老舗珈琲店の美しいアレンジコーヒーにうっとり… 銀座の古き良き「珈琲」美学を体験できるコーヒー専門店3軒
ネルドリップに自家焙煎…伝統を受け継ぐ珈琲専門店がひしめく銀座。そんな銀座の珈琲文化の歴史をつくった老舗珈琲専門店をはじめ、コーヒー好きなら是非訪れたいお店をご紹介します。
1.1948年創業の「珈琲だけの店」。世界に名を轟かせる孤高の一軒〈カフェ・ド・ランブル〉
銀座の路地で歴史を刻む日本のコーヒー界の重鎮。
今年103歳を迎えた店主の関口一郎さんは、豆のエイジングや手縫いのネルドリップ、とろりと濃厚なドゥミタスコーヒーなど、すべてに独自の道を切り拓いたコーヒー界のレジェンド。メニューはブレンド3種、ストレート20種以上と心惑わす豊富さ。創業当時に考案した「琥珀の女王」は、砂糖を入れ比重を重くしたコーヒーの上にエバミルクを注いだ白黒の2層が美しい一品で、全国に広まった。
ネルドリップ中の林不二彦さん。
店オリジナルの口先の細いポットで糸のように細く湯を注ぐ。ネルフィルターで抽出した豆は、雑味なく澄んだ味になる。
深煎りのタンザニアを濃厚なドゥミタスで。790円。
コーヒーゼリー770円など数少ないデザート類も秀逸。
創業時から看板に掲げ、店の精神を語る「OWN ROAST HAND DRIP」の文字。焙煎とドリップを極めてこそ「完璧」なコーヒーが完成する。
2.一杯入魂のネルドリップ。丹念な仕事が光る琥珀の空間。〈十一房珈琲店〉
1978年創業、ネルドリップ&自家焙煎のスタイルを貫く店。オープン時の〈カフェ ベシェ〉から移転を機に現在の店名に。
店内は真空管アンプからジャズの名盤が静かに流れる。
2年前から店主を務める長谷川能一さんのドリップは見惚れるほど繊細で、一滴ずつ丹念に湯を落とし、一杯の抽出に実に4分を要する。ウェッジウッドのカップに注いだコーヒーはとろりと滑らかで、清く澄んだ味わい。
長谷川さんが焙煎する豆は20種ほど、ブレンドだけでライトローストからイタリアンローストまで5種そろう。
日本を代表する焙煎機「フジローヤル」の前身「フジ」時代の3.5㎏釜を愛用。香ばしい香りとともに艶やかに輝く深煎り(イタリアンロースト)が焼きあがる。
抽出を待つ時間さえ心地よい、銀座のコーヒーの美学を伝える店。
3.上質なコーヒーと気取らぬフード。「銀座の喫茶店」の新たなかたち。〈310.COFFEE〉
コンセプトは「BEANS・ROAST・DRIP」。〈宮越屋珈琲〉で15年経験を積んだ店主の佐藤由希絵さんが2016年2月に開いた店。
高スペックの生豆を「フジローヤル」の5㎏釜で焙煎し、ローストは中深煎りから深煎りが中心。それをネルドリップで艶やかに仕上げ、名窯の美しいカップで出す。
「ヘレンド」「マイセン」「ウェッジウッド」など、店主が一つ一つコレクションした器の数々。お客の好みや雰囲気に合わせて器を選んで出してくれる。
本日はヘレンドの器で。
自身の名を冠した店名の〈310.〉には実は「サテン」の意味もあり、自家製パンやカレーなどフード類が豊富なのも「一日中過ごせるように」との思いから。質の高いコーヒーと喫茶の親しみを併せ持つ、銀座で稀有な一軒。
(Hanako1142号掲載/photo : Kiyoko Eto text & edit : Yoko Fujimori)