謎のベールに包まれた空間 【名店STORY】時空を超えた仏領インドシナがここに。幻の食卓を再現〈アンドシノワーズ〉の本質に迫る。 FOOD 2018.02.04

東京都千代田区岩本町のとあるビルの一室。そこには、もう現世にはない仏領インドシナを再現した、幻の食卓が広がっていました。

その時代の空気までも再現

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1日1組限定。看板もなく、住所は非公開。知る人ぞ知るプライベートダイニング〈アンドシノワーズ〉。ここには、もう現世にはない仏領インドシナを再現した、幻の食卓が広がっているのだ。

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ユニットを組む園健さんと田中あずささんは2、3カ月に1度はベトナム・カンボジア・ラオスの旧仏領インドシナ界隈へと旅立つため、毎日営業しているわけではない。けれどその旅の恩恵を受け、現地の食材や調味料を使い、アップデートされた「本質」を味わうことができる。

「古典的な料理は物流インフラから外れた、田舎の家庭料理に残されていることが多いですね」と健さん。

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渡航のたびに鍋、包丁に至るまで、現地のものを運び、食器には仏領インドシナ時代のアンティークも。BGMには統治時代の歌謡曲が流れる。扉の内側はその世界観が再現された奇跡の空間なのだ。

和やかな宴には、あの時代の輝きが

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キッチンとダイニングの垣根はない。大きなダイニングテーブルから全体を見渡せるキッチンで、健さんもあずささんも時にはグラスを傾けながら調理。次々と大皿が運ばれ、その料理が生まれた背景や旅の思いを聞きながら味わう。

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料理はコースのみで1人8,000~。食前酒を飲みながらゆるりと始まる。こちらは、ラオス発祥のラープ。

「ベトナムは料理の洗練を追求した歴史があり華やかさがあります。カンボジアやラオス料理は河や山の素材を生かす知恵がありますね」など三国を俯瞰した分析も楽しく、会話が広がる。

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蟹のタマリンド炒めなど、大皿料理が次々と出される。年に何度も旧インドシナ地域を訪れ、調味料も現地調達しているので、その味は本物。

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長粒種のもち米を一口大にして手でつまみ、お料理と混ぜ「チャムチャム」しながらいただく。

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他にも、鶏煮込みやスープなど、コースは8品にも及ぶ。デザートには桃のマリネを。

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フォトグラファーとしても活躍する健さんは語る。「表面的な華やかさではなく、料理を通して、その文化の『本質』を伝えたい。暗く厳しい時代も経てきた、そのネガティブな歴史や文化も含めて語り継いでいきたい。失われた文化ってロマンがあるじゃないですか」

扉を開けた瞬間から広がる、どこか懐かしいその空気はきっと、店主の熱い想いに、遠い時空が共鳴したのだろう。

(Hanako1146号掲載/photo : Norio Kidera text : Noriko Maniwa)

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