くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #9 中村家の三陸海宝漬 TRAVEL 2023.12.20

岩手県盛岡市在住の作家のくどうれいんさんが、プライベートで友人を案内したい盛岡のお気に入りスポットと、手土産を交互に紹介します。

家に帰ってもしこの箱があったら、ガッツポーズして聞くだろう。
「やったあ海宝漬じゃん!これ、だれから?」
〈中村家〉の海宝漬と聞けば、岩手県民はみな「あら、いいものをいただいて」と言うだろう。いただきものとしてはリッチなもので、だからこそうれしい。お祝いとしていただけば(ああ、わたしはとてもめでたいことをしたのだなあ)と思う。わたしが幼いころから、岩手のうれしい贈り物の一つであるように思う。それもそのはず、〈中村家〉の海宝漬は40年以上にわたり愛されているらしい。

海宝漬とは松前漬のように甘じょっぱく味付けされたとろとろのめかぶにいくらがあしらわれ、さらにそこにあわびやほたてやうにという主役が鎮座している商品だ。あわびにするか、ほたてにするか……誰かに送るときいつも迷う。味付けはもう完璧に済んでいるから、解凍するだけでよい。これを、ご飯にかけたり、お蕎麦やお豆腐にかけたり、そのままちびちびとつまんでお酒のあてにしたりする。

元々は岩手県釜石の海鮮料理店で愛されていたメニューだったものが、持ち帰って家族にも食べさせたい、贈答品として大切な方に送りたいという声が増えて商品化されたとのこと。店主からのご挨拶では“めかぶは三陸の海そのもの、いくらは朝日に照らされキラキラと輝く水面、あわびは水面に浮かぶ小舟…そんな三陸海岸の風景を一つの器の中に表現したのが、三陸海宝漬です。商品化に合わせ、三陸の三つの宝、という意味を込めた「三陸海宝漬」と命名しました。”
思わず拍手をしてしまった。海の宝を漬けている。なんてすばらしいネーミングだろう。

年末ですから、贅沢をしてもいいでしょう。

海宝漬

〈中村家〉の「三陸海宝漬」と、気になっていた「一本数の子松前漬」をいただきます。
冷蔵庫の中で一晩かけて解凍して、いざ、開封。

三陸海宝漬 一本数の子松前漬

あ~!見たまえ、これが三陸の宝石箱だ。
容器に目いっぱい、きらきらのめかぶといくら。そしてあわびが横たわっている。
数の子もきれいな黄色をしていてため息が出る。

ご飯はいつもより一合多く炊いてある。完璧だ。

三陸海宝漬

うるうると光る海宝漬を大きなスプーンで掬(すく)う。「おおー」と声が出る。あわびが大きすぎてスプーンを持つ手がふるふるする。

三陸海宝漬

あらまあ、これはこれは。ご飯にのせた後いろんな角度から眺めてしまう。どこから見つめてもきらきらしている。いただきます。

ねばりけのあるめかぶにはうまさがこれでもかと凝縮されていて、ご飯のひと粒ひと粒にまとわりつく。ぷち、と音がすればそれはいくらのはじけた音で、味の染みた濃厚ないくらのおいしさが押し寄せて来る。これだけでも贅沢でご飯がどんどん進むっていうのに!

三陸海宝漬

このあわび!分厚い。ひとくち噛むと笑ってしまうほど柔らかく煮あげられている。口いっぱいにあわびのうまみが広がる。おいしい。なんておいしいんだ……慌てて炊飯器のところへ行ってご飯を足す。味が濃厚なのであっという間にご飯がなくなってしまう。

年末年始はお蕎麦やお雑煮にトッピングするのもおすすめらしい。お豆腐の上にのせたり、パスタにまぜたりする人もいるらしいのだけれど、炊き立て熱々のご飯と一緒にいただくのがあまりにもおいしすぎて、わたしはまだ他の食べ方を試したことがない。

数の子 松前漬
数の子 松前漬

一本数の子松前漬もご飯にのせて。
立派な数の子は一本一本がとても美しい。見ているだけでおめでたい気分になる。
みっしりと詰まった数の子のこりこりぽりぽりとした歯ざわり、なんて幸せなんでしょう。数の子のしょっぱすぎたり甘すぎたりする味付けが時々苦手だったりするのだけれど、この松前漬の味付けは甘さとしょっぱさのバランスが本当に絶妙でおいしい。いかと人参も噛むほどおいしく、どうしたって笑顔になってしまう。ご飯おかわり、いや、ここは日本酒でもいいかもしれない。

普段の暮らしで(もっとがんばっている人はたくさんいるなあ)とか(わたしはぜんぜんだめだなあ)と思う日があっても、こういう贅沢をすると「よくやった!」と大きな声で自分を褒めてあげたくなる。

今年も一年、あなたはよくがんばりました!自分へのご褒美や、あなたと同じくらいがんばり屋さんのあの人に。海の宝物をぎゅっと詰め込んできらきらひかる海宝漬をどうぞ。

〈中村家〉の三陸海宝漬は、盛岡市内では盛岡駅構内、川徳、イオン盛岡、イオン盛岡南等と、オンラインでも購入できる。

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