Hanakoの連載でもおなじみ! いま気になる人!フードエッセイスト・平野紗季子さんってどんな人? LEARN 2018.06.30

本誌連載でもおなじみのフードエッセイスト・平野紗季子さん。イベントを企画したりお菓子を発売したり…いま気になる彼女の仕事観とは?Hanako創刊30周年特別企画『働くことと、生きること。46人の、転機と決断。』「「食べる」と生きる人。」よりお届けします。

INDEX

小学生から続けた食日記は、いつしかブログへ。

DSC7283atari

食事にまつわるあれやこれやを記録し始めたのは、小学生のとき。小学生のときに書いていた「食日記」には、今の平野さんの文章にも通じる独特の視点と鋭いコメントが綴られている。

DSC7288atari

ずっと集めている店のオリジナルマッチ。このほかにショップカードのコレクションもある。ノートにぎっしり書き連ねていた「食日記」は、いつしかブログに形を変えた。

DSC7259atari1

「大学時代から、『食が好きな気持ちだけは誰にも負けない』と思っていました。多くはないであろう、その〝食が好きなことを表現する人〞の枠をとられたくないと思っていたので結構ガツガツしていたと思います。自分で編集者に連絡して、『私のブログ見てください』ってお願いしたりしていました」

ブログが話題になり雑誌に寄稿したり、誌面に登場する機会も増えた。著書の出版の話も進み、執筆活動にもいそしんでいたという。
「でも当時、このままこの調子で食べていけるなんて確証は全くなかったんです。だから、会社への就職を選んだのも自然な流れでした」

初の著書『生まれた時からアルデンテ』が出版された春、広告代理店に入社する。会社の了承を得て個人の仕事も継続しながら、広告代理店の新人コピーライターとして社会の荒波に揉まれる日々が続いた。

DSC7257atari

「『コピー100本ノック!』みたいなことをやっていたのですが、しばらくしたら食に関するプロジェクトを任せてもらうようになり『発酵醸造未来フォーラム』というプロジェクトの企画運営など、食の仕事をやらせてもらえるようになったんです。個人に依頼される仕事7割、会社からの仕事3割くらいのバランスで続けてきました」

5年勤めた広告代理店だが今秋ついに退社し、これからはフリーランスとして活動していく予定だ。
「食が好きな人」は大勢いるなかで、自身の強みについてどう思っているのか聞いてみると、「私、好きなことだと自分を追い込めるんです」と笑う。

〝やりたいこと.pdf〞を、自分で提案する。

DSC7260atari

「〝やりたいこと.pdf〞という資料を作ってて、チャンスがあればいつでもプレゼンします。私はやりたいことを叶えたいだけですが、人からみると大変な方に突き進んでいるみたい」

連載の仕事など、自ら企画書を送ることも多いそうだ。
「そんなに都合よく自分がやりたい仕事を依頼されることなんてないですし、今までやってきたことの真似ばかりでは消費されてしまう、という危機感もある。自分の居場所は自分で作らないと、と思っているから自分から提案しに行きます」

平野さんの〝やりたいこと.pdf〞は今も増え続けている。なかにはもちろん、叶えられなかったことも。
「学生時代、ある高級レストランで皿洗いのバイトをしたのですが、色んな都合で長く続けられなかった。環境も体験もすごく面白かったので、もっとやりたかったな、と悔しいんです」

一方リスト入りから2年かけて実現したものも。自ら企画したお菓子「(NO)RAISIN SANDWICH」の発売だ。次の挑戦はお菓子屋さん?

DSC7241atari

「伝えるのも作るのもできるようになるのがこれからの目標ですね。料理は全然得意じゃないから料理人へのリスペクトはずっと変わらないのですが、アイデアを出すことはできるし、幸いそれを形にしてくれる素晴らしい作り手も周りにいる状況なので、色々やってみたいです」

次々と自らの手でアイデアを実現していくさまは、儚げなビジュアルからは想像がつかないほど力強い。
「〝若いときしかできない〞ことはないと思うけれど、10歳でも100歳でもその時々、〝今しかできない〞ことはある。それはきっと〝今やりたい〞と思うことだから、その願望を真摯に叶えたい。それだけが唯一、誰のものでもない自分の人生を生きる方法だと思うんです」

平野紗季子/フードエッセイスト。福岡県生まれ。著書に『生まれた時からアルデンテ』(凡社)がある。本誌で「私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。」を毎号連載中。
www.instagram.com/sakikohirano

Hanako『46人の、転機と決断。』特集では、働く憧れの女性を多数ご紹介しています。

HANAKO1159_001

(Hanako1159号掲載/photo : Tomo Ishiwatari text : Rio Hirai)

Videos

Pick Up