弘中綾香の「純度100%」~第19回~
2020.01.24

第19回 言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第19回~

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。今回はメンタルヘルスに欠かせない意外な存在について。
弘中 綾香
弘中 綾香 / テレビ朝日アナウンサー

「1991年生まれの入社7年目。夢は革命家で、当面の目標はラジオ番組を持つこと。現在の担当番組は『激レアさんを連れてきた。』(土曜夜10時10分~)など。公式インスタグラムはhttps://www.instagram.com/hironaka_ayaka/

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「ベンゾーさんとわたし」

 「僕は綾香ちゃんのベンゾーさんだから」と言ってくれる人がいる。言われたときは私も頭の中がハテナマークで一杯になった。この“ベンゾーさん”というのは『キテレツ大百科』のキャラクターらしいのだが、詳しく私は知らなかったので調べてみると、ベンゾーさん(正式には勉三さん)はキテレツくんやコロ助の近所に住む浪人生で、ガリ勉でどんくささ満点なのだけど、ちょっとしたタイミングで豊富な知識や人生経験からアドバイスをくれる存在だった。

 そんなベンゾーさん的お兄さんが私には付いている。と言うと、何だか意味深なイメージを持たれてしまいそうだけど、端的に言うと、私の英語の先生のことだ。英語とポルトガル語が話せる日本人。とてつもなくクレバーな方で、私には何のことだかわからないような分野の論文を出したり、本も出したりしている。平日は何だか難しそうなお仕事をしているのだけど、家庭教師のアルバイトがずっと続いてしまった、くらいのカジュアルな感じで休みの日に英語を教えているという、何とも世話好きの一面がある。そして、いつも穏やかで人の悪口を言わない人格者だ。しかも褒め上手!
 そんなことより「え、英語を勉強してるの?」という皆さんの驚きの顔が目に浮かぶ。いや、そうなんです。一応2015年くらいから教えてもらっているから、かれこれ4、5年学んでいることになる。この程度でやっていると言うのも恥ずかしいだけなので、今まであまり言ってこなかったのです。しゃべれるようになったわけでもなく、一人で海外に行けるレベルには程遠いし、ただ、細く長く続けているだけ。最初こそ、もっと話せるようになりたい、とかちゃんと聞き取れるようになりたい、とか思っていたけれど、最近の私はこのベンゾーさんに話を聞いてもらうためだけに、月2回レッスンの約束をしている。

 このベンゾーさんとの出会いは、学生時代にまで遡る。当時付き合っていた彼氏の英語の先生だった。彼はベンゾーさんと本当に仲が良くて、実の兄のように慕っていた。ひいては、私のことも色々相談していたらしい。なんで綾香が怒っているのかわからない、とか、何をプレゼントしたらいいか、とか。私もよく彼から話だけは聞いていて、とあるタイミングで彼から紹介されたのだが、警戒心の強い私はまったく打ち解けられず、そこからは挨拶するくらいの関係性で何年間か過ごした(後にベンゾーさんが言うには、当時の綾香ちゃんがこんなにオープンマインドになるとは想像できなかったらしい)。

 その後、私はテレビ朝日に入社し『ミュージックステーション』を担当することになった。ここで、絶対に使うはずないとタカをくくっていた英語を使う場面が登場するという現実を知ることになる。というのも、しばしばMステには超大物外タレが来るのだ…。私が初めてMステを担当した回にはKISSの皆さんが来た。そのあともジャスティン・ビーバー、レディー・ガガ、ケイティ・ペリー、ブルーノ・マーズ。ほかにも、何でこんな大物が来るんだろう?というくらい、沢山の海外アーティストの方とお会いする機会があった。通訳さん全て訳してくれるオンエア上はまだ良かった。困るのは、リハーサルのとき。頼みの綱の通訳さんはスタッフと動きの確認とか台本の打合せで大忙しで駆け回り、アーティストの方と私だけポツンと座っているなんてことが、ときたま発生する。そうすると、皆さん優しいから話しかけてくれるのだ!「昨日はロボットレストランに行ったんだ」とか、「日本のお寿司が世界一だよ」とか。私も何とかしてコミュニケーションを図りたいのだが、いかんせん英語力がついてこない。これは日本の恥だ!せめて会話でおもてなししなければ!と思い立ち、あのベンゾーさんに連絡をし、レッスンをしてもらうことになった。

 ベンゾーさんとのレッスンはいつも「最近どう?」から始まる。たどたどしい英語で、会わない間に起きたことを話す。仕事のことももちろん話すし、プライベートのことも話す。言語が変わると不思議なもので、日本語だとやんわりオブラートに包んで言ってしまいそうなことも、直接的になる。心の中のモヤモヤした感情がどんな言葉に当てはまるのか考える動作がひとつ生まれる。日本語だったら、何だかなあ、で分かってもらえるニュアンスも、伝えるには単語を見つけないといけない。ショックだったのか、呆れたのか、はたまたイライラしたのか。少ない単語を駆使して伝えようとするから不自由さはある分、そこにはいつも丸め込んでしまうような感情が浮き彫りになってくる。ああ、私こんな風に思っていたんだなあ、と改めて振り返ることも。
 あまり人に言いたくないことも吐き出してみると、少しすっきりする。悩みはもちろん、こうしてみたい、とかちょっと口に出すには恥ずかしい願いも。聞き手はベンゾーさんだ。色んなことにもがいている私をたしなめるでもなく、諭すでもなく、最後まで話しを聞いて「いつも僕は綾香ちゃんの味方だ」と言ってくれる。日本語だとそんなこと言われたらびっくりしちゃうけど、英語だからすんなりと受け入れられる。私のメンタルヘルスにおいて欠かせない時間。だからレッスンをした後は頭を使ったぞ!という充実感よりも、何だか心がさっぱり落ち着いているような妙な爽快感がある。貴重な時間をいつもありがとうございます。
 ちなみに、この彼が光のベンゾーさんだとしたら、もうひとり私には影のベンゾーさん的存在がいまして(本当に恵まれている!)、これはどこかで既に言っているあの人、なのだけれど。彼に関してはまた長くなるので、後日書きたいと思います。
 

2019-09-25 02.07.48 1
photo:moron_non
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