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2018.10.13

わざわざ旅行に行かなくても… 旅気分が味わえる本7選!小説に漫画、 絵本、写真集…本読みのプロおすすめは?

小説に漫画、 絵本、写真集…本読みのプロがおすすめする、気分転換にぴったりな旅気分を味わえる本とは?瀧井朝世さん、青野賢一さん、豊嵜由美さん、トミヤマユキコさんをナビゲーターにお迎えしてお届け!
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1.クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』

人知では解明できない不思議、対抗することも滅ぼすこともできない生物、狂気と死と美が横溢する《夢幻諸島》。島にまつわる幾多の記録の物語。(古沢嘉通・訳/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ/1,700円)

交戦状態にある諸国で構成される《北大陸》と、その主戦場となっている不毛の地《南大陸》の間にあるミッドウェー海。そこに点在する無数の島々に関する旅行者向けガイドブックという体裁の物語。昆虫ホラー、ラブロマンス、ミステリー、SF、手記、伝記、エッセイ、さまざまなジャンルの読み心地が愉しめ、短篇と長篇の妙味が共に味わえるお得感いっぱいの一作だ。(豊嵜由美)

2.ミハル・アイヴァス『黄金時代』

南の海に浮かぶ島。かつての植民地支配の影響は限りなく薄められ、島独自の歴史を重ねている。そこには、島民によって無限に加筆されていく一冊の書物があった。(阿部賢一・訳/河出書房新社/2,700円)

とある小さな島に滞在したことがある《私》が、友人に促されて島で見聞したことを書き記すことになる。流れ落ちる滝のなかに作られた部屋で生活する人々。際限なく変容しつづける名前。匂い時計によって知らされる時間。島に一冊しか存在せず、島民たちの手によって加筆修正されながら回覧される書物。此処とはちがう何処かに連れ去ってくれる全58章になっている。(豊嵜由美)

3.近藤聡乃『ニューヨークで考え中』

ニューヨークに拠点を置いて活動を続ける作者が、会話、挨拶、地下鉄のカーブにレストランのメニューまで、等身大の日常を綴るエッセイ漫画。ウェブマガジン「あき地」で連載中。(亜紀書房/1,000円)

近藤聡乃先生の生活の一部を切り取って、「はいどうぞ~」と差し出されているかのような、親しみやすさと生々しさがたまらない一冊。中心部から少し離れた所に住んでいるためか、のんびりマイペースな街の様子を知れるのも◎ 本書が気に入った人は、NYから帰国したばかりのマンガ家が主人公の『A子さんの恋人』を副読本にすると、楽しさ倍増です!(トミヤマユキコ)

4.シャルル・フレジェ『YOKAI NO SHIMA 日本の祝祭ー万物に宿る神々の仮装』

フランス人写真家が秋田から沖縄まで全国58カ所を巡った。目的は、各地に現れる《YOKAI》の写真を撮ること。祝祭のための装いの美しさと、同居する不気味さに圧倒される写真集。(青幻舎/3,800円)

本来的な祭りとは、神々を手厚くお迎えして共同体の願い事──五穀豊穣や村内安全を祈るものであった。日本各地にはそうした古くからの祭りが現存しており、これらに招かれる神の姿をポートレートとして切り取ったのが本作。ナマハゲ、天狗などのポピュラーなものから、宮古島のパーントゥのような独特なものまで、神々の姿を見るにつけ実物を拝みたくなるはずだ。(青野賢一)

5.金沢百枝『ロマネスク美術革命』

中世ヨーロッパに花ひらき、芸術を革新させた“ロマネスク”。イギリス、ノルウェー、スペインなど欧州各地を旅して調査を続ける現役の研究者が送る、ヨーロッパ美術再発見の書。(新潮選書/1,400円)

ヨーロッパの中世美術を鑑賞する旅に誘ってくれる一冊。10世紀末から12世紀に広がり、欧州初の共通様式とされるロマネスク美術についての入門書的な一冊。各地の教会やタペストリーなどを図版つきで紹介。素朴な味わいがあり、時にヘタウマに見える彫刻や石造にも、人々の表現の工夫や技巧が凝らされていることが分かり、思わず感服。サントリー学芸賞受賞作。(瀧井朝世)

6.森 薫『乙嫁語り』

カスピ海周辺の地方都市。山を越えてお嫁さんがやってきた。華やかな装飾品を身につけた美しい乙嫁は20歳、迎える花婿は12歳。シルクロードの生活に触れる美しい物語。(KADOKAWA/既刊9 巻 各620円)

19世紀後半の中央アジアには、厳しい自然をものともせず、溌剌と生きる《乙嫁》たちがいた、という物語。フィクションなのに超リアルなのは、森薫先生が文献を徹底的に調べて描く方だから。ダイナミックな自然描写があるかと思えば、溜息が出るほど緻密な民族衣装の描き込みもあって、見ているだけで本当にうっとり。読めば必ず脳内
旅行に誘われます。(トミヤマユキコ)

7.ウィリアム・グリル『シャクルトンの大漂流』

《南極探検の英雄時代》の最後、1914年に南極大陸横断を目指したシャクルトンと27人の乗組員。歴史に残る探検の全貌を、色鉛筆で描かれた繊細な絵で見る冒険譚。(千葉茂樹・訳/岩波書店/2,000円)

絵本界の期待の新星による、実話をベースにした大型絵本。とにかく絵が美しい! とあるページは細かい描写で船員たちの様子を丁寧に描き込み、とあるページは見開きすべてを使って海の迫力を描き出す。自然の中での人間はもちろん船のちっぽけさを感じながら、苦境も懸命に乗り切っていく彼らの精神の強さ、そしてユーモアや芸術を忘れない心に感銘を受ける。(瀧井朝世)

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瀧井朝世(たきい・あさよ)/ライター。TBS系『王様のブランチ』本コーナーのブレーンを務める。WEB本の雑誌「作家の読書道」など連載のほか、作家インタビューや書評の寄稿も多い。

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青野賢一(あおの・けんいち)/〈ビームス創造研究所〉クリエイティブディレクターとして、主に社外のクライアントワークを行う。『ミセス』『CREA』などの女性誌でも連載を持つ。

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豊嵜由美(とよざき・ゆみ)/書評家。文芸誌から女性誌まで多数の連載を持つ。著書に『ニッポンの書評』『まるでダメ男じゃん!「トホホ男子」で読む、百年ちょっとの名作23選』など。

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トミヤマユキコ(とみやま・ゆきこ)/ライター、研究者。少女漫画、文芸、サブカルにまつわる執筆や連載を抱える。著書に『パンケーキ・ノート─ おいしいパンケーキ案内100』がある。

(Hanako1127号掲載/text:Hikari Torisawa)

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