 公式サイトはこちらTravel 2023.03.14 PR
記事2_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅② | とれたての海鮮丼から、島唄居酒屋で歌って踊って!?2021年に世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。一年を通して比較的温暖で、豊かな森も美しい海も楽しめ、「沖縄より混雑していない」ことでも注目されて、旅先に選ぶ人が増えています。 簡単におさらいしておくと、奄美大島は鹿児島本土と沖縄の間の洋上に浮かぶ離島。加計呂麻島や徳之島、沖永良部島など周辺の島々を合わせて奄美群島と呼び、フェリーや飛行機を使って群島ホッピングも可能です。 そんな奄美大島、いざ行くとなると「アクセスが良くなさそう」「航空券も高いのでは」と心配の声が聞こえてきますが…。大丈夫です!日本のLCCを代表するPeachなら奄美への直行便があるのです。成田空港から約3時間、関西空港から約2時間、そして(時期にもよりますが)片道4,990円からとリーズナブル。これは、躊躇していたら損! そこで、ハナコラボ パートナーである藤井茉莉花さんが奄美大島2泊3日の旅へ。 奄美に魅せられて移住し、現在は多拠点でライターや通訳士として活動する藤原志帆さん(https://enjoy-amami.com/)に教わったおすすめスポットをまわります。 今回は海鮮丼、島唄割烹、お土産のセレクトショップなど、グルメ&お買い物編をお届けします。 公式サイトはこちらTravel 2023.03.07 PR
記事1_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅① | 島とうふにスパイスカレー、超地元スーパーでおかいもの。2021年に世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。一年を通して比較的温暖で、豊かな森も美しい海も楽しめ、旅先に選ぶ人が増えています。 簡単におさらいしておくと、奄美大島は鹿児島本土と沖縄の間の洋上に浮かぶ離島。加計呂麻島(かけろまじま)や徳之島(とくのしま)、沖永良部島(おきのえらぶじま)など周辺の島々を合わせて奄美群島と呼び、フェリーや飛行機を使って群島ホッピングも可能です。 そんな奄美大島、いざ行くとなると「アクセスが良くなさそう」「航空券も高いのでは」と心配する声が聞こえてきますが…大丈夫です! 日本のLCCを代表するPeachなら、奄美への直行便があるのです。成田空港から約3時間、関西空港から約2時間、そして(時期にもよりますが)片道4990円からとリーズナブル。これは、躊躇していたら損! そこで、ハナコラボ パートナーでフォトグラファーでもあるもろんのんさんが奄美大島2泊3日の旅へ。 奄美に魅せられて移住し、現在は多拠点でライターや通訳士として活動する藤原志帆さん(https://enjoy-amami.com/)に教わったおすすめスポットをまわります。 まずは、島とうふの定食にスパイスカレー、超地元スーパーでショッピングなど、グルメ&お買い物編をお届けします。公式サイトはこちらTravel 2023.02.28 PR