人それぞれの愛する大銀座 建築好きは必見!【銀座】建築スポットをめぐるおすすめ散歩コース。
この店の後はあの道を通って次の店へ…、好きな街はお店選びだけでなく、巡る順番や道、風景など“歩く”楽しみもある。人それぞれの愛する大銀座とは?今回は3名の方に、銀座に行ったら見たい“建築スポット”コースを教えてもらいました。
【美術作家・岡美里さん】“住む彫刻”といいたくなる、銀座の風景をつくる建物巡り。
美大生だった頃、月に一度は銀座の好みのギャラリーを巡っていました。ただ、銀座は刺激的な街だから、色々見て歩き回っていると神経が高ぶってクタクタに。そこで、ほっと息のつける場所を求めるようになりました。私にとって落ち着ける場所とは、大切に使われている古い建造物や、人の暮らしが垣間見える小さな通り。「うん、ちゃんとある」と、ただ確認したくて、道を選んでしまいます。
1軒目〈京橋のたもと〉
「銀座を歩くと決めたら、京橋駅で下車。銀座の端にあるので、新橋を目指すと1丁目から8丁目までくまなく歩けます。京橋のたもとには人目を引く交番が。洋菓子のようなおいしそうな形の屋根をのせています。ここに立つと『さぁ銀座を歩くぞ』と思える、出発地点」
■東京都中央区銀座1-2-4
2軒目〈奥野ビル〉
「ロケ地として有名ですが、元々は一般的な古い雑居ビルでした。アナログ式のエレベーターや釉薬の美しいタイルなど、見どころは沢山ありましたが古いビルという風情。それがこのビルの魅力を理解するテナントに入れ替わるにつれ、雰囲気がどんどん洗練されていきました」
■東京都中央区銀座1-9-8
3軒目〈日本基督教団 銀座教会〉
「変化の激しい数寄屋橋交差点の近くで、明治23年から今に至るまで礼拝の場を守っている教会。コンクリートがむき出しの建物はモダン。立体的なステンドグラスはほかにない見どころ。いつも受け入れてくれる教会は、雑踏の街だからこそ余計かけがえのない存在だと感じます」
■東京都中央区銀座4-2-1
■03-3561-0236
■9:00〜17:00
Navigator…岡美里(おか・みさと)/美術作家、造形教室ネアンデール主宰。全国を巡り、横顔のポートレイトを制作。次回、展示オーダー会の予定は、名古屋市那古野小学校跡地にて。
【原太一さん】非日常を感じさせてくれる3軒で、リフレッシュを。
レストラン目的で行くことが多いのですが、せっかく来たならと自分の趣味のお店や建築を探していたらこの散歩コースに。最初に〈SOUNDCREATE〉で色々なスピーカーを見て、お腹が空いてくるタイミングで〈ESqUISSE〉でコース料理を。その後、酔いざましに散歩しながら〈中銀カプセルタワービル〉に向かって歩くのが気持ちいい。レストランできちんと昼食をとった後の酔いざましの散歩って最高です。
1軒目〈SOUND CREATE〉
「ギャラリーなどでしか見られないような貴重なスピーカーが普通に置いてあったり、音楽好きにはたまらないお店。沢山のスピーカーが雑然と置いてあるのですが、ものすごくこだわりの強いものや、高級なものだったりと驚きがあります」
■東京都中央区銀座2-3-5 三木ビル本館2・5F
■0120-628-166
■13:00〜18:00 月火休
2軒目〈ESqUISSE〉
「私が独立前に働いていたお店で当時シェフだったリオネルが現在シェフをしている、料理のインスピレーションや発見を得られる貴重なお店。シェフの探究心が感じられます」
■東京都中央区銀座5-4-6 ロイヤルクリスタル銀座 9F
■03-5537-5580
■12:00〜13:00LO、18:00〜20:30LO 無休
■37席/禁煙
3軒目〈中銀カプセルタワービル〉
「1972年に建てられた黒川紀章の建築。元々建築には興味があって、当時このようなデザインの建築があったということが刺激になる。時代を超えて今なお新鮮さを感じるデザイン。レストランからスタートして“酔いざまし散歩”の最終地点として大好きな場所です」
■東京都中央区銀座8-16-10 ※当ビル内は一般立ち入り禁止
Navigator…原太一(はら・たいち)/〈ミッシェル トロワグロ〉などで修業後、2015年代々木八幡に〈PATH〉、2019年白金台に〈LIKE〉をオープン。
【森岡督行さん】偉人や文豪が書く文字を巡り、銀座の歴史ある名店へ。
自分がバスガイドになって、銀座の街を小旗を片手に持ちながら案内するとしたら、文字というくくりで看板やのれんを見ていく。その連続に、また別の意味合いが街に浮かび上がってくると思ったことがこのコースに決めたきっかけです。歴史のあるお店は、偉人や文豪が書いていたりする場合があります。〈和光〉の鐘が鳴る時間にあわせて歩くと、より銀座らしさが出ます。日曜日なら銀座教会の鐘も鳴ります。
1軒目〈銀座木村家 ベーカリー〉
木村家の看板の文字は、幕末の幕臣・山岡鉄舟が書きました。木村家の場所は日本で最も地価の高いエリアですが、170円(税込)で小倉あんぱんを売っています。あんぱんを食べながら、山岡鉄舟の業績とともに、その凄さを考えてみてはどうでしょうか」
■東京都中央区銀座4-5-7
■03-3561-0091
■10:00〜20:00 無休
2軒目〈松屋銀座〉
「松屋銀座のエントランス付近の天井には、梵字が刻まれています。それを探しつつなぜ梵字があるのか、さまざま予想してみてはどうでしょうか。そのエントランスを確認するときっと驚くはずです。お守りのような意味があるのかな」
■東京都中央区銀座3-6-1
■03-3567-1211
■10:00〜20:00(日祝〜19:30)不定休
3軒目〈月光荘画材店〉
「月光荘の看板の文字は、与謝野晶子が書きました。創業103年。シンプルで飾り気のない書体が、誰の心にもフィットするだろうと思いました。およそ100年前に与謝野晶子が、この文字に託した想いを考えたくなりました」
■東京都中央区銀座8-7-2 永寿ビル1F・B1
■03-3572-5605
■11:00〜19:00 無休
Navigator…森岡督行(もりおか・よしゆき)/〈森岡書店〉代表。今年5月に伊藤昊(こう)写真集『GINZA TOKYO 1964』を出版した。資生堂『花椿』のWebページで「現代銀座考」を連載中。
(Hanako1189号掲載/photo:Wakana Baba, Tetsuya Ito, mitsugu text:Maki Kakimoto)