ハナコと考えるSDGs 【〈HAHA PROJECT〉代表】林理永さんのストーリー/「母たちの”やりたいこと”が集まる、未来型の子育てコミュニティ。」
最近よく耳にするようになったSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉。「持続可能な開発目標」と訳され、2030年までに“誰一人取り残さない”よりよい世界を目指して17の国際目標が掲げられています。それは政府や企業の頑張りだけでなく、私たちがもっと意識して毎日を“変えて”いくための課題でもあるのです。そこでハナコは、SDGsについて読者のみなさんと考える特集を企画しました。今回は“わたしらしく働く”ことをあきらめない、〈HAHA PROJECT〉代表/林理永さんのストーリーを紹介します。
一人では頑張れない。みんなで、が解決すること。
育児と仕事のバランス。それは現代を生きる女性にとって、とても大きなテーマだ。〈ハハプロジェクト〉代表の林理永さんは、出産後にその難しさに気付き、声を上げた。「フリーでライターの仕事をしていたので、すぐに復帰するつもりでした。でも現実は違いました」平日は夫の帰りも遅く、近くに頼れる親族もいない。初めて子育てをする日々に余裕はなかった。「娘が生まれて半年経った頃、私自身の人生はこれからどうなるんだろう?と考える瞬間があったんです。必死に走っていたら、全く知らない場所に来てしまった。もちろん娘は、世界一愛しいんですけどね」
そこで、自身のインスタグラムに素直な気持ちを投稿した。「今感じている違和感にフタをしてはいけないと直感したんです。今は、産後の女性が仕事復帰するときの選択肢が少なすぎる。娘と一緒にいたい、社会に関わりたい、自分の好きなことをしたい。全て確実に自分のなかにある気持ち。本当に何かを捨てなければいけないのか。そんな疑問がありました」仕事の距離を近くすると、そこに漂投稿には多くの反響があった「〝選択肢がないなら自分でつくる!〞と豪語してしまって(笑)。そしたら、投稿を見て、同じ思いを持った仲間が集まってくれたんです」
現在、プロジェクトメンバーは全国に約名。母たちだけでなく、教育者や社会福祉士、助産師などの専門家も参加し、実際にみんなで一緒に子どもたちを育てながら仕事をする環境をつくろうとしている。「特に女性の心や体にはリズムがあって、それを包み込む社会システムが必要だと思ったんです。一人で頑張るには限界がある。実際、子どもがいると周りの人たちのありがたさを実感します。信頼できる人たちと仕事も育児もシェアできることが、こんなにも幸せだなんて、思ってもみませんでした。今はチーム・システムの実験中で、商品開発やイベント企画など、メンバー各個人のやりたいことを実現していっています」活動開始から約年。改めて見えてきた課題もある。
「育児や女性の問題に向き合うには、当事者だけでなく社会全体の関わりが必要だと分かったんです。生活と仕事の距離を近くすると、そこに漂う空気感や信頼関係が重要になる。子どもと大人がどちらも心地よいことも大切。それらをどうデザインするのか?壮大ですね(笑)。でもそんなコミュニティが、今後の社会に必要だと確信しています」子どもたちは未来そのもの。育児「〝選択肢がないなら自分でつくる!〞と豪語してしまって(笑)。そしたら、投稿を見て、同じ思いを持や生活の悩みを主に女性が背負ってきた時代を変え、次なる未来に向かうのは、今なのかもしれない。
【わたしが影響を受けたもの】『いのちを呼びさますものーひとのこころとからだー』 稲葉俊郎
出産後、その神秘的な感覚を忘れないうちに、生命を巡る壮大なテーマの本を読みあさっていました。これはその中でも、装丁から綴られる言葉まで全てが美しい一冊。「こころとからだ」について、深い視点を与えてくれます。(アノニマ・スタジオ/1,600円)
Profile/林理永(はやし・りえ)
1988年、北海道生まれ。フリーランスで雑誌やWebの編集、ライター、イベント企画等をしながら、2017年に第一子を出産。その後、2018年にプロジェクトを立ち上げ、子連れ仕事の実験中。instagram:@riehayashi
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について。
昨年、国際労働機関(ILO)が発表した日本における女性の管理職比率は、全世界平均27.1%に対してわずか12%。この国は女性にとってまだまだ働きにくい環境だといえます。今後、世界中が一丸となって、女性の力をもっと引き出せるような取り組みが進められていく中、私たちも自分の働き方についてポジティブに見つめ直す良い機会なのではないでしょうか。
Hanakoは“わたしらしく働く”ことをあきらめない、女性のストーリーを紹介します。
(Hanako1184号掲載/illustration:Nodoka Miyashita photo:Takehiro Goto , MEGUMI, Yoshiki Okamoto text:Makoto Tozukai, Rie Hayashi, Narumi Sasaki, Rio Hirai edit:Rio Hirai)