渡辺有子
渡辺有子

〈+CEL〉インタビュー第2回 (後編)
料理家・渡辺有子さんの記憶に残る、父とランドセル。 MAMA 2023.06.02

ランドセルの新ブランド〈+CEL〉と一緒に、親から子へ、そしてまたその子どもたちへ受け継ぎたいものについてさまざまな母たち、父たちに話を聞くインタビュー企画。第2回目に登場してくれたのは、洗練されたライフスタイルも人気の料理家の渡辺有子さん。前編では父親から受け継いだという1枚の絵について教えていただいた。後編では今、5歳の息子さんへ受け継いでいきたいものについて。そして、〈+CEL〉を通して、思い出したという父とランドセルの思い出を教えてくれた。

小山登美夫ギャラリーでの展示で出会ったという、大竹利絵子さんの木彫作品。
小山登美夫ギャラリーでの展示で出会ったという、大竹利絵子さんの木彫作品。

なにか、心が豊かになるものを手渡していきたい。

ーー今回、選んでいただいた息子さんへ受け継ぎたいものはなんでしょうか。

「彫刻家・大竹利絵子さんの木彫作品です。選んだ理由は、前回にお話した父から受け継いだ絵と同じで、心に響くものがいいなと思いました。今、家に飾ってあるものを、私が父に『これが欲しい』とお願いしたように、もし彼がほしいと言ってくれたら手渡していけたらと思いました。実生活で使う必要なものも、たぶんきっとなにか渡していくと思うんですけれど、でも生きていくためには必要がないかもしれないけれど、なにか心が豊かになるもの、そういうものが実は大切なんだよというのを伝えたいなと思っています。大竹利絵子さんの作品は、素木仕上げの温もりと凛とした強さがあり、私たち夫婦ともに素敵だと感じるもの。それを息子もいずれ気に入ってくれたらうれしいです」

——アートピースのような、ずっと変わらないよさのあるものは、有子さんのお父さんから有子さんへ。そしてまた息子さんへと受け継いでいけるというのもいいですね。

「そうですね。前回もお話した通り、うちの父はちょっとこだわりの強い人で。わたしが一人暮らしをはじめるとなったときにカツオ節の削り器とカツオ節1本を贈ってくれるような人だったんです。“ひとりで暮らしをはじめても、出汁は自分で削ってとりなさい”という教えだったと思うんですが……。それは、ありがたくもらったものの、たったの1回も使うことはなかったんです。新品同様で今も戸棚の奥にしまってあります。実用的なものだし、使えばいいのだけれど、忙しい日々の中で削ることってやっぱりないんですよね。そうやって、しまいこんで存在を忘れてしまうより、飾ってあることでいつもつながりを感じられるもののほうがいいなあ、とも思います」

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——なるほど。でも、カツオ節の削り器を娘に贈る父親というのもなかなか素敵です。そういった暮らしの基本にある考え方が有子さんの料理家としての基礎になっているのかもしれないですね。

「そうですね。家では父がカツオ節を削っていつも出汁をとっていましたから。その姿は記憶に残っています」

彼が自分の人生を歩いていけるまで、最大限の愛情を注ぎたい。

ーー家族の間にある、そういう日々の積み重ねが親子の関係を作っていくのでは、とも思います。前回、教えていただいたような「仕事をする姿勢」についてのお父様の言葉のように、有子さんから息子さんへ伝えていきたいと思っている考え方やどう生きるかについてのメッセージはありますか?

「うーん、そういうことは持たないようにしています。夫とも息子のことを日々、話していますがこうなってほしいよね、というのはないんです。息子について考えることはたくさんありますが、でも結局、大事なのは私たち夫婦がどれだけベストを尽くすことができるのか、ということだけ。責任を持って彼が自分で自分の人生を歩けるようになるまで、最大限の愛情を注ぎたい。それだけが私たち夫婦が親としてするべきことなんじゃないかな、と思います。もちろん、具体的になにか将来の悩みについてとか、こうしたいと思うということを聞かれたら、それについては真摯に答えてあげたい、できることはしたいとは思います。だから、望みがあるとしたら1回の人生だし、自分らしく生きてほしいです。その方が、どうなっていくんだろうって私自身もワクワクできるんじゃないかなと思います」

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子どもの頃は、みんなと同じランドセルがいいなと思っていた。

——これからも息子さんの成長が楽しみですね。今日は、〈+CEL〉のランドセルも持ってきました。今、5歳だとしたら、そろそろランドセルのことも考えはじめているのではないでしょうか?

「はい、もちろん気にはなっていたんです。でも、まだ実際に見にいくとかはできていなくて。今日、見せていただけるのを楽しみにしていました。このランドセル、色がいいですね。赤もちょっと渋めの赤で」

——はい。赤は「ルージュレッド」であえて昔のランドセルのような、落ち着いた色味にしています。

「ランドセルというと一つ思い出すことがあります。また、父の話になりますが、わたしのランドセルも父が選んでくれたんです。それがしっかりとした牛革の赤いランドセルで、子どもからするとすごく渋いものだった。みんなはピカピカのツヤのあるランドセルを持っているのに、私だけ、形も膨らみのないペタンとしたデザインのもので、大人っぽかった。

——素敵ですね。

「でも、それが子ども心にすごくイヤだったんですよね。なんでわたしだけ、みんなと違うものなんだろうって」

——そうなんですね! 子どもだとお父様の渋い好みがわからなかったのかもしれないですね。

「そうなんです。あと、絵の具セットもみんなは斜めがけにできるプラスチックの軽い入れ物を使っていたんですけれど、私だけ木製の重い絵の具箱を用意されて、それもみんなと同じがいいのに、と思っていました。大人になった今であれば、父がこだわっていいものを選んでくれたのが、とてもよくわかるんですけれど。だって、自分が今、選ぶならあまりキラキラゴテゴテとしたものは、もたせたくないです。シンプルなもので、素材だっていいものを選びたい。だけどあの頃、私が抱いた子どもならではの願いも切実なものだと思うんです。今日、見せていただいた〈+CEL〉のランドセルは、その両方の望みを叶えてくれそうだな、と一目みて感じました」

——確かにそうですね。子どもたちにとっても、大人にとっても満足できるランドセルになっているんじゃないかな、と思います。

「こだわりや格式がありながら、子どもたちが思う“みんなとお揃いのもの”という感触もきちんとフォローしてくれていますよね。クラシックでプレーンな印象の見た目だから、みんなの知っている、品のいいランドセルという感じがして好みです。さらに、じっくりみてみると、繊細なタッチの縫い目だとか、アンティーク調になっている金具のこだわりだとか、シボ感のある本格的な革のニュアンスだとか、そういうディテールの作り込みに惹かれます。カブセの裏側に柚木沙弥郎さんデザインのパターンが入っているのは、遊び心があって、これは親子一緒にお気に入りになりそうです」

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——子どもたちにとっては、軽さや背負いやすさも魅力になると思います。

「なるほど。確かに、自分の記憶の中にあるランドセルと比べてすごく軽いような。先輩ママの友達に聞くと、今の小学生は教科書やパソコンだとかを毎日持ち帰らないといけないって。どれくらいの量をランドセルに入れるものなんですか?」

——1年生でも、1日2〜5kg程度のものを背負っていると思います。

「それは大変! 子どもたちの成長にも影響が出てしまうんじゃないかと心配になります。ランドセルは、6年間毎日使うもの。なんでもいいとこだわりなく選ぶことはできないんじゃないかなと思います。単なる荷物を持ち運ぶものというだけでなく、転倒した時に後頭部を打たないようにするクッションの役割をしてくれる、体を守ってくれるものでもあります。息子と一緒に、どんなランドセルがいいか、これから話しながら決めていけたらと思います」

〈+CEL〉ファーストコレクションとなる2024年モデル「PLAIN(プレーン)」。ブラック、ネイビー、キャメル、レッドの4色。各66,000円(無地)、77,000円(かぶせ裏柚木沙弥郎デザイン)https://www.cel.family?utm_source=hanakomama&utm_medium=referral&utm_campaign=hanakomama2023
〈+CEL〉ファーストコレクションとなる2024年モデル「PLAIN(プレーン)」。ブラック、ネイビー、キャメル、レッドの4色。各66,000円(無地)、77,000円(かぶせ裏柚木沙弥郎デザイン)https://www.cel.family?utm_source=hanakomama&utm_medium=referral&utm_campaign=hanakomama2023
photo:Norio Kidera text & edit:Kana Umehara

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「+CEL Caravan 2024」と題して、+ CELの展示販売会を全国各地で実施しています。
アポイントメント制の会場もございますので、詳細は、+CEL ウェブサイトをご覧ください

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