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2021.08.04

第8回 夏子の大冒険 〜ちいさな美術館を巡る旅〜 縄文時代へタイムスリップ!埋蔵文化財調査センターへ。「なんで、なんで、なんで」編

ちいさな美術館を巡って、作品から思いを馳せるこちらの連載。第8回目の舞台は、多摩ニュータウンにある964ヶ所の遺跡から発見された出土品を展示している〈東京都立埋蔵文化財調査センター〉。隣接する遺跡庭園「縄文の村」を歩けば、気分はすっかり縄文人に。

縄文時代に身をおいて。

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多摩センター駅に降り立つと、商業施設が立ち並び、買い物も食事も、映画を観ることだってできる、なんとも便利で清潔な街が広がっています。小さい子どもが駆け回り、ベビーカーを押すお母さんたちが井戸端会議をする、そんな微笑ましい街を背に歩くこと5分。そこには鬱蒼とした緑が広がる「縄文の村」が現れるのです。タイムスリップしたかのような空間に身をおいた時、私の中で沸々と込み上げる疑問たちのことを思い出しました。

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「なんで、なんで、なんで」

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「なんで?」は突然やってくる。朝、手に持ったパンを見て、なんでこれを食べるんだっけ? 鏡に映った服を見て、なんでこれを着ているんだっけ? そもそもなんでこんな服持っているんだっけ? 私の「なんで?」はまだまだ続いていく。

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携帯を眺めながら、大きなスピーカーを買いそうになる。部屋に3つもスピーカーがあるのに、なんで新しく買うんだっけ? 劇場に芝居を観に行く。舞台ってなんで誕生したんだろう? 人は何を求めて劇をつくり、舞台に立ち、それを観に集まったんだろう? 人間ってなんだっけ?

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そんな私の「なんで?」に対する答えはあらかた、歴史の教科書の冒頭5ページくらいに集約されている。縄文時代。そこには、「なんで?」の始まりが書いてある。

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初めて見た土器は美しかった。人間が生きるためだけにつくられたようだった。生きるために、食物を煮て、貯蔵するためにつくられた器だった。その模様は、機能と神事のために装飾したに違いないが、物凄い生命力を持って、生きるために表現されている。

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土器を作った人たちは、その土器が役目を終えた時、神様にお返ししていたそうだ。大地から受け取ったものは、大地に返す。「なんで?」の隙間も見つからない。

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ありあまる富に囲まれて暮らしていると、時々意味を見失ってしまう。「なんで?」が溢れて身動きが取れなくなった時、「生きるために行動すればいいんだ」と、縄文時代の土器たちは教えてくれていたのかもしれない。

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今回訪れたのは…〈東京都立埋蔵文化財調査センター〉

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この連載で訪れた〈岡本太郎記念館〉をきっかけに、もっと知りたいと思ったのが縄文時代でした。竪穴式住居や土器などの美しさに触れる度、「縄文時代って “美術” なんだ!」と気づかされます。部屋に飾っている土偶のレプリカたちが今日もひっそり、「なんで?」にがんじがらめになった私を見守ってくれています。

縄文時代の集落に盛土をして当時の多摩丘陵の景観を復元している「縄文の村」。
縄文時代の集落に盛土をして当時の多摩丘陵の景観を復元している「縄文の村」。
現在は企画展『現場のミカタ』を開催中。発掘調査の “現場” を舞台に、土器や石器の謎に迫ります。
現在は企画展『現場のミカタ』を開催中。発掘調査の “現場” を舞台に、土器や石器の謎に迫ります。
縄文時代の集落に盛土をして当時の多摩丘陵の景観を復元している「縄文の村」。
現在は企画展『現場のミカタ』を開催中。発掘調査の “現場” を舞台に、土器や石器の謎に迫ります。

〈東京都立埋蔵文化財調査センター〉

■東京都多摩市落合1丁目14-2
■042-373-5296
■無休
■9:30~17:00
■無料

photo : Yumi Hosomi

夏子
夏子 / 女優・モデル

「1996年、夏生まれ。美術と文学、猫が好き。夢は『夏子の冒険(三島由紀夫)』で夏子役を演じること。」

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