世界で活躍する妻をずっと見ていたい。BTS、Snow Manの楽曲を手掛ける妻を支える夫の決意

世界で活躍する妻をずっと見ていたい。BTS、Snow Manの楽曲を手掛ける妻を支える夫の決意
私を生きる、ワタシの選択vol.10
世界で活躍する妻をずっと見ていたい。BTS、Snow Manの楽曲を手掛ける妻を支える夫の決意
LEARN 2025.02.05
結婚や妊娠、家庭とひと口に言っても、その在り方は人それぞれ。“普通”とされる選択“じゃない方”がしっくりくる人だってたくさんいる。そして、そのどれもが正解であり、自分らしい生き方。カップル間でのコミュニケーションや心理学を学んでいる、工藤まおりさんが、そんなあらゆる価値観や選択を掬い上げ、言葉として綴ります。今回は、妻の仕事を応援し、育児を夫がこなすサワディーさん&岡嶋かな多さん夫婦にインタビュー。自身のキャリア、育児についての在り方など、家族のために導いた二人のあらゆる選択とは?

「家族のために夫は外で働き、妻は家を守る」が一般的だった家族のカタチも、現在は共働き、そしてまだ少数かもしれないが、妻の仕事を応援し育児を夫がこなすケースもある。

今回は「妻の活躍を特等席で応援し続けたい」という気持ちで、妻の出産をキッカケに仕事を退職し、家事育児の主担当を賄っている夫・澤田知之(以下サワディー)さんと、妻・岡嶋かな多(以下かな多)さん夫婦に話を聞いた。

Profile
澤田知之さん・岡嶋かな多さん
澤田知之さん・岡嶋かな多さん

(左)サワディーさん:PR会社の執行役員を経て、かな多さんの出産を期にフリーランスとして独立。2024年6月に、海外渡航をする日本人家族と現地在住の日本人家族を結ぶマッチングサービス「Wamily(ワミリー)」を創業。30歳の時にかな多さんと結婚。X:@sawayakasawa_d Instagram:@sawayakasawa_d


(右)かな多さん:日本の女性作詞家、作曲家、音楽プロデューサー、ボーカルプロデューサー。
クレジット名は「Kanata Okajima」。BTS、TWICE、LE SSERAFIM、King & Prince、NiziUを含む、多数のアーティスト、プロジェクトに楽曲を提供。オリコン1位の獲得は150回を越える。作詞・作曲を手がけた、三浦大知が歌う『EXCITE』がレコード大賞 優秀作品賞を受賞。
33歳の時にサワディーさんと結婚。X:@KanataOkajima Instagram:@kanataokajima

「仕事と結婚しよう」と思った時に出会った

──まずは、お2人の出会いについて教えてください。

かな多さん(以下、かな多):サワディーが参加していた、広告関係の勉強会の飲み会です。私は勉強会自体には参加していないんですけど、友人に呼ばれて顔を出したんです。彼の第一印象は“よく喋るハンカチ”(笑)。

サワディーさん(以下、サワディー):ハンカチーフを首に巻いてたからね(笑)。

その勉強会の参加者は、自分の名前で仕事をすることを目標にしている人が多かったんです。せっかく自分の名前で活躍してるかな多が来てくれたなら、たくさん話しかけようと思って。

──最初の方は、お互いにまだ恋愛感情はなかったんですね。

かな多:気になるなって思ったキッカケは、数ヶ月後に共通の友人に誘われて会った時です。その時は少人数だったので、人生について語り合うような深い話をしていたんですけど、「どんな人に惹かれるか」という話題が出た時に、サワディーが「新居に引っ越して、一番初めに買うお鍋が中華鍋の人がすごく好き」って話してて…

サワディー:それくらい、自分の概念を飛び越えてくるような人に惹かれるんです。一番初めに買うお鍋が中華鍋と聞いたら「なんでそれ買うの?」って思うじゃないですか。

かな多:当時、ちょうど自分の人生に悩んでいる時期だったんですよね。

いろんな人生経験をした上で、仕事に燃える自分を抑えて、男性を支えられるような女性を演じないと、結婚はできないんだろうなって諦めていたんです。

でも、サワディーと出会って、むしろ想像を超えてきてほしいって思う男性がいるんだって気づいて、こういう人と一緒にいた方が私は幸せになるんじゃないかって思ったんです。

かな多が輝いてたら、家族みんなが輝いている

──そこからお付き合いして、3ヶ月で婚約。かなりのスピード婚ですよね。

かな多:早い段階で、結婚するならこの人だなって思ったのが、初めての旅行の時でした。宿と行き方だけ決めて、あとはノープランで行ったんですが、宿は200年続く古宿で隙間風は強いし、紅葉を見るためにトロッコに乗ったら、大雨でずぶ濡れ。

さらにロープウェイで山頂まで登ったら、周りは大雪でめっちゃ寒くて。普通に考えたら全然楽しめない旅行なのに、彼といたら全部楽しかったんですよね。

サワディー:概念を飛び越えていく人に惹かれる、というところに繋がると思うんですけど、僕も“既定路線から外れていくと、どんな景色待ってるんだろう“ってワクワクする人なんです。こういう状況でも、ネガティブに考えるんじゃなくて、ポジティブに見ていたいのかも。

かな多:それで、この人とだったら人生どんな状況になっても笑って乗り越えていけそうだなって思ったんです。例えるなら、私はドーナツの欠けてるところを見ちゃうタイプで、サワディーはドーナツが欠けていても、あること自体に喜べるタイプ。今でも彼のポジティブさに救われる瞬間が多いです。

──サワディーさんが「妻の活躍を、特等席でずっと見ていたい」と思うようになったキッカケは?

サワディー:天才と人生を歩めるって楽しいだろうなって、付き合って割と早い段階で思っていました。でも、収入、肩書き、人脈など…男性として魅力になりそうな部分で勝るところが1個もなかった

出会った時は、PR会社の役員という肩書きで自信もあったんですけど、かな多を前にすると全く通用しないんです。それで、自分らしさをどこで保ったら良いんだろうとわからなくなった時がありました。

そんな時に、かな多が「あなたの素晴らしさは、言葉にしなくてもみんなに伝わってるから大丈夫だよ」って言ってくれて、自分の中のノイズが薄れていきました。

かな多:爪痕を残しておこうって気持ちはわかるんですけど、無理してる感じがしたんです。言うか言わないかちょっと迷ってたんですけど、この関係性を大事にしたいからこそ勇気を持って伝えました。私は過去に、思ってることを言わなくて関係がこじれた経験もあったので、その風習は卒業したいと思ったんです。

サワディー:正直、言われた時はつらかったですけど、かな多の行動にすごく愛を感じたんです。今は、徐々に天才の妻と付き合っていくパートナーとしての立ち振る舞いは板についてきてる感じがします。

かな多が輝くことは、家族みんなが輝いているということ。「妻の活躍を特等席で応援し続けたい」という思いは何があっても揺らいではならないし、かな多と一緒にいる人生においては、真摯に向き合っていかなければならないと思っています。

妻をサポートするために導いた選択

──かな多さんが仕事に注力できるよう、サワディーさんは出産をキッカケに仕事を退職されたんですよね。

サワディー:はい。「妻の活躍を特等席で応援し続けたい」という気持ちを体現するには、妻が変わるんじゃなくって僕が変わった方がいいと思って、当時役員だったPR会社を退職し、独立しました。

でも、家事も育児もすべてがはじめてのことばかり。「名もなき家事」という言葉があるじゃないですか。ご飯を作ればいいだけじゃなくて、子どもに食べさせないといけないし、片付けないとならない。子どもが泣いたら、その都度あやさなければならない。命に向き合うって、こんなに大変なんだなって思いました。

仕事をしたいと思ってるかな多に、思いっきりアクセルを踏みきれる環境を作ってあげたいけれど、自分だけじゃ対処できないこともあったので、頼ってしまうシチュエーションはありました。

かな多:ちょうど世の中オンラインで仕事をするようになってきたので、ミーティングをしながら、カメラを上向きにして母乳をあげたり。足でバウンサーを動かしてあやしながら歌詞を書いたり。マルチタスクの鬼みたいになりながら仕事をこなして、なんとか2人で乗り越えました。

──サワディーさんはちょうど独立したタイミングだと思いますが、育児と自身のキャリアについてはどのように考えましたか?

サワディー:育児の時間が多くなるにつれて、仕事を選んでるはずが気づけば選べなくなってる場面もありました。母親がいつの間にかパートや下請けの仕事が中心になっちゃうという現実を身をもって実感しましたね。

でも、僕は専業主夫になりたいわけでもないし、仕事で今まで積み上げてきたものもある。なので労働時間ではなく、いかに仕事の質を上げていくか。プラス、お仕事のご縁をいただく場合は、この仕事環境について合意を取れてる状態にしました。

僕が子育てをしている状況を楽しみながら開示していくことで、関わってくれるビジネスパートナーの人たちも一緒に楽しんでもらえる空気作りが最近ようやく出来始めたなって思います。そうなってからは、家事育児を理由にやりたい仕事にブレーキをかけることはなくなりました

妻の活躍を特等席で応援し続るために

──現在は2人のお子さんがいるようですが、仕事と子育ての両立はどのようにシェアされてるのでしょうか?

サワディー「シェア」という概念がないですね。妻には「クリエイター Kanata Okajima」として機会損失が起きないよう、平日は僕中心に家事育児の機能を回し、土日はかな多と一緒に家族の時間を過ごしています。もし、かな多に急な会食が入っても基本的にすべて行ってもらえるようにしています。

もちろん自分も仕事をしながらなので、乗り越えられない時はアウトソーシングサービスにも頼ります。でも、頼りすぎると何を大事にして生きてるんだろうと思ってしまうので、バランスを意識しながら活用するようにしています。

かな多:サワディーが仕事で外出しなければならない時は、私が代わりにする日もあります。でも、いまだに私の方がワンオペに対して不安があって。ちょっと何か事件が起きると、慌てちゃう時がありますね。

──かな多さんが海外出張のときは、サワディーさん1人で子ども2人を見てるんですよね。

サワディー:そうですね。妻が海外に行って挑戦している期間は、僕も挑戦している期間でありたい。帰ってきた時に「よくやったね」ってお互い言い合いたいんです。

なので僕がお金を使いまくって、全部簡素化して、自分の仕事だけしていたら、家族の波長が合わなくなるんですよ。「挑戦したい」という気持ちが、家事育児のバランスを作っているのかもしれません。

──今後2人でどのようなパートナーシップを築いていきたいですか?

サワディー:僕は「妻の活躍を特等席で応援し続けたい」という思いがあるので、かな多が輝き続けたいという気持ちがある限り、その環境を作ってあげたい。子どもたちにも、僕ら2人がやってることをシェアしたいと思っています。

かな多、海外での仕事でもめっちゃ輝くんです。文化も違う多様な人がいる世界でよく戦っているなって思います。

そんな姿を子どもたちにも見てほしいし、体感してほしい。座学で世界を学ぶんじゃなくって、家族の営みの中で世界を感じてほしいです。あとは、子どもたちが好きなことをしてくれたらと思っています。

かな多:私は愛される家族でいたいな。

会いに行きたいなとか、晩ご飯食べに行きたいなとか、あの家族といると楽しいと思ってもらえるような。

サワディーも私も、お互い人が大好きで、すごく色々な方に支えられて、応援してもらってるからこそ成り立ってる部分があるので。

だからこそ、皆さんとのご縁を大切にしたい。そのためにも風通しのいい家族であり続けたいです。

text_Maori Kudo photo_Wataru Kitao

Videos

Pick Up