神田愛花さん×銀座、ドライブ旅行など新連載まとめ12選|ひとりで見るべき映画、子連れカフェほか
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寺社につき喫茶。絵になる京都ご多幸散歩 Vol.6 喫茶編 パンとコーヒーの芳醇な香り漂う、クラシカルな空間〈salon de 1904〉

TRAVEL 2024.06.19

独特の吸引力に惹きつけられ何度でも足を運びたくなる。そんな街といえば、やっぱり京都。飽きない点も魅力だけど、知られざる美しい心の保養地がこの街にはまだまだあるんです。知っているとちょっと“粋”な神社仏閣、そしてその道すがらに出合った“秘密にしたい”素敵な喫茶店、教えちゃいます。案内人は寺社を愛する京都在住のモデル・本山順子さん。今回訪れたのは、いけばな発祥の地としても知られる、聖徳太子創建の寺〈六角堂〉と、京都府庁・旧本館内にひっそり佇む喫茶室〈salon de 1904〉。後編では〈salon de 1904〉で過ごすひとときをお届けします。

喫茶空間を優美に彩る、レトロな建築が素敵。

陽の光が眩しさを増し、二十四節気(にじゅうしせっき)という太陽の暦ではあらゆる生命が天地に満ち始める「小満(しょうまん)」を迎えました。八十八夜も過ぎ、すっかり夏を予感するような日差しが眩しい京都。
京都御所の程近く、平安時代から茶釜などの鋳物職人が住む釜座が集まっていた「釜座通」(かまんざどおり)から青く茂った欅の並木道の向こうに、意匠を凝らした西洋建築が見えてきます。京都府庁・旧本館は明治37年(1904年)に建てられた創建時の姿を保つ日本最古の官公庁の建物です。

京都府庁・旧本館 salon de 1904
京都府庁・旧本館 salon de 1904
京都府庁・旧本館 salon de 1904 本山順子

街を歩いていると不意にレトロな近代建築と出合うのも京都の魅力のひとつ。「建築の素晴らしさを愛でながら喫茶を楽しめたらどんなに素敵だろうか」という願いを叶えたのが、2023年7月にオープンした〈salon de 1904〉です。”1904”は建物の竣工年にちなんで名付けられたもの。

salon de 1904
salon de 1904
salon de 1904

少しずつ印象が違う三つの部屋からなる広々とした空間。一つ一つ大切に育てられていることが伺える観葉植物が各部屋に配置してあり、みずみずしい緑に深紅の絨毯が部屋の彩度をさらに引き上げます。
一番奥の部屋の壁には京都で創業半世紀を経た〈前田珈琲〉のロゴが空間を見渡すように飾られ、空間がグッとしまった印象に。

本山順子 salon de 1904

歴史ある白壁には数々の現代美術がかけられており、さながら美術館のよう。
京都のお友達の作品も店内で不意に出合えて嬉しくなりました。キャプションもしっかりと添えられており、社長・前田剛さんがこだわりを持って作品を選ばれていることが伝わってきます。

アンティークな調度品を愛でながらいただく、最高の一杯。

店内にコーヒーとパンの焼けるいい香りが漂い、その香りに誘われて「1904 スペシャルモーニングセット」をお願いしました。

salon de 1904

自家焙煎で創業当時から愛され続けてるスペシャルブレンド珈琲「龍之助」は目にも鮮やかな清水焼で提供され、明治時代の和洋折衷な空間にピッタリとマッチ。香り高いコーヒーも相まって、気持ちもより華やいでいきます。

salon de 1904

ショーケースや店内に飾られている調度品にもかなりのこだわりを感じます。キャビネットに飾られていた気になるコーヒーカップを店員さんに尋ねると「オキュパイドジャパン」のものだと教えていただきました。

MADE IN OCCUPIED JAPAN」とは日本がGHQ占領下にあった7年間の間に作られた海外への輸出品です。なので国内に残っているものはごく僅か。磁器を表の図柄が透けて見える程薄く作るのは至難の業。その上、その薄さを操って絵柄を浮き上がらせるとは驚きです。とんでもない精巧な技術日本人の心意気がこのコーヒーカップに詰め込まれており、職人の想いまで伝わってきます。

salon de 1904 コーヒーカップ
salon de 1904 コーヒーカップ

店内を見渡すとキャビネットや机、椅子に不思議なシールを見つけることができます。なんと京都府庁本館時代に実際に使われ、倉庫に眠っていたものを現在も大事に使用されているのだそう。
激動の明治時代に思いを馳せ、不可逆な時間と共に過ごす優雅なひとときがここにはありました。

salon de 1904
salon de 1904

喫茶の後は館内を散策。アーチの連なる廊下、ルネサンス様式の中に神社仏閣で見られるような細やかな宮大工の気配りや、綿密な彫刻を見つけることができます。まるで工芸品の中を歩いているような優美さです。

京都府庁・旧本館 salon de 1904 本山順子

設計は京都府技師・松室重光。〈松尾大社〉の摂社である〈月詠神社〉の神官を代々勤めた家に生まれ、ネオ・ルネサンス様式の設計を得意とする一方、京都の社寺建築の修復や保存にも実績を残しました。

京都府庁・旧本館 salon de 1904 本山順子

「釜座通」のこの場所で、建物を愛で、植物や美術を眺め、食事をいただき、器を拝見し、コーヒーを味わう。コーヒーを通して日本の文化をしっかりと伝え・残していこうという姿勢は、どこか“茶の湯”にも通じる“もてなしの心”を感じたのでした。
カフェに人が集まり、想いを伝え、新たな文化が紡がれていく。お茶席へお伺いした後のような、一日中余韻が満ちる素晴らしい朝の一杯をいただきました。

京都府庁・旧本館 salon de 1904 本山順子

〈salon de 1904〉

salon de 1904

住所:京都府京都市上京区下立売通新町西入薮之内町 京都府庁旧本館内 | 地図
TEL:075-414-1444
営業時間:8:00~17:00
定休日:日曜
Instagram:@maeda_coffee

text_Junko Motoyama photo_Haruka Kuwana

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