ハナコラボSDGsレポート ユナイテッドアローズから誕生したスキンケアブランド〈JUICE〉の本質を忘れないモノづくりを通して見えてきたこと。 /ナチュラルビューティーハンター・シナダユイさん
ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足! 毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第6回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、スキンケアブランド〈JUICE〉の新製品発表会に参加。後日、担当者の西岡さんに話を伺いました。
今から十数年前。私は原宿で働き、まだ「持続可能性」という概念も知らず、とにかく素敵なものに触れたい一心で足繁く通っていたお店がある。原宿の〈ユナイテッドアローズ〉ウィメンズ館である。
働いては買い、という時代から巡り巡ってナチュラルビューティーハンターとして新製品発表会で初のスキンケアがリリースされることを知った。圧倒的なビジュアルの美しさに感動したのと同時に、なぜ同社が自然派のスキンケアを、そして国産の原料にこだわったのか、そこに「持続可能性」を感じたため、早速SDGsレポーターとして伺ってみた。
身なりを整える、全てを含む”ファッション”。
ーー本日は〈JUICE〉を担当する西岡さんにお話を伺います。まず〈ユナイテッドアローズ〉さんがスキンケアを出すに至った背景をお聞かせください。
「まさにその十数年前から、生活雑貨を提案する〈スタイルフォーリビング〉では、インテリア雑貨とコスメを扱っておりました。当時はセレクトでコスメの棚を設けているところがまだなかった時代で、今となっては誰もが憧れる海外ブランドを取り扱い、その頃からファッションに美容は含まれると考えていました」。
ーー憧れを持って足繁く通っていたあの頃が懐かしいです...。
「肌という土台が整っていることで、ファッションをより楽しんでいただくことができると思います。そこが自分で納得のいかない状態だと何を着ても全く心が上がらない。しっかり肌を整えるからこそ、洋服をいつもより素敵に着こなしていただける、という想いでバイイングをしていました」。
ーー女性として激しく同感です。
「それから3年程前にファッションマーケティング部が、”ファッション”とは洋服だけでなくて美容も含め全て”ファッション”と捉える時代が来ている、と改めて言葉の見直しの機会があり、しっかり自分たちで表現していくべきなんじゃないかと考えたのがきっかけです」。
自分たちのモノづくりや企画の経験を活かした製品。
ーーそれから完成までに3年、長いですね。
「私たちは基本お洋服を作る会社なので、化粧品業界の定番の流れを知りません。お洋服と同じように先ず素材を選んで、大きさ、サイズ、色展開を決めてそこに落とし込んでいく。パンツ、トップス、ワンピースのようにシーズンに必要なものを選び、どんなシュチュエーションで使われるかを考えました。洗面台なのか、会社のデスクなのか…と」。
ーーアパレルらしい発想で面白いですね。形式に囚われず個性を大事に...。それもSDGsなんじゃないかと私自身、この取材の合間に教えていただいたところです。
「進めていくうちに男性バイヤーの意見も取り入れつつ、商品名をリップではなくバームにしたり、容器を選ぶ時点で大きいと男性は持ち歩かないのでポケットに入るサイズにしたり。香りやテクスチャーを決めるのにも”バイヤー目線”で試行錯誤を繰り返し、自分たちが納得した上でお客様に紹介したいなと思えるまで時間がかかりました」。
ーー使う側の目線と、長年の経験で培われた感覚やセンスを充分に活かし、ベストな状態を導き出したんですね。パッケージも凛としていてとても素敵ですね。
「原料に使われた椿オイルの生産地を訪れた時、葉の色が力強くてすごく緑が綺麗で。島の半分くらいが椿の木で覆われているようなところだったので、この色に落ち着きました。また、そこで受けた”一つとして同じ葉の色はない”という印象が、後の容器開発に活かされました」。
一緒に成長していきたい。
ーーでは、その島との関わりについて伺います。「地域に自生するヤブ椿を環境に負荷をかけることなく採取し、搾りかすは肥料として土地に戻すというクリーンな循環を維持するとともに、雇用確保、産業活性化など島民の皆様の安定した生活にも貢献できる、サステナブルなモノ作りを目指しています」と自社サイトでご紹介がありましたが、そういったサステナビリティの意識もあっての製品開発でしたか?
「自分たちとしては、いいものを作らなければと至ってシンプルな想いで始めましたが、SDGsやサステナビリティは製品に関ってから強く意識し始めて、同時に会社としても機運が高まり方向性が決まりました」。
ーーともに、第一歩を踏み出したという感じですかね。
「そうですね、現状はまだ椿オイルは島の産業にはなっておらず、世に出ていない隠れた名品です。今回〈JUICE〉という製品になったことで、島の人たちから”勇気と希望をいただきました”と言ってもらい涙が出そうになりました。今はまだ力になることは出来ていませんが、〈JUICE〉の発展と共に椿オイルが島の新しい産業となり、雇用に繋がっていく、その第一歩を踏み出すことができました。今までの対・目の前のお客様を大切に、という思いとはまた違う次元で壮大なことに携わらさせていただいている責任感もありますが、大切にしていきたいです」。
ーー一歩一歩ですね。
「伊勢丹さん〈ビューティーアポセカリー〉でのポップアップでは、島とのお取り組みをお客様から激励していただくこともありました。そういうお話ができる商品を自分たちで手がけることができて、すごくよかったなぁと思っています。〈JUICE〉を使うお客様が、遠い島にいる人々と繋がることができるのもうれしいことです。そういう気持ちは大切にしつつ、ファッショナブルではいたいので、どこに置いていても、誰が持っていてもおしゃれでかっこよくは崩さず、使うことで気分が上がること。この本質は忘れません」。
インタビュー最後の”本質”という言葉に強い意志を感じました。”ファッショナブルであること”という軸は崩さず、使う人、つくる人が共に発展していける。これが〈ユナイテッドアローズ〉独自の持続可能なクリーンビューティーの提唱なのだと感じ取りました。〈JUICE〉は日本人にとって身近であるが故に、見過ごしていた椿オイルを使い、性別問わず、日常に素敵に溶け込む香りやテクスチャーに設計された今の時代にぴったりのアイテムがそろいます。そして使う瞬間に誇らしい気持ちにもさせてくれます。
私自身、SDGsレポーターとして興味を外に向けることで見えてきたこともあります。”じぶんごと”でいいので、良いなと思うものにはこれからもたくさん触れ、学んでいきたいと思いました。