いつもの料理がもっとおいしくなる! プロ伝授!おうちで日本料理の基本のキ。「出汁の引き方」と「小豆の餡作り」編 LEARN 2020.06.09

自分で引いた出しや煮た小豆はやっぱり格別。そこで今回はそれぞれの分野のプロから、おうちでできる方法を教えてもらいました。ファッションモデルから執筆活動まで、分野を超えて軽やかに行き来する小谷実由さんが体験しました。いつもの料理がもっとおいしくなるはずです。

1.だしの引ける女になりたい。

以前、デパートの地下で削られていない鰹節を見かけた際、その圧倒的な存在感に、神々しさを感じたと話す小谷さん。今回は、2019年で創業320周年の老舗〈にんべん〉の木村絵里子さんを先生に、鰹節の製造過程から伺います。

step1. 「鰹節ができるまで」を学ぼう。
骨抜きやカビ付けなどの工程を経て、カチカチの本節に仕上がるまでは6ヶ月。身近だった鰹節が、思っていた以上に手間暇かけてつくられていたことを知り、驚いた様子。

step2. 自分の手で削ってみよう。
次は、削り器を使っての鰹節削りに挑戦。削り器を使って鰹節を削るときは、尾側を斜め上に向けるのがコツなんだとか。力を入れやすく、鰹節が小さくなっても握りやすくなるそうです。小谷さんの削り節は、木村さんのものと比べると、少し粉っぽい仕上がりに。ひとしきり削り終わった後は、「明日、筋肉痛だな。」とポツリ。苦戦した鰹節削りから一転、削った後の断面が気になって仕方ない様子。鉱物のように美しく輝く断面を、指先で撫でたり、香りを嗅いだり。

step3. かつお節でだしを引いてみよう。
いよいよ本題へ。一番だしと二番だしを引き比べてみる。吸い物、みそ汁や茶碗蒸し、そばつゆなどにぴったりな一番だし。鍋いっぱいに投入されたかつお節の量に思わず目を丸くする小谷さん。1〜2分おいていると、たちまちキッチンにかつお節だしの芳醇な香りが立ち込める。一番だしは、豊かな味と香り、そして濁りのない琥珀色が特徴。引いただしをこす際は、えぐみが出ないように絞らないのがポイントだそう。

一番だしで使っただしがらに、今回はさらに「追いがつお」として新たなかつお節を追加。3~5分間煮出してこした後、二番だしではここで軽く絞るのが、うま味を引き出すコツ。だしを引くことに対して「手間がかかる」イメージが強かったという小谷さん。思いのほか簡単に、2種類の鰹だしを引き分けることができ、ちょっと興奮気味。

step4. 一番だしと二番だしを、比べてみよう。
最後は、先ほど自分の手で取り分けた2種類のかつお節だしを比較してみる。味や香りの違いはいかに。

木村「一番だしと二番だし、味や香りの違いはいかがでしょう?」
小谷「一番だしは香りがしっかりしてるけど、味が少し薄いかも。二番だしはその逆で、味がすごいです。」
木村「はい、かつお節だしはとても繊細なので、うま味はゆっくり追いかけてきます。一番だしはお吸い物にぴったりで、二番だしは煮物などより味付けを伴う料理で活躍しますね。」

今回、教えてくれたのは…木村絵里子/〈にんべん〉経営企画部 広報宣伝グループ係長の木村絵里子さん。小谷さんが体験した鰹節削りは、一般のお客様も〈にんべん 日本橋本店〉にて、ご体験いただけます。詳しくは、店内の従業員までお声がけください。

〈にんべん 日本橋本店〉
■東京都中央区日本橋室町2-2-1 COREDO室町1 1階
■03-3241-0968
■10:00〜20:00

2.小豆を煮て餡をつくろう。

ひとくちに餡と言っても、こし餡につぶ餡、白餡など種類はさまざま。今回は、老舗の和菓子店〈とらや〉の御殿場工場で餡づくりを担当している鈴木康哲さんを先生に、餡づくりのいろはから教わった。

鈴木「〈とらや〉ではお菓子の種類に合わせ、材料や製法を変えた餡づくりを行っています。ですので、同じ餡でも”羊羹用”や”最中用”など、たくさんの種類が存在するわけですね。うちの菓子は「少し甘く、少し硬く、後味良く」がモットーですね。ですので、餡自体も他店様と比べると「より甘い」と感じられるかもしれませんが、後味がすっきりしているのが特徴です。今回は家庭でできる餡づくりということですので、弊社の餡づくりとは異なりますが、できるだけこれに近い味を再現できるように、いくつかステップを踏まえながらご説明していきますね。」

step1.小豆のえぐみを取り除く「渋切り」。
まずは、小豆のえぐみや渋みを除くための「渋切り」という作業から。このひと手間を加えることで、この後の煮えも格段によくなるんだとか。

鈴木「はじめに小豆をさっと洗います。粒の表面の白い部分を“へそ”と呼んでいるのですが、小豆はこの部分からしか水を吸わないんですね。水洗いする時も、皮の表面を傷つけないように、やさしく洗うのがポイントです。ちなみに前日から水に浸けておくと、へそから水を吸水して煮えやすくなり、時短も可能です。この後の豆の煮え立ちがぐんと良くなるんですよ。」

step2.芯がなくなるまで煮続ける。
いよいよここから餡づくりの肝とも言える工程。1時間ほどコトコトと煮ていきます。20分後。木べらを通すと、まだコツコツと硬い感触が。40分後。水面上の白いアクと、鍋の端の方には黒いアクが。 このアクも今回は捨てない。60分後。水分を吸って小豆が膨張。表面のシワが消えツヤツヤに。

指で押すと、皮と中身が一緒に潰れるくらいが目安。
指で押すと、皮と中身が一緒に潰れるくらいが目安。

step3.指で潰してチェックする、小豆の”煮上がり具合”。
いよいよ終盤に。次に注意すべきは、ずばり小豆の”煮上がり具合”。鈴木さんは、火にかける時間等は決めておらず、なんと指でつまんだ時の潰れ具合で判断するという。

鈴木「ある程度、小豆にも火が通ってきたみたいですね。ここからは”煮えムラ”が出ないよう、煮加減を調整していく段階に入ります。”煮えムラ”は芯が残っていないか、中身まで柔らかくなっているかを確かめる工程です。すべての小豆の柔らかさを均等にしていくことが餡づくりにおいて、重要なポイントのひとつです。」

step4.餡を好みの硬さまで仕上げる「炊き上げ」。
煮詰めていくうちに水分が飛び、練り上げることで甘さも凝縮されていくという仕上げの段階。小谷さんは〈とらや〉のモットーでもある「少し甘く」「後味良く」な餡へと近付けることはできるのか。

小谷さんが研ぎ澄まされた感覚で練り上げた餡は、見事「少し甘く」「後味良く」な餡ができあがった。熱々の餡は、祖熱をとるために小分けにしてバットへ。ちなみに、炊きたてほやほやの餡より、一晩寝かせて味を馴染ませた餡の方が、おいしいんだとか。

今回、教えてくれたのは…鈴木康哲/〈とらや〉御殿場工場の鈴木康哲さん。〈とらや 赤坂店〉では、ガラス越しに菓子づくりの様子を見られる御用場もあります。※菓子づくりは早朝に始まるため、午後早い時間に終了してしまうことも。

〈とらや 赤坂店〉
■東京都港区赤坂4-9-22
■03-3408-4121
■8:30〜19:00(平日)8:30〜18:00(土日祝)

(photo : Hiromi Kurokawa , listener : Yuya Uemura)

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